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日々のつれづれ。ネタバレに過剰な配慮はしておりません。
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『ブレイブ・ワン』
ジョディ・フォスター大好きっ子の私としては見ないわけには参りません。
恋人と共に暴行を受けた女性が、次第に世直しのようなことをやりだしてしまい、それに気づいてしまった刑事とのふれあい。そして、見つけ出した犯人にどのような所業を下すのか、というような暗い内容の話です。
ジョディ・フォスターはさすがの名演技。殺すべき相手を横にし、次第に顔つきが氷の様に固まっていく様は圧巻でした。
そして、相手役の寄る辺となる黒人の刑事さんも、これがまた人柄と真面目さだけが前面に押し出たような顔なんだこれが。勿論切れ者であるんですが、そうとは感じさせない朴訥さに、見ている側は救われるわけです。
「人を殺していいのは法の番人だけだ」
そう断じる彼に、もう人を殺してしまっている(成り行きとはいえ)ジョディ・フォスターがなんともいえない表情で笑うシーンは切なくなります。
ジョディ・フォスターも別に好きで人を殺しているわけではないし、それほど率先的に世直しをしているわけではなく、ようは、事件が我が身に降りかかった後、如何にして人は変わってしまうか、が肝なので、彼女がしてしまうことに嫌悪感はわきません。
むしろ、言いようのない切なさに、震えなくなる手に、「ああー」とため息が出るくらいで。
結果として自分が助けた少女に面通しをされ、手を握り、
「貴方が見たことを、真実を話せばいいのよ」
と訴えるジョディ・フォスターには、そこで捕まってもかまわない、少女の証言を捻じ曲げる気はない、という彼女の本来の彼女自身である、良心が垣間見れます。結果、少女はジョディ・フォスターのことを話さないのですが、それは結果としてよかったのか悪かったのか。

ただ、これラストが賛否両論だと思うんですよね。
自分の恋人を殺した相手を見つけ、銃をつきつけるジョディ。それを止める刑事。
そして、「殺していいのは法の番人だけだ」と自分の銃をジョディに渡す刑事。
それってアリなのかよ!? と驚く視聴者。
それまで散々、人を殺してはいけないとか「身近な人が犯人だったとしても捕まえる勇気を持つ」とか言っておきながら、何それ!?
対極にいなければいけない、だからこそ刑事の発言には意味があったのに、ジョディと同じ穴の狢であるならば、それまでの発言に重みがなくなっちゃうんですよ。結局お前もそういう奴なのねというか。
ジョディは刑事の銃で犯人を殺し、刑事は事件を隠匿するためにジョディにわざと撃たれる、っていうなんかこうどうしようもない印象のエンディングでした。
刑事が心情的にジョディの味方になるのはいい。でも、それを行為を同じくするのは全く意味が違うことであってさあ。
これなら、ジョディを止めて自分が犯人を殺す、っていうオチのほうがマシだったなあと思いました。
ジョディは本当に痩せぎすの怖いくらいの美人、で見ごたえありです。


『椿三十郎』
織田裕二とトヨエツが主演だった映画はわざわざ映画館に見に行きました。
その作品はそれなりに面白かった、という感想だったのですが、今回DVDを借りて見たのは大本の黒澤明監督のやつです。世界の三船が主演の奴ですね。敵役が仲代達矢氏のやつです。最高でした。
時代劇はまさにエンターテイメント。
シリアスあり、お涙頂戴あり、殺陣あり、そして笑いあり笑いあり笑いあり(超重要)。
そのどれもが詰まっている、サービス満点の二時間でした。これが1962年の作品だっていうんだから、どんだけ最先端。そしてエンターテイメントの普遍さを感じられる作品です。古臭さなんか何処にもないぜ。
今の時代劇は、フィルムだからカメラだかの規格が変わってから画面が明るくなったのですが、この映画は白黒でその風合いがまたいい。
薄汚れた浪人の椿三十郎の着物や、月代のない髪形の汚さが、白黒ならではのくすみ具合で魅力的です。
居並ぶ役者陣もすばらしい。
やっぱり、素浪人は迫力があってこそ、ですね。
織田にはちゃらんぽらんな印象はあっても、凄みがない。時には人を殺せるのではなく、人殺しも平気でできるけど面倒だからしない、くらいの、あくまで真っ当ではない人間の三船椿は、ほんっとうに迫力と凄みがありました。
これなら、仲代達矢演じる室戸半兵衛が「俺とお前は同じだ」と言うのもわかります。やっぱり、人がよさそうに見えちゃ駄目だよね。人がいいんじゃなくて、「しぶしぶお人よしに付き合う」程度の常識との接点なんですよ、素浪人っていうのは。
そして、富士額の仲代達矢が最高に悪くてカッコイイ。
これなら「俺は悪(わる)なのだ」と不敵ににやりと笑うのも許せます。トヨエツにも残念ながら凄みはない…。あ、そうか。凄みがない同士でちょうどいいキャスティングだったのかあれは…?(ひどい解釈)
他にも居並ぶ役者さんが、小林桂樹さんや、田中邦衛、そしてあまりのカツゼツの悪さに音量を大きくしなければならなかった加山雄三など、山盛りです。こいつは若いころから本当に才能がな(以下略)。
城代家老の奥様も、ちゃんとお歯黒をしていたりと、細かな時代考証も凄く楽しめます。門構えも凄く立派だし、土塀一つとってもセットとしての迫力も満点です。金かかってんだろうなあ。
殺陣の迫力は、美しいのではなく、泥臭く迫力があって三船にぴったりでした。蹴る殴る鞘で打ち倒す含めての殺陣なわけです。人殺しを嫌がるのではなく、面倒くさいから殺さない、刀を抜かないっていうポリシーも垣間見れるというか。
そして、最終的には仲代と一騎打ち。居合い一閃。噴出す血。倒れる男。
「どちらかが死ぬしかねえ」
という椿の言葉通り、死ぬしかない結末を迎えて終わるのが、彼の善の部分ではない部分(悪ではない)こそが本質であると暗に示しているようで、ダークヒーローの面目躍如でした。
時代劇にしろ、西部劇にしろ、「こういうヒーロー」は、最後、去るしかないんですなあ。その場所に残って明るい家庭を築いたりは決してしない。日常とは相容れないからこそのかっこよさでした。超満足。

こうして見ると、織田主演の『椿三十郎』は凄く原作に忠実だった、っていうのがよくわかります。場面展開とか話運びも全部一緒だったし。
それだけで、演じる人によってこうも違うのかという評価をされてしまうのもつらいところなんですが。
それこそ、織田裕二に、トヨエツっていう「若い人も取り込もう」っていうキャスティングではない、三船椿三十郎の凄さがよくわかります。まともに見た黒澤作品第一作目だったのですが、とても当たりでした。
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