『ふたつのスピカ』
1?3巻まで読了。とりあえず続きは密林で注文するとして(届くのは年末であろう)、私は基本的に努力している人間が報われない物語は好かんので、この漫画のように、誰も彼もが一所懸命な物語は、誰も彼もが報われて欲しいと思います。
素直で、真っ直ぐで、それぞれがそれぞれに懸命な漫画というのは、とても眩しいけれど、それだけで終わるはずがない、という嫌な穿った目線で見てしまうのもまた事実。
今のところ、ちょこちょこ背後に影が忍び寄る他は、安心して読めるのですが、人命を失った事故から物語が始まる以上、それだけで終わるはずがないというか。
話そのものは、これから動き出すのかな、という感じですが、巻末の作者の自己伝みたいな漫画が、どうしても肌に合わないのであれだけは辛い。
『トッペンカムデンへようこそ』
作者の人も巻頭で言っていましたが、なんでこの題名。
別にようこそ関係ないし、トッペンカムデン(国名)で起こる物語のほうが少ないんじゃねえ?
と、言いつつも、これ以外に別の題名も思いつかないのもまた事実。
トッペンカムデン王国、国王代理のローラと、それにくっついている魔法使いのレジーの物語………なんですが、一番甘かったのが第一巻の第一話ってどういうこっちゃ。
元々、読み切りから連載が始まったらしいので、第一話が最も甘いのは別におかしい話じゃないんですが、その後、ラブ度の進行ちっとも深まらないのが、この漫画の面白いところ。
好きが次第に大好きになっていく、とか、その過程を楽しむのではなく、この二人、出会ったときから大好きで、そこから始まっているので、それ以上の「感情」の揺れ幅はないんですな。
そのへん、非常に面白いところ。
例えば、少女漫画にありがちな、ライバルが出てきてとかそういうのもありませんし、終始、国内外の話で終わったり、それぞれがそれぞれに関係のないところでここに頑張っているのが、この漫画の少女漫画らしくないところだといえましょう。
勿論、根底にあるのは互いへの思いであったり、「一緒にいたらいけないんだけど好き」とか、一応の切ない設定であったりするんですが、それも、別に作中でそれほど肝として重要視されているわけでもないのがミソ。
宗教的にどうのというのではなく、実際、政治とか国のありようとして、力のある国王になる人間は特定の魔法使い(忌み嫌われることの多い)と親しくしてはいけない、という世俗的な禁忌なのですが、それをふっきって結ばれたいのではなく、その立場の人間がそれを守りつつ互いの関係がこのままであって欲しいという、ぬるま湯的な物語の進め方なんですな。
これがある意味、わかりやすいドラマティックさとは別な部分で、現実に敵に難しいわけですから、中々面白い。
物語中盤までは、国内外の物語で、後半は、大魔法使い(まあ、悪い魔法使いですな)との決戦に物語シフトするんですが、アクション中心、魔法なんちゃらが中心、わかりやすく言えば設定中心の後半戦よりも、この漫画が面白いのは圧倒的に中盤まで。
国と国とが関わったり、国で生きている上で個人がどうしたりとか、その辺りのほうが圧倒的に面白い。そこに恋愛要素は皆無であっても。
このへん、以前お勧めいただいた『辺境警備』とちょっと似てますな。辺境警備も神官さんの過去云々が出てきてから、わりとどうでもよくなった(よくなるなよ)。
こちらの作品の方が、恋愛要素が強いですし、脇役の人間たちがそろいもそろって愛に生きている(笑)ので、少女漫画の色が強いですが、基本的には、サザエさん漫画なんだと思います。
主人公のローラは、馬鹿だけど一生懸命な主人公の面目躍如で可愛いし、ある意味嫌味もなければ、元気以外の個性もないという感じです。ただ、女の子が一生懸命な姿は問答無用で可愛いという鉄の掟がありますからね。よく怒る顔も可愛いとか、彼女は鉄板だぜ。
レジーはツンデレと称するにはあまりにもツンの部分が弱い魔法使いで、個人的には、結構変態で鬼畜にはなりきれないへたれであると思っています。へたれが元気な女の子に振り回されずして、何のための少女漫画か!
他にも、愛する女の魂を手元に無理やり残して、「お前のためじゃない、俺のためだ」とか言い切っちゃうハゲとか、(またその女の子が天然でぼけぼけしてて可愛いんだ)、何でも知ってるけど何も言わない師匠とか、色々美味しいキャラクターがいます。
その中で、一応ライバルキャラなんだろうけど、それにしてはあまりに恋愛要素に絡んでこない、一番個性が薄いラズウェルの立ち位置が微妙です。
ローラが好きなんだけど、モーションあからさまにかけてるんだけど、基本、いい人なので、ドロドロすることもないし、レジーに食って掛かるわけでもないし、国であれやこれやあるので、女のことを常に一番にするわけにもいかないしで、なんていうか、真面目で面白みがないを体現している、結構気の毒なキャラクターです。報われないってわかってるしな、こっちは。
面白み、という部分では、奴のお父さんのほうがよっぽど腹黒タヌキで萌えるぜ!
