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日々のつれづれ。ネタバレに過剰な配慮はしておりません。
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『ノーカントリー』
この題名だけ聞くと、英語力のない私は「国がない」とかアホな直訳をしてしまいそうなんですが、本来ならばその後に「for old men」とつくわけで、「時代についていけない老いた男から見た国」くらいになるんでしょうか。この「old men」は保安官である、トミー・リー・ジョーンズを指すわけですが、出番としては殆どありません。

個人的にトミー・リー・ジョーンズは「逃亡者」で惚れ、その後、缶コーヒーのCFのインタビューか何かで、「スタッフ全員引き連れて、アメリカに撮影に来るんだよ。自分が日本に行ってもいいって言ってるのに。自分だって日本に行きたいんだよ。京都とか好きだし」という発言をしたと知り合いから聞いたとき、惚れ直しました(何て可愛いじじいなんだ)。


アカデミー主要賞を取ったこの作品ですが、とてもじゃないですが万人にはお勧めできません。
サスペンス要素の強い作品には、わりと耐性があるのですが、人死にはNGだという方は見ないほうが無難です。特別な理由もなく、ダース単位でごろごろ人が死にますし、感慨深い映像としてではなく、ただの死体としての描写も、ひっきりなしに出てくるので、後味がいいとか、爽快感があるとか、台詞がセンスがあってオシャレであるとか、そういう楽しみ方もできません。
むしろ、台詞などにセンスはないと思います。
ダサいのではなく、ここに出てくるキャラクターたちはオシャレな会話などしないし、オシャレな会話をする必要もないので、淡々と棒読みに会話は進む、というような印象が強いです。


1980年代のアメリカ。
麻薬取引がらみの金を盗んだ男と、それを追う殺し屋。
それらを追う、引退間際の保安官。
三人の男たちが織り成すどうしようもない物語。

概要としてはこんな感じです。
インパクトとしては、助演男優賞も取った、殺し屋「アントン・シガー」演じる、スペインの俳優ハビエル・パルデムが圧巻。
外見はバナナマンの日村さんみたいなんですが、淡々と自分の意思のみで人を殺すので、そこに善意や悪意が存在しないだけに、逆に、絶対悪を感じます。
人を殺すのに、人並みの理由を全く必要としないだけに、それは見るものにとっては、相手の事情を鑑みる必要のない、理解不能の恐怖です。

ただ、ごく普通の格好をしているときのハビエル・パルデムさんは、素敵です。
yahoo! インタビューより
ご本人は「僕の何処がセクシーなんだい」みたいなことを言ってますが、どこもかしこもだよ!

最終的に、オチとしては意味不明な部分も多いですし、語られない部分もあるので、賛否両論わかれる話かと思います。
「わからなかった」部分も、色々ありましたが、それも画面で見過ごしたのかなと思わないでもないので、そういう意味では、もう一度見ないとなと思いましたが、それ以外の理由ではもう一度見たいとは思いません。
この手の映画は、つまらないと論じるのは簡単だけど(カタルシスも何もない)かといって2時間退屈だったかと問われるとそうでもない、という、判じるに難しい作品ですね。

以下、ネタバレ含みますので隠します。
ご了承の上閲覧ください。

+ + + + + + + + + +
『ノーカントリー』ネタバレ感想。



このEDとしては、結局金を奪って逃げた男は殺され、そして何人もの人間を大した理由もなく(大した理由がない、ということが殺し屋にとっての理由なのでしょうが)殺してきた男も、交通事故に遭い、その場を傷ついたまま去っていく(生死不明)というオチがなにもない時点で、すっきりできるはずもないんですが、逆に「アントン・シガーは逃げ切れたのか(死んだのか)」ということだけに関して言えば、それはどうでもいいことだと思います。

作中で、シガーは本当に人を殺します。気分で殺し、邪魔だから殺し、橋に止まっているカラスにも銃を向けます。
傍から見れば、理由なき殺人を繰り返すシガーは逆に、明確な生き死にの描写などいらないのです。
彼が生き残るにしろ、死ぬにしろ、勿論生きるための手段をいつも講じている上での結果ですが、彼が死のうが、生きようが、この物語の主題であり、語り部である「old men」・保安官にはまるで関係のないことなのです。

保安官には、無秩序に殺人を犯すその男が理解できない。
そんな男を生み出してしまった、この国が理解できない。
ついていけない。国は変わり、自分は取り残された。
自分とは違う生き物という点で、殺し屋、アントン・シガーは必要なわけで、シガーが死んだところで保安官は、そういった生き物が生まれてしまったという時点で安心できないのです。
あくまで保安官視点の物語(出番そのものは殆どない)として考えると、シガーの生き死に自体は、わりとどうでもいいものだと私は考えます。

