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日々のつれづれ。ネタバレに過剰な配慮はしておりません。
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『チェイサー』公式サイト

いつも一緒に映画を見る知り合いが、「今年のナンバーワンかも」と言っていたので、レンタルして見たんですが、私はこういう後味の悪すぎる映画をナンバーワンに据えてしまう感性がちょっとよくわかりません。
いや、だって本当に後味悪いんだってば!
予想できる最悪の結末を普通に迎えるんだもん!
必死に探しても何処にも救済の余地ないんだもん!

場面によってはかなりグロいので、その手のことが苦手な方にはまったくお勧めできません。内臓ドバーとかそんなことはないですが、のみとハンマーで女の頭をかち割る様とか、実際にはかけられないけれど、殺した後の女の体を串刺しにして壁から吊り下げる予定のS字フックとか普通に描写されちゃいますからね。
ナイフとか拳銃とか、人を殺すためにある道具も恐ろしいですが、そんな用途に使われるはずがないのに、使われてしまう道具の描写っていうのは、生々しくてとても怖気がたちます。

実際に行われた猟奇殺人がモデルらしいのですが、風俗嬢(デリヘル)を大量に殺していた青年と、自分の経営する店の女の子を殺された男が、その犯人を追い詰めるというのが主なあらすじ。

男は最初は女が逃げたか売られたかと思っているので、殺人犯を捕まえて警察に突き出そうという正義感があるわけではありません。あくまで己の仕事の中での不利益を避けたいだけで、探しているのは自分の所有物である商売女なわけです。

それが、最後に行方不明になった女性の娘さんを引き連れて行くにつれ、また、女性の命がほぼ絶望的である、追っている相手がただの変態ではなく真性の人殺しであると気づき始めた男は、必死で「そんなはずはない」と女性を探す。

それは、ただの商売女を取り戻すという意識から、女の子の母親を生きて連れ戻すという男の気持ちの変化なのですが、このあたりがちょっと描き方が弱いんだなあ。
男は別に、聖人ではないですが悪人じゃない、悪人よりの普通の人なので、女の子にほだされて必死になる様はおかしくないんですが、肝心の女の子が事件と関係のないことで退場してしまうんですよ。しかも結構途中で。
そうなると、女の子って、男に心境の変化をさせるために出てきたという印象が強くなりすぎてしまうんですよね。勿論実際物語の中では女の子は「そういう」役割を担っているのでしょうが。

で、女の子が退場したというターニングポイントの後に、物語が急転直下するかというとそうでもない。
この話、基本的に犯人が捕まっているにも関わらず、捕らえられた女の居場所がわからない、証拠がない、警察の捜査が進まない、検事の横槍が入る、死体を埋めた場所もわからない、動機なんて初めからあったもんじゃない、というとにかくすべてが不透明で、躓いてばかりなのです。
題名になっている、「追跡」すらもスムーズに進まない。
見ているこっちは、進んでいる実感が全くないので、本当にイライラもやもやしながら見続けなければいけないわけです。
歯軋りしながら「なんで女の居場所くらいすぐに見つけられねえんだよ!」とばかりが焦ります。だってこのままだと最悪な未来予想できちゃいますからね。

男が物語後半で「女はこのあたりにいる。車がここで発見されたんだから、そこから何キロ県内に男の家がある」みたいなことを言い出すんですが、それ、事件発生後真っ先に言うべきことなんじゃねえの!?

上手くいかない、かみ合わない、を繰り返した挙句、三歩進んで十歩下がるくらいの時間を過ごした挙句、一度は男によって捕まえられた犯人は、証拠不十分で釈放されてしまいます。
しかも、その後を尾行するのがたった二人ですよ。これありえないですよ。完全に凶悪殺人犯(冤罪ではないことは警察も重々承知している)だってわかってるのに。

その結果、犯人はいとも簡単にまた殺人を犯してしまいます。それも、最悪な被害者を選んで。

このあたりの話運びのかったるさとか、もう少しなんとかならなかったのかなあと思います。
犯人追跡のために追いかけっこをしたりとか、殴りあうシーンなんかは当然多いんですが、それではなく、警察内部で錯綜している場面とか、それ以外の表現がとにかく要所要所でテンポがそがれているというか。
実際、125分とかありますからね。私途中ではっきりと最悪な未来が見えてからかなり忍耐力が削られました。

ここでは、男の心情とか、犯人の動機とか、心理描写は殆どありません。あるのは、暴力に追跡に殺人。
結局この作品で重きをおきたかったのは、何故男は捕らえられなかったのか。その前に服役もしていて、他の事件でも取調べを受けているのに、何故また人殺しを防げなかったのか、というどちらかといえば、アウトローの目から見た、どうしようもない社会体制なのかなあと思いました。

元刑事だった男が一番男を自由に追いかけて、そして殴ることができる。犯人の居場所を突き止めることができる。被害者の残された娘さんの元に傷だらけの体を引きずって訪ねることができる。
できたはずなのに、できなかった。
そんな人たちの中で、結局男も「最終的には何もできなかった」物語なのでした。暗すぎる。
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