作者様が、気を抜くとおじさんばっかりになってしまうこの漫画、とかあるんですが、いけませんかそれが!
むしろ、糖度が明らかに低いこの漫画で、花と言えばイコールオジサンでしょうが!
大体、絵のレベルは正直低い(特に後半の単行本表紙は酷い。カラーが苦手なのか、少女少年を書くのが苦手何だか知らんが)んですから、せめて、己が書いていて楽しいものを書きましょうよ! こっちにもそれは伝わる!
絵の話が出ましたが、絵は酷いです。人体も酷いし、アクションシーンとか結構最悪。まあ動きが下手なのは少女漫画のお約束みたいなものなので、致し方ないかと。
魔法のシーンとか、ギャグでやってんのか、という演出いっぱいあります。シリアスなシーンでもそんなですから、多分そっちを劇的に見せようとか、そういう工夫には興味がないんでしょう。少女漫画ですから。(便利ですね)
顔だけよりぬくと、そんなに悪くもないんですけどね、オジンは。
少女漫画にありがちな、これって前の話では謎っぽく語られてたけど、蓋を開けてみればそうでもなく流されるという話運びも健在です。
「あれは魔の島だぜ、生きて帰ってきたものはいないぜどうする?」
↓
「行って帰ってきた。その話は長くなるのでいずれ」
↓
「そうか、で、手に持っているものはなんだ」
とか、お前知りたいのはどうやってその生きては帰ってこられない島を抜けたかであってという部分は、すっぱり切り取られていて、見せる気もないんですね。
この辺、少女漫画の非常に面白いところで、読んでいる側もわりとどうでもいいっちゃあ、どうでもいい部分なんですよ。
どうやってその島を攻略したかなんて、どうでもよく、その結果、手に入れたもので、二人のラブラブっぷりがどう進展していくかが一番気になるところなわけですから。
少年漫画、青年漫画だとそうはいかない。むしろ、その難攻不落を覆した部分で盛り上げるんでしょうけど、それはこの漫画には必要ないんですな。
他の少女漫画家さんもおっしゃっていましたが、
「初めから勝つとわかっている闘いの内容を書いても仕方がない」
わけで、このわかっている、には、作者と読み手の両方の総意が自然に含まれているわけですね。
求めるものが、よりはっきりしているわけです。
だから少女漫画は、「その戦いに勝利し、半年後」とか、結構やるんですよ。
この漫画も、書きたい部分と興味のない部分がはっきりしているので、それに乗り切れてしまえば、非常に読みやすいんじゃないかなと思います。
さて、私が気にいったキャラクターですが、ぶっちぎりでシャイデック。
一話目で、ローラの命を狙うおかしな貴族ヒゲの小悪党だったんですが、奴は宰相になって政治の出番が多くなるにつれ、化けたぜ! なんだよあの無精ひげ! 目の大きさよりもでかい鼻の穴のくせに、何であんなにかっこいいんだよ!
私はこういう、世間ズレしてて、保護者的立場にいるんだけど、結構腹黒なキャラクターが大好きです。
ローラが敵国に攻めてこられたとき、牢屋から出したシャイデックの腕に思わずしがみついてしまうのですが、そのときシャイデックはそれを振りほどくわけでもなく、黙ってそのままにさせ、状況の説明をしたあげく、「まだ私の腕が必要ですかな」とか言っちゃって、なんだよお前その男前卑怯だろ!?