この作品で一つ面白いな、と思ったのは、出てくる人物たちの感情描写が非常に淡白であることです。
普通麻薬の取引がらみの大金を手に入れたら、おびえたり、殺し屋に狙われれば(実際、何度も撃たれる)金を置いて逃げ出すとか、泣き叫ぶ描写が出てきそうなものですが、それらは全くありません。

それも、1980年代という時代の中では、死体は見慣れたものであり、死体を見慣れているベトナム帰還兵という設定の男だからこそなのでしょうが、その辺の、時代の男という表現も印象に残りました。
冷静に死体を検分し、金を運ぶために工夫をし、撃たれても騒ぐことなく、血反吐を撒き散らしながら、殺し屋に自分は殺されないという自信を持って、結局殺されてしまう男。
私なら泣いて逃げますが、男は殺し屋に最終的には立ち向かい、そして殺されます。
そのあたりの、度胸ではなく、割りきりさかげんも、保安官が目の当たりにしてきた時代なんじゃないかなと思いました。

見終わって、色々謎の部分も残るんですが、代表的な謎についてひとつ。

まず、「モス(金を奪って逃げた男)は誰に殺されたのか」「大金はどうなったのか」ですが、これは殺し屋とは別側の人間が、奥さんの居所を突き止め、落ち合う場所をわかってしまう以上、シガーが殺したのではないと思います。
シガーも、その後、奥さんの実家でモスの女房と会ったとき、金がここにはないということを知っている、というような発言を知っていましたし。
落ち合うはずのホテルから逃げていって車の連中が、モスを殺し、そして金はそいつらが持っているんでしょう。
ただそうなると、モスが最終的に死んだ、奥さんと落ち合うはずだったホテルの部屋の鍵が、空気銃(シガーは必ず錠を空気銃で射抜く)で射抜かれていたのかが、わからないんですが………。
そうなるとやっぱり、シガーが殺し、奪ったのかとも思うんですが、でもシガーはモスが何処に高飛びしようかは知らなかったわけで、その前の、敵対勢力が奥さんと接触する場面も必要なくなるわけですから、やっぱりモスを殺し、金を奪ったのはシガーではないんじゃないかなと思います。

ああでもあれか、先にシガーがそのホテルにいて、モスを殺し、金を奪ったところで、敵対勢力が追いついてきて鉢合わせした、ということもありなのか。
シガーに遭遇したから、あの連中は逃げ出したと。
そうなるとやっぱり、シガーがモスを殺したのか。
どうもこのあたりよくわかりません。

ただ、金に関してはその前にモスがホテルについた描写のときに、金の入った鞄を持っていなかったような気もするんですが………。このあたり、見逃しているのかもしれませんで、記憶が曖昧です。結構描写が飛ぶんですよね。ホテルの名前も色々出てきて混同します。

「モスの奥さんは結局シガーに殺されたのか」ですが、これは殺されたんだと思います。人の生き死にをコインで自分で決めろ、というシガーですが(物語前半で、実際にそうして人の生き死にを決めている)奥さんは「決めるのは貴方だ」といって、コインの表と裏をあてようとしないんですね。シガーはそれに何らかの感銘を受けたような描写があるんですが、結果、家から出てきて、靴の裏を気にする時点で、奥さんは殺されていて、その血を踏んだりしていないか、を見ていたんだと思います。

奥さんを殺す前に、別の殺し屋を殺しているんですが、そのときも床に流れる血を避けて、足を机の上に置く、という描写がされているので、それが前フリなんじゃないかと。
勿論、奥さんの言葉に影響を受けて殺さなかった、というほが、気分的にはすっきりするんですが………。

最後、保安官の一人語りで、ぶつっと物語は暗転して終わるんですが、私も「え、終わり?」と思いました。
あの唐突さが表すのは、希望らしいんですが、そんなもんこの映画の何処にもないだろと正直困惑。
保安官の独り言も、結局は、「自分の進む道の先に父親がいる」という以上、希望でもなんでもなく結局どうにもならない現実が目の前に横たわっているだけ、という気がしましたし。

設定としても、何でモスが二つとっているはずの部屋に、別の客がいる(結果、シガーはその連中を皆殺す)んだよとか、細かい「なんでやねん」はわりとあるような作品でした。
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