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日々のつれづれ。ネタバレに過剰な配慮はしておりません。
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『人生に乾杯!』
銀座で見てきました。
物語としては、老夫婦が金に困り銀行強盗を繰り返す、といういたってシンプルなもので、物語紹介にあるような、世相がどうのとか、民衆を巻き込んでというような社会派な作品ではありません。
可愛いじいさんと、可愛いばあさんの、二人の逃避行。
そこに関わる人間たちのおしゃれな会話を楽しむ、シンプルな映画でとてもよかったです。
なんと、ハンガリー映画。
私の中で、ハンガリーって何処ですかというくらいの知識しかないのですが、物語背景としては、わかならくても大丈夫かな、という印象です。

共産主義者の運転手をしているエミルは、情報によってある屋敷の捜査を行っていた。
突如屋根裏から落っこちてきた若い娘。
その娘が震えながら差し出したダイヤモンドのピアス。
彼はとっさに娘を庇い、軍の手から逃がしてやる。

それから五十余年。
家賃も払えず、借金取りから隠れるために、しゃがみこんだまま動けなくなるエミルがいた。
神経痛に悩まされるエミルに、糖尿病を患う妻のヘディ。
「お前が育てている観葉植物のライト代がかかるんだ」
「貴方だって夜遅くまで本を読んで灯りをつけているじゃないの」
「俺が十五年間、なんのために夜遅くまで起きていると思ってるんだ」
「貴方の車を売ればいいのよ」
「お前のダイヤのピアスを売ればいいんだ」
「私の最後の誇りを売れと?」

実はこの前に、クイズ番組を見て楽しんでいるヘディに、エミルがやってきて、無言で時計を指す、というシーンがあるのです。
これは、ヘディの糖尿病のインシュリンの時間なのです。
きっかけを映像で、繋がるものは会話で、という見せ方が凄くおしゃれです。

借金のためについに電気は止められ、暗闇の中で生活する二人の下に、執政官が訪れる。
エミルの本を差し押さえようとする執政官に、ヘディはピアスを差し出す。
「ダイヤモンドよ」
本は残り、ピアスは持ち去られた。
その様子を見て、駐車場に止められている車を見るエミル。
隣の車からガソリンをこっそり抜き出し、エミルは古いトカレフを持って、郵便局へ出かけた。
「お嬢さん、この袋に有り金全部入れてもらいたい。大丈夫、緊張しないでもいい。わしだって初めてなんだ。心配しないでいい」
そう言いながら、背後の年配の婦人にも気を遣うエミル。
「お待たせしてすみません」
「年寄りに急ぐ理由なんてないわよ」
こうして、エミルは金を手に入れた。
そのまま家には帰らず、強盗を繰り返すエミル。
ヘディの元に警官が訪れ、捜査協力を依頼する。
「万が一、ご主人の手が震えて銃を」
「主人の手は震えてなんかいないわ」

エミルの指定した石切り場で、二人は出会った。

「お前に会いたくなるなんて思わなかった」

そう言って抱き合う二人。
まだやることがある、そう言いあって愛車、チャイカで逃げ出し、彼らは強盗を重ねた。

銀行を狙うも、たまたま誰もおらず、
「どなたかいませんか! 強盗ですが!」
「誰もいないわ。きっとお昼休みなのよ」
「仮にも人の金を預かっているものが、あんな無用心でいいのか」
腹を立てながら、エミルは思い出したように言った。
「あと一つ、取り戻さねばならないものがある」

かつて自分を密告した宝石商の元に、エミルは向かう。
ヘディの手に渡されたのは、借金のかたに取られたものと同じ型のピアスだった。

金を手にいれた二人は、ホテルで過ごし、ヘディは新しい服を買う。
「神に誓って世界で一番美しい」
「神なんて軽々しく言わないで。信じていないくせに」
微笑み会う二人。
だが、そこにも警察が現れ、咄嗟のことで二人はその場を逃げ出す。
逃避行の中で、女性警察を人質にとり、彼らは若くして亡くなった息子の墓参りをすませた。
「わしらがなんのために、こういうことをしていると思っているのかね?」

怪我の手当てをしながら、ヘディは警察官の腹を撫でた。
「大事にしなさい。世界で一番大切なものよ」
彼らは、警察官を解放する。
「何故?」
「わしらの未来に君は必要ないからだ」
手を握り合って、チャイカに乗り込む二人を見送る警察官。

彼らはそのまま、非常線をはった警察車両につっこみ、チャイカは爆発炎上した。


とにかく、出てくるキャラクターたちの会話が凄く魅力的でした。
詳しく書きませんでしたが、警察側にもドラマがあり、おしゃれな会話がいっぱいあります。
要所要所に出てくる、老夫婦の会話がとにかくおしゃれで。
ホテルで誕生祝をするときも、
「君の70歳-一日の誕生日だ」
と、エミルがヘディの片手を自分の両手で包み込むようにして、キスをしたときは、倒れました。
西洋人のスキンシップは、かくもこう色っぽいか………!

妻・ヘディ役の役者さんがとにかく美人で。
ああいう歳の取り方カッコイイなあ、としみじみ思いました。
わりと長めですが、気にならない秀作です。
ラストに関しては(記述しておりません)「そうね」と思うか「いやそれは違うんじゃないか」と思うかは人それぞれですし、大体は肯定されると思うんですが、個人的には操作的にそれは無理がある、と正直思いました。
楽しいんですが、根底にある歳経たものの切なさや、先の見えなさがどうしてもあって、それに愛情が絡まってくると、余計に物悲しくなるような映画でした。
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