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日々のつれづれ。ネタバレに過剰な配慮はしておりません。
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「公式サイト」

桑山又左衛門の開墾は順調に進み、殿様からじきじきに言葉と品をたまわるまでになる。
百姓たちと土にまみれ、低頭して、桑山から品を頂く、藤井庄六の姿が傍で見ている分には、なんとも物悲しい。庄六は本当にいい奴なので、「昔の友として鼻が高い。後光が差していた」と上機嫌で、妻女を桑山の家に使わす始末。
人がいい、と言ってしまえばそれまでですが、純粋に友人の喜びを自分の喜びにできるって、大人になってしまえばしまうほどそうそうないので、感慨深い。
「桑山はこれからもっと偉くなる。だから、今のうちにワイロを」
と、茶目っ気たっぷりに言う庄六の奥方と、楽しい会話をしていた満江ですが、そこに、旧友であり上司である、杉山の奥方が現れ、一気にぎすぎすした雰囲気に。
「私にも、杉山にも友人がいないのです」
と言われても、
「はあ」
と困惑したふうの満江に感情移入。いきなり上司の奥さんが家に来て、遊びに来たとか言われても、正直迷惑。
しかも、同じ旧友である庄六のことは一切触れないしで、そりゃ庄六の奥さんもそそくさと帰るわ。

桑山又左衛門はどんどん出世し、中老にまで上り詰める。

その祝いに、庄六は自ら編んだ、小さなわらじの飾りを桑山又左衛門に差し出す。
「わしからの祝いだ。縁起物だ。おあしがたまる。足腰が丈夫になるという。金がない。それで、勘弁してくれ」
杉山は、庄六の手をしっかと握ります。
「庄六、わしは嬉しい。お前のような友がいて、ありがたい」
「隼太、お前は立派だ。よくぞここまで上り詰めた」
「ありがとう!」

同じ旧友であるはずの杉山に、出世の報告をされたとき、嬉しそうな表情一つ見せなかった桑山が、心底嬉しいと思える相手がいることは、本当に幸福ですね。ここに、ちらとも姿を見せない野瀬の存在も着になりますが………。
庄六が貧乏侍だから、上位に立って喜べるのではなく、たとえ同じような立場であっても、同じように喜んでくれるからこそ、桑山は庄六の気持ちが嬉しいのですな。

飛ぶ鳥落とす勢いの桑山に、幕府重鎮からのお声が。
桑山が中老に登る際、異を唱えたものがいると。
過去の政変時、小黒派の一派をわざと逃がしたのではないか、と思われているのが杉山だと。
杉山は、小黒派を根絶やしにすべく、わざと息子らを見逃し、その挙句、桑山と野瀬に打ち倒させたのだと。
こうなると、桑山の中老出世に異を唱えたのも、その出世を危ぶむ杉山と見てまず間違いないのでしょう。

そして野瀬は桑山とは正反対に、転がり落ちていく。
「一蔵を切らせて、出世したお前など」
捨て台詞を吐いて、去っていく野瀬。
どこからどう見ても、自分の弱さのために、人生踏み外したとしか思えないのですが、庄六や野瀬に変な負い目のようなものがある桑山には、黙って見送るしか出来ません。
野瀬もなあ。親友を切った挙句、その奥方と内々になって、道踏み外しているんだから世話ないというか、自分の尻を自分で拭く度胸もないというのが、こいつと桑山、杉山、そして庄六との差だろうな。

「このような大事を頼めるのは、貴公しかおらんのだ」

そうぬけぬけと言い、自分を野瀬を利用した杉山。

そして、中老から家老にまで上り詰めた桑山。

しかし、杉山によって、開墾の金子を引き受けていた庄屋にまで手が伸びる。やましいことは何もなくとも、帳面をどう使ってくるか。
桑山に庄屋から、鉛銀を使った横領が起こっているのでは、との情報を得て、桑山は杉山の裏を見る。
同僚の和田氏の助力を得て、杉山の、未納の百姓の石高を一気に徴収するという案を退けた桑山は、役職揃う会議の場に出向くことになる。

「ここに来る前に、杉山の家にも行ってきた。珍しくあいつが出てきて、桑山を葬るのだと言っていた」
「………はは、そうか」
「………かわいそうだな、おぬしたちは………」
そう言い残し、去っていく庄六。
もう、かつての友は全てばらばらになり、欠片すらない。
明確に反旗を翻した桑山。
初めから友ではなかった杉山。

「隼太、お前本当に悪い顔になったな」
「それはお互い様だろうさ、鹿之助」

ずらりと並ぶ、役職の面々。
そして、殿。

政治を論ずる場にも関わらず、庄屋の金子で桑山が過去の女をかこっているとの話を持ち出す杉山。
「といっても、もういい加減の年寄りのようだがな