『フロスト×ニクソン』
政治的なものが前面に出ている作品をどうして借りようと思ったのかよくわからないのですが、知り合いに勧めてもらったからじゃなかったっけ…と、またしても自分の記憶力と戦いながら鑑賞しました。
政治的なものの良し悪しは、その当時生きていなかった(ギリギリ生まれていない)私には実感としてよくわからないのですが、インタビューでの心理戦や、政治家というものの『強さ』が垣間見れて面白かったです。
ニクソンにとって、自らの不正、である『ウォーターゲート事件』の質問を、初っ端にぶつけてくるフロスト。
その質問は契約違反だとしながらも、「国民がそれを望んでいるのであれば」と答えるニクソン。
ここでも、契約違反だと反故するのは簡単ですが、それをせずに「応える」という時点で、ニクソンは視聴者にいい印象を与えるわけです。
そして「何故テープを燃やさなかったのか」(盗聴の)との質問に、「設置したのは自分ではない。録音をすべて取り払うと秘密裏な相談がホワイトハウスでできなくなる。そうなれば政治の意見交換もできなくなりそれは国のためにならない」と正当化を主張するニクソン。
勿論、おためごかし的なものなのですが、あくまで己の正当性を主張し続けるところがまた上手い。
こっちは「どんな言い訳」とも思いますが、それでも「私はそれを正義だと信じて行った」と主張しさえすれば、そこには「悪意」はないとみなされるからです。
しかも、その後、二番目の質問にも同じような調子で答え、二つの質問で23分も費やされるのです。二時間番組なのに。
時間の引き延ばしは明らかなのですが、それでも質問する側は、「核心に触れる答え」を望みたいがために、その答弁を遮ったり、打ち切ることができない。何故ならその23分の間に、いつ自分たちの望むリアクションが返ってくるかわからないから、です。
他にも、「キッシンジャーとの最悪な日々」についての質問も、「最悪だったが、それぞれに最悪なことはあるので一概にはいいかねる」と言った後、政治的なものから、家族の話にスライドさせるこの上手さ!
「最悪なことは色々ある。娘が結婚した日。そしてあの日、末娘が私のところに来て、泣きながら抱きしめた。「パパは世界一よ。全てを信じるわ」と」
しかもその後、宗教的な話題、リンカーンの話を引き合いに出し、相手にぐうの音も出なくさせるこの手腕。
そりゃ、お付のブレインも「素晴らしい!」(ケビン・ベーコンが熱演)と呟きますよ。家族モノは万人に受けますしね。
初日は思うようなインタビューが出来ないまま、終了したフロストに、
「初日はベトナムの話だと聞いてきたからその準備ばかりしてきたのに」
と、余裕綽々のニクソンの静かな迫力が凄い。
この辺の、政治家としてのふてぶてしさや手腕は、圧巻の一言ですね。
政治っていうと、どうしても悪い部分ばかり目に入るし、身近なところで腹を立てることが殆どなのですが(逆にそれは正しい姿であるような気もします。全てが国の政治を最高に崇めたてる国があるとすれば、それはマトモではないでしょうし)、それとは別に、百戦錬磨の「政治家」としての実力の高さを見られた、と申しましょうか。国のトップに上り詰めた男は、純粋な社会経験やキャパシティだって、そりゃ普通に考えて並であるはずがないというか。
ベトナム戦争の話は「攻めなきゃもっと多くの人が死んだ」というお定まりの代弁で締めくくられてしまうので、個人的にはそこでは某かを思うことはなかったです。この理論には、意味がないからな。
ブルーカラーと呼ばれる人間が、結局は名門の奴らに認められたいとか、勝つのはどちらか一人とか、真夜中の電話シーンはちょっと鼻につく場面もありましたが、ここでニクソンの人間味を出したいのだろうな、ということはよくわかります。
完全無欠の大統領ではなく、一人のニクソンとしての素顔を見せたいのでしょうが、個人的には会話のやりとりを楽しんでいたので、この部分はわりと流せました。
二人を支えるそれぞれの頭脳陣もとても魅力的です。
ブレイン役のケビン・ベーコンは純粋に政治家としてのニクソンを尊敬していて付き合っているので、凄く人間味があってカッコイイです。
