「あ」
外で新聞を読んでいた乾は、何処からか焦げ臭ささをかぎつけ、顔をあげた。
正月分の分厚い新聞は読むところが一杯ある。
特集記事だったり、数日分のテレビ欄だったり。
普段、自分の畑を耕すことくらいしかしない乾には、無駄に力が有り余っており、その新聞を立って読むことくらい、ぞうさもない。
ただ、その場所が寒風吹きすさぶ玄関前、手作りの郵便受けの前であったことは、乾にとってあまり有益なできごとではなかった。
気づいたときは、時既に遅し。
焦げ臭さをたどってみれば、見事に底の焦げ付いたやかんが、台所で派手な音を立てていた。
「あーあ」
既にこれが何個目かわからない。
お湯を沸かそうと思ったことも、自分の机の上に置いてあるカップを見て、ようやく気づく始末で、乾の年明けは、慣れ親しんだともいえないやかんに別れを告げることから始まった。
やかんの買い置きなどしているわけもなく、どうしようかと周囲を見回して、乾はごそごそと下の引き出しに顔を突っ込んだ。
「あ、これでいいや」
そう言いながら、鍋に水をはる。
よっこいしょ、と火にかけ、乾はくるり、と台所を後にした。
その、大鍋いっぱいにはられる必要のない水が沸騰し、カップ一杯を満たすのは、随分と先の話だった。
そして、テレビをつけた乾は
「あ、今日正月だったんだ」
正月特番で大騒ぎする番組を見て、やっと今日が何日であるか気づいたのであった。
ちなみに、
「あれ、新聞どうしたっけ」
玄関前で読み始めた新聞は、きちんとたたまれ、郵便受けに戻されていたことも、付け加えておく。
改めまして、皆様、新年もよろしくお願いいたします。
今年も皆様にご多幸がありますように。
外で新聞を読んでいた乾は、何処からか焦げ臭ささをかぎつけ、顔をあげた。
正月分の分厚い新聞は読むところが一杯ある。
特集記事だったり、数日分のテレビ欄だったり。
普段、自分の畑を耕すことくらいしかしない乾には、無駄に力が有り余っており、その新聞を立って読むことくらい、ぞうさもない。
ただ、その場所が寒風吹きすさぶ玄関前、手作りの郵便受けの前であったことは、乾にとってあまり有益なできごとではなかった。
気づいたときは、時既に遅し。
焦げ臭さをたどってみれば、見事に底の焦げ付いたやかんが、台所で派手な音を立てていた。
「あーあ」
既にこれが何個目かわからない。
お湯を沸かそうと思ったことも、自分の机の上に置いてあるカップを見て、ようやく気づく始末で、乾の年明けは、慣れ親しんだともいえないやかんに別れを告げることから始まった。
やかんの買い置きなどしているわけもなく、どうしようかと周囲を見回して、乾はごそごそと下の引き出しに顔を突っ込んだ。
「あ、これでいいや」
そう言いながら、鍋に水をはる。
よっこいしょ、と火にかけ、乾はくるり、と台所を後にした。
その、大鍋いっぱいにはられる必要のない水が沸騰し、カップ一杯を満たすのは、随分と先の話だった。
そして、テレビをつけた乾は
「あ、今日正月だったんだ」
正月特番で大騒ぎする番組を見て、やっと今日が何日であるか気づいたのであった。
ちなみに、
「あれ、新聞どうしたっけ」
玄関前で読み始めた新聞は、きちんとたたまれ、郵便受けに戻されていたことも、付け加えておく。
改めまして、皆様、新年もよろしくお願いいたします。
今年も皆様にご多幸がありますように。
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