個人的にはいまいち。
戦後の只中の文化を踏まえた作品を書きたいのはわかるんですが、それが説明臭くては意味がない。説明臭い=説教臭いであり、台詞の使い方がただの長々とした文章の羅列になってしまっているのが、読んでいて辛かったです。せっかく漫画なんだから。
後、もう少し画力も欲しいところです。この方の絵柄はきれいなのかもしれませんが、華やかなりし頃ではない時代を描くには、ちょっとあくがなさすぎる。逆に純然たる少女漫画だとしたら、それこそ臭さが必要だと思います。
吉田秋生作品は、『BANANAFISH』で入り、その後『カリフォルニア物語』、短編と一通り読んでいます。『YASHA』に関しては絵があまり好みでなくなってしまったのと、男性山盛り感があまりに強かったので未読ですが。
『ラヴァーズキス』でも思いましたが、心理描写を説教臭く見せない手腕は見事の一言です。
女性の心理描写は特に、読んでいる側が同性であればあるほど、感情移入できる幅が狭くなると思うのですが、この人が女性を描くと、その描き方に嫌味がないので、非常に冷静な気持ちで読めます。勿論いい意味で。
特に、怒りの表現が秀逸で、怒り方が説教臭く、理屈っぽくないのが個人的に非常に現実的です。確かに怒りの理由を探せば、それは長々とした文章になるかもしれない。精神を分析した結果レポートのような文字の羅列が存在するかもしれない。でも、ここに出てくる人物達は怒りたいから怒るという明確な理由がはっきりしているし、語り過ぎないので、喜怒哀楽の「怒り」の部分に非常に好感が持てるのです。
どれだけ理屈をつけても、怒りは感情であり、感情は理屈ではない。腹が立つから怒るのであり、嬉しいから喜ぶ。
それらがストレートに出てくるので、人間色々腹の底で考えているかもしれないけれど、それだって、原稿用紙に並べ立てるようなものじゃないんだ、と思えてきます。
舞台が鎌倉なだけに、『ラヴァーズキス』の主要人物がスピンオフで出てきたりするので、そういった意味でもお勧めです。勿論読んでいなくても全く問題はありませんし、私も「ああ、あの人」という読み方程度しかしませんでした。
あの人がこんな人だったんだ、というよりは、それぞれで生きているのだから、それぞれの個性の見方があって当然だ、と言いましょうか。
誰もが悪い人ではないけれど、それでも腹が立つ人はいる。
誰もがいい人ではないけれど、それだって嬉しいことは嬉しい。
どうしようもない人は、本当にどうしようもないのだけれど、それでも、そんな一面しかないわけではないけれど、やっぱりどうしようもない。
色々な人がそれぞれの生き方をしている、その描き方が秀逸な漫画でした。
個人的にお勧めの短編。ちなみに『カリフォルニア物語』では、当然兄派でした(苦笑)。
短編ギャグマンガ集。個人的に、笑いの部分だけ抜粋するのであれば、『荒川アンダーザブリッジ』よりも、こちらのほうがお勧めです。短いページに笑いを凝縮させるのにはエネルギーがいるでしょうが、読みやすいと思います。
シスターとか、ビリーとか、星とか、この短編集から殆ど登場人物引っ張ってきているんですね。
白線渡りのシロさんが、この短編集の容姿のままだったら愛せてなかった。
相変わらず内容があっさり酷い漫画です。描き方が淡白なせいか、それも含めて日常生活っていうか、どこかずれている連中ばかりなせいか、ちっとも陰惨な印象ではありませんが。
いやもう、主人公のお父さんの腹の底の見えなさ………もとい、腹の底は見えているんだけど何色だかさっぱりわからない具合が、ぶっ飛んでるを通り越して怖すぎる。
そりゃ、兵吾が唯一の常識人として輝くわけだ。
「俺は、あんな奴らと仲良くしたいとは思わない」
「俺だったら、絶対に彼女をこんな仕事につかせたいと思わないけどね」
化け物変化を相手にしている立場だからこそ、の発言ではあるんでしょうが、それにしたってなんだか切ないですね。別に初音のことを異性として意識しているわけではない上での、っていうのがまた。
PR