「戦地から返ってきた私に唾を吐いた奴らに辞めさせられた」と発言し、フロストの態度に激昂する。
「言葉を慎め。誰を相手にしていると思っている。彼のやったことの60%は正しくて、30%はその時は正しく今は間違っていた。その60%を汚すことは断じて許さない」
(大統領に向かって)「もし貴方が感情を発露するというのであれば、私は熟考しなければなりません」
この言葉を受けて、ニクソンは窮地に陥ったインタビューを再開します。ブレインの反対を押し切ってまでの答えは、画面いっぱいに映し出された自分の憔悴した顔だった。
この後、勝利に喜ぶフロスト側が描かれるのですが、アメリカ的表現ですね。こういうインタビューを、勝った負けたで表してしまうところなんかが特に。
マスメディアの勝利、とも語られるのですが、そういった意味でマスメディアが勝利をもってしまうという実態はあまり好ましくないと私は思うので、個人的には政治関係抜きに、心理戦のやりとりを抜粋して楽しむ見方でもいいと思います。
映像としてはどうしても顔のアップや対面になっていまうので、二時間は若干長いかな、と。
『グッドナイト&グッドラック』は90分くらいで緊迫したまま終われたので、政治モノは逆に短めに終わるくらいでちょうどいいのかもしれません。
音楽は非常に重厚でよかったです。
役者陣も達者な方ばかりで(この手の映画で大根がいたら萎えるだろうなあ)、特にニクソン役のフランク・ランジェラは圧巻。超かっけえ。
上記の『グッドナイト~』にも出ていたらしいのですが、だ、誰だかわからん! 新聞社の社長さんだろうか。
こういう、カッコイイ役者さんを新たに知ると、芋づる式(笑)に出演作品を見たくなるので嬉しい悲鳴です。
正直この作品も、誰か役者さんつながりかなあ、と思っていたんですが、結局誰もそんな人いなかった。謎だ。
CFが良かったらしいので、特典メニューを見たんですが、『HEROESシーズン3』の第一話とかしかなくてがっかりでした。
別に入れるなとは言わないけど、この映画に関わったものを入れて、その後だろう他作品の紹介は!
政治的なものが前面に出ている作品をどうして借りようと思ったのかよくわからないのですが、知り合いに勧めてもらったからじゃなかったっけ…と、またしても自分の記憶力と戦いながら鑑賞しました。
政治的なものの良し悪しは、その当時生きていなかった(ギリギリ生まれていない)私には実感としてよくわからないのですが、インタビューでの心理戦や、政治家というものの『強さ』が垣間見れて面白かったです。
ニクソンにとって、自らの不正、である『ウォーターゲート事件』の質問を、初っ端にぶつけてくるフロスト。
その質問は契約違反だとしながらも、「国民がそれを望んでいるのであれば」と答えるニクソン。
ここでも、契約違反だと反故するのは簡単ですが、それをせずに「応える」という時点で、ニクソンは視聴者にいい印象を与えるわけです。
そして「何故テープを燃やさなかったのか」(盗聴の)との質問に、「設置したのは自分ではない。録音をすべて取り払うと秘密裏な相談がホワイトハウスでできなくなる。そうなれば政治の意見交換もできなくなりそれは国のためにならない」と正当化を主張するニクソン。
勿論、おためごかし的なものなのですが、あくまで己の正当性を主張し続けるところがまた上手い。
こっちは「どんな言い訳」とも思いますが、それでも「私はそれを正義だと信じて行った」と主張しさえすれば、そこには「悪意」はないとみなされるからです。
しかも、その後、二番目の質問にも同じような調子で答え、二つの質問で23分も費やされるのです。二時間番組なのに。
時間の引き延ばしは明らかなのですが、それでも質問する側は、「核心に触れる答え」を望みたいがために、その答弁を遮ったり、打ち切ることができない。何故ならその23分の間に、いつ自分たちの望むリアクションが返ってくるかわからないから、です。
他にも、「キッシンジャーとの最悪な日々」についての質問も、「最悪だったが、それぞれに最悪なことはあるので一概にはいいかねる」と言った後、政治的なものから、家族の話にスライドさせるこの上手さ!
「最悪なことは色々ある。娘が結婚した日。そしてあの日、末娘が私のところに来て、泣きながら抱きしめた。「パパは世界一よ。全てを信じるわ」と」
しかもその後、宗教的な話題、リンカーンの話を引き合いに出し、相手にぐうの音も出なくさせるこの手腕。
そりゃ、お付のブレインも「素晴らしい!」(ケビン・ベーコンが熱演)と呟きますよ。家族モノは万人に受けますしね。
初日は思うようなインタビューが出来ないまま、終了したフロストに、
「初日はベトナムの話だと聞いてきたからその準備ばかりしてきたのに」
と、余裕綽々のニクソンの静かな迫力が凄い。
この辺の、政治家としてのふてぶてしさや手腕は、圧巻の一言ですね。
政治っていうと、どうしても悪い部分ばかり目に入るし、身近なところで腹を立てることが殆どなのですが(逆にそれは正しい姿であるような気もします。全てが国の政治を最高に崇めたてる国があるとすれば、それはマトモではないでしょうし)、それとは別に、百戦錬磨の「政治家」としての実力の高さを見られた、と申しましょうか。国のトップに上り詰めた男は、純粋な社会経験やキャパシティだって、そりゃ普通に考えて並であるはずがないというか。
ベトナム戦争の話は「攻めなきゃもっと多くの人が死んだ」というお定まりの代弁で締めくくられてしまうので、個人的にはそこでは某かを思うことはなかったです。この理論には、意味がないからな。
ブルーカラーと呼ばれる人間が、結局は名門の奴らに認められたいとか、勝つのはどちらか一人とか、真夜中の電話シーンはちょっと鼻につく場面もありましたが、ここでニクソンの人間味を出したいのだろうな、ということはよくわかります。
完全無欠の大統領ではなく、一人のニクソンとしての素顔を見せたいのでしょうが、個人的には会話のやりとりを楽しんでいたので、この部分はわりと流せました。
二人を支えるそれぞれの頭脳陣もとても魅力的です。
ブレイン役のケビン・ベーコンは純粋に政治家としてのニクソンを尊敬していて付き合っているので、凄く人間味があってカッコイイです。
「戦地から返ってきた私に唾を吐いた奴らに辞めさせられた」と発言し、フロストの態度に激昂する。
「言葉を慎め。誰を相手にしていると思っている。彼のやったことの60%は正しくて、30%はその時は正しく今は間違っていた。その60%を汚すことは断じて許さない」
(大統領に向かって)「もし貴方が感情を発露するというのであれば、私は熟考しなければなりません」
この言葉を受けて、ニクソンは窮地に陥ったインタビューを再開します。ブレインの反対を押し切ってまでの答えは、画面いっぱいに映し出された自分の憔悴した顔だった。
この後、勝利に喜ぶフロスト側が描かれるのですが、アメリカ的表現ですね。こういうインタビューを、勝った負けたで表してしまうところなんかが特に。
マスメディアの勝利、とも語られるのですが、そういった意味でマスメディアが勝利をもってしまうという実態はあまり好ましくないと私は思うので、個人的には政治関係抜きに、心理戦のやりとりを抜粋して楽しむ見方でもいいと思います。
映像としてはどうしても顔のアップや対面になっていまうので、二時間は若干長いかな、と。
『グッドナイト&グッドラック』は90分くらいで緊迫したまま終われたので、政治モノは逆に短めに終わるくらいでちょうどいいのかもしれません。
音楽は非常に重厚でよかったです。
役者陣も達者な方ばかりで(この手の映画で大根がいたら萎えるだろうなあ)、特にニクソン役のフランク・ランジェラは圧巻。超かっけえ。
上記の『グッドナイト~』にも出ていたらしいのですが、だ、誰だかわからん! 新聞社の社長さんだろうか。
こういう、カッコイイ役者さんを新たに知ると、芋づる式(笑)に出演作品を見たくなるので嬉しい悲鳴です。
正直この作品も、誰か役者さんつながりかなあ、と思っていたんですが、結局誰もそんな人いなかった。謎だ。
CFが良かったらしいので、特典メニューを見たんですが、『HEROESシーズン3』の第一話とかしかなくてがっかりでした。
別に入れるなとは言わないけど、この映画に関わったものを入れて、その後だろう他作品の紹介は!
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