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日々のつれづれ。ネタバレに過剰な配慮はしておりません。
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「ヴィンランド・サガ」 幸村誠著
最新刊まで読了。
中々面白いです。題材がバイキングなので、内容そのものは、略奪虐殺強奪で、愉快でもなんでもないんですが。実際、私の価値観には全く合わない人間ばかりなので、最初は凄く辛かったんですが、トルケルが出てきて、おのれの主張を漫画内においてしだしてから、凄く面白くなりました。
主人公トルフィンは、幼い頃自分の目の前で父親を殺され、その復讐のためだけに生きている。復讐の相手である、アシェラッドの部隊に居座り、命令を聞くかわりに、正当なる決闘をアシェラッドに要求し、殺すことだけを生きがいにしている。実際、彼は個性と言う個性は今のところ出てこないので、物語の中枢にいることはいるけれど、その憎しみ以外は、あまり見る面が乏しいキャラクターです。主人公は主人公なんですが、現在は、「成長」した様子も見られませんし。ただ、彼は目的以外どうでもいいので、アシェラッドを殺すために他の人間を殺すことをなんとも思わない、というのは、復讐者として面白みがあります。変にお情け頂戴ではない分、人間臭いんですね。

そして、齢四十を超えたアシェラッド。策士であり、狡猾であり、頭のいい人間なのですが、彼も同じく、残虐な行為も平気で行います。罪のない村人全員虐殺とか、平気です。ただ、彼はトルフィンと違って、その行動目的が崇高である分、なんていうかな、弱いけど入り込みやすいのです。読んでいる側として。
彼は、ある土地で尊敬されていた将軍の末裔であり、その血のためだけに生きています。普段は全く表しませんが、彼は、自らの「静粛な野望」を叶えるために、執着するものができてしまい、一気に弱くなってしまう。
血も涙もない人間が、所詮自分の好き嫌いで、自分が「信じるもの」のために生きている、という甘さ加減が、アシェラッドを非常に魅力的に見せています。彼は、生み出すために目的は足さねばならず、殺すことが目的のトルフィンより、実際、やること色々あって大変なわけですね。その苦労さ加減を微塵も出さずに、付き従う姿は、まさに老獪な軍師といえます。
外見? M字額に超萌えます。ずるいよこの人! ルックスでもすげえ優遇されてんだもん! 苦労性の過去にわけあり妻子なしの日和見男、ってだけでもスキル持ちすぎなのに!

そして、前述しましたトルケルです。その名を聞いただけで、誰もが震え上がって逃げ回るほどの戦士で、トルフィンの父を自分より強い相手として尊敬しています。
彼はとにかく「強いものと戦って死ぬ」ことだけが生きがい、というか、彼の行動理念はそれしかないので、基本的に、彼がやっていることは、自らの敵を殺す、それだけです。その敵が弱かろうが、強かろうが敵は敵であり、種類は問わない。そのかわり、より強ければ強いほどいい。なので、一応彼にとって敵ではない弱者は、守備範囲外なわけです。おのれの欲望として。だから、彼自身が虐殺をしているシーンは出てきません。部下が、負けた敵をなぶり殺しにしているシーンなんかは普通にありますが。
だからって、彼が高潔とかそんなことはなく、彼は敵しか見えていないために、その敵を倒すためなら手段は選ばないわけですから、結果として、虐殺も平気で「できる」男なんでしょう。
ただ、現実として、「シーン」で、その虐殺行為が描かれていないので、私としては、彼が出てくると楽なのです。正直、虐殺シーンばかり見せられると、苦しいので。
彼は戦士であり、そのことに誇りを持っている。
戦うべくして戦い、そして死に、エインフェリアルになることを望んでいる。これは勿論信仰ですが、神様へたどり着く道というよりも、彼にとっての道である、という揺らぎなさがカッコイイわけです。
だからこそ、自分が望んだ「本当の戦士」になった、トルフィンの父である、トールズの生き様がうらやましい。

「奴のことを十五年考えて、肉体の生き死には問題じゃねえと気がついていた。戦士に大事なのは魂。そのありかだ。奴の魂は遠くへ行った。俺にはまだ理解できない俺にはまだ届かない、ここではないどこかへ。そこできっと、「本当の戦士」ってやつに………なったんだろう」

所詮、虐殺者の戯言であり、殺された人間にとっては、相手がどれだけ高尚な目的を持っていようが、下賎だろうが、知ったこっちゃないんでしょうし、それこそ、魂なんてお笑い種でしょうが、時代が時代ですからね。キリスト教の『愛』や、父親の愛などの、宗教的な話題もちらほらありますが、その宗教を蹴散らすかのようなトルケルの根底に根ざしているものが、魂という非常に宗教的なもの、というのも中々面白いです。

今のところ、脇が輝いていて、主人公であるトルフィンや、これから物語の要になるであろう、王子クヌートの活躍も、今後をお楽しみに、というところでしょうか。続きが非常に楽しみです。
ただ、拷問シーンとか本当に平気で出てくるので、その辺は要注意で。私は物語や、キャラクターとしては好きですが、やっぱり、ただの一平民である以上、その手のシーンを「お勧め」することははばかられるので。
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