真剣にときめきました。
結構初期と性格不一致(連載と読みきりの齟齬。笑)があるんですが、ローラに肩入れしているというよりは、国のためにローラが必要だくらいの愛着を見せるシャイデックが好みでした。
結構あからさまにローラを大事にしている加減では、レジーよりシャイデックとの絡みのほうが、圧倒的に多い(説教含む)しな。
それ以外なら、エルファン。超ド級の脇役ですが、ぼんやりとして人のいい大臣姿に萌えました。ルックスも悪くないですし。ぼんやりしていて結構やることやってる男は大好きです。
純然たる恋愛主体の少女漫画ではないですが、基本的に、誰かを悪い人と位置づけるのではなく、それぞれの立場がある上での言動を重んじる作品として、楽しめると思います。
お勧めいただいてありがとうございました。上記二人が私のお気に入りのキャラクターでした(笑)。
1?3巻まで読了。とりあえず続きは密林で注文するとして(届くのは年末であろう)、私は基本的に努力している人間が報われない物語は好かんので、この漫画のように、誰も彼もが一所懸命な物語は、誰も彼もが報われて欲しいと思います。
素直で、真っ直ぐで、それぞれがそれぞれに懸命な漫画というのは、とても眩しいけれど、それだけで終わるはずがない、という嫌な穿った目線で見てしまうのもまた事実。
今のところ、ちょこちょこ背後に影が忍び寄る他は、安心して読めるのですが、人命を失った事故から物語が始まる以上、それだけで終わるはずがないというか。
話そのものは、これから動き出すのかな、という感じですが、巻末の作者の自己伝みたいな漫画が、どうしても肌に合わないのであれだけは辛い。
『トッペンカムデンへようこそ』
作者の人も巻頭で言っていましたが、なんでこの題名。
別にようこそ関係ないし、トッペンカムデン(国名)で起こる物語のほうが少ないんじゃねえ?
と、言いつつも、これ以外に別の題名も思いつかないのもまた事実。
トッペンカムデン王国、国王代理のローラと、それにくっついている魔法使いのレジーの物語………なんですが、一番甘かったのが第一巻の第一話ってどういうこっちゃ。
元々、読み切りから連載が始まったらしいので、第一話が最も甘いのは別におかしい話じゃないんですが、その後、ラブ度の進行ちっとも深まらないのが、この漫画の面白いところ。
好きが次第に大好きになっていく、とか、その過程を楽しむのではなく、この二人、出会ったときから大好きで、そこから始まっているので、それ以上の「感情」の揺れ幅はないんですな。
そのへん、非常に面白いところ。
例えば、少女漫画にありがちな、ライバルが出てきてとかそういうのもありませんし、終始、国内外の話で終わったり、それぞれがそれぞれに関係のないところでここに頑張っているのが、この漫画の少女漫画らしくないところだといえましょう。
勿論、根底にあるのは互いへの思いであったり、「一緒にいたらいけないんだけど好き」とか、一応の切ない設定であったりするんですが、それも、別に作中でそれほど肝として重要視されているわけでもないのがミソ。
宗教的にどうのというのではなく、実際、政治とか国のありようとして、力のある国王になる人間は特定の魔法使い(忌み嫌われることの多い)と親しくしてはいけない、という世俗的な禁忌なのですが、それをふっきって結ばれたいのではなく、その立場の人間がそれを守りつつ互いの関係がこのままであって欲しいという、ぬるま湯的な物語の進め方なんですな。
これがある意味、わかりやすいドラマティックさとは別な部分で、現実に敵に難しいわけですから、中々面白い。
物語中盤までは、国内外の物語で、後半は、大魔法使い(まあ、悪い魔法使いですな)との決戦に物語シフトするんですが、アクション中心、魔法なんちゃらが中心、わかりやすく言えば設定中心の後半戦よりも、この漫画が面白いのは圧倒的に中盤まで。
国と国とが関わったり、国で生きている上で個人がどうしたりとか、その辺りのほうが圧倒的に面白い。そこに恋愛要素は皆無であっても。
このへん、以前お勧めいただいた『辺境警備』とちょっと似てますな。辺境警備も神官さんの過去云々が出てきてから、わりとどうでもよくなった(よくなるなよ)。
こちらの作品の方が、恋愛要素が強いですし、脇役の人間たちがそろいもそろって愛に生きている(笑)ので、少女漫画の色が強いですが、基本的には、サザエさん漫画なんだと思います。
主人公のローラは、馬鹿だけど一生懸命な主人公の面目躍如で可愛いし、ある意味嫌味もなければ、元気以外の個性もないという感じです。ただ、女の子が一生懸命な姿は問答無用で可愛いという鉄の掟がありますからね。よく怒る顔も可愛いとか、彼女は鉄板だぜ。
レジーはツンデレと称するにはあまりにもツンの部分が弱い魔法使いで、個人的には、結構変態で鬼畜にはなりきれないへたれであると思っています。へたれが元気な女の子に振り回されずして、何のための少女漫画か!
他にも、愛する女の魂を手元に無理やり残して、「お前のためじゃない、俺のためだ」とか言い切っちゃうハゲとか、(またその女の子が天然でぼけぼけしてて可愛いんだ)、何でも知ってるけど何も言わない師匠とか、色々美味しいキャラクターがいます。
その中で、一応ライバルキャラなんだろうけど、それにしてはあまりに恋愛要素に絡んでこない、一番個性が薄いラズウェルの立ち位置が微妙です。
ローラが好きなんだけど、モーションあからさまにかけてるんだけど、基本、いい人なので、ドロドロすることもないし、レジーに食って掛かるわけでもないし、国であれやこれやあるので、女のことを常に一番にするわけにもいかないしで、なんていうか、真面目で面白みがないを体現している、結構気の毒なキャラクターです。報われないってわかってるしな、こっちは。
面白み、という部分では、奴のお父さんのほうがよっぽど腹黒タヌキで萌えるぜ!
作者様が、気を抜くとおじさんばっかりになってしまうこの漫画、とかあるんですが、いけませんかそれが!
むしろ、糖度が明らかに低いこの漫画で、花と言えばイコールオジサンでしょうが!
大体、絵のレベルは正直低い(特に後半の単行本表紙は酷い。カラーが苦手なのか、少女少年を書くのが苦手何だか知らんが)んですから、せめて、己が書いていて楽しいものを書きましょうよ! こっちにもそれは伝わる!
絵の話が出ましたが、絵は酷いです。人体も酷いし、アクションシーンとか結構最悪。まあ動きが下手なのは少女漫画のお約束みたいなものなので、致し方ないかと。
魔法のシーンとか、ギャグでやってんのか、という演出いっぱいあります。シリアスなシーンでもそんなですから、多分そっちを劇的に見せようとか、そういう工夫には興味がないんでしょう。少女漫画ですから。(便利ですね)
顔だけよりぬくと、そんなに悪くもないんですけどね、オジンは。
少女漫画にありがちな、これって前の話では謎っぽく語られてたけど、蓋を開けてみればそうでもなく流されるという話運びも健在です。
「あれは魔の島だぜ、生きて帰ってきたものはいないぜどうする?」
↓
「行って帰ってきた。その話は長くなるのでいずれ」
↓
「そうか、で、手に持っているものはなんだ」
とか、お前知りたいのはどうやってその生きては帰ってこられない島を抜けたかであってという部分は、すっぱり切り取られていて、見せる気もないんですね。
この辺、少女漫画の非常に面白いところで、読んでいる側もわりとどうでもいいっちゃあ、どうでもいい部分なんですよ。
どうやってその島を攻略したかなんて、どうでもよく、その結果、手に入れたもので、二人のラブラブっぷりがどう進展していくかが一番気になるところなわけですから。
少年漫画、青年漫画だとそうはいかない。むしろ、その難攻不落を覆した部分で盛り上げるんでしょうけど、それはこの漫画には必要ないんですな。
他の少女漫画家さんもおっしゃっていましたが、
「初めから勝つとわかっている闘いの内容を書いても仕方がない」
わけで、このわかっている、には、作者と読み手の両方の総意が自然に含まれているわけですね。
求めるものが、よりはっきりしているわけです。
だから少女漫画は、「その戦いに勝利し、半年後」とか、結構やるんですよ。
この漫画も、書きたい部分と興味のない部分がはっきりしているので、それに乗り切れてしまえば、非常に読みやすいんじゃないかなと思います。
さて、私が気にいったキャラクターですが、ぶっちぎりでシャイデック。
一話目で、ローラの命を狙うおかしな貴族ヒゲの小悪党だったんですが、奴は宰相になって政治の出番が多くなるにつれ、化けたぜ! なんだよあの無精ひげ! 目の大きさよりもでかい鼻の穴のくせに、何であんなにかっこいいんだよ!
私はこういう、世間ズレしてて、保護者的立場にいるんだけど、結構腹黒なキャラクターが大好きです。
ローラが敵国に攻めてこられたとき、牢屋から出したシャイデックの腕に思わずしがみついてしまうのですが、そのときシャイデックはそれを振りほどくわけでもなく、黙ってそのままにさせ、状況の説明をしたあげく、「まだ私の腕が必要ですかな」とか言っちゃって、なんだよお前その男前卑怯だろ!?
真剣にときめきました。
結構初期と性格不一致(連載と読みきりの齟齬。笑)があるんですが、ローラに肩入れしているというよりは、国のためにローラが必要だくらいの愛着を見せるシャイデックが好みでした。
結構あからさまにローラを大事にしている加減では、レジーよりシャイデックとの絡みのほうが、圧倒的に多い(説教含む)しな。
それ以外なら、エルファン。超ド級の脇役ですが、ぼんやりとして人のいい大臣姿に萌えました。ルックスも悪くないですし。ぼんやりしていて結構やることやってる男は大好きです。
純然たる恋愛主体の少女漫画ではないですが、基本的に、誰かを悪い人と位置づけるのではなく、それぞれの立場がある上での言動を重んじる作品として、楽しめると思います。
お勧めいただいてありがとうございました。上記二人が私のお気に入りのキャラクターでした(笑)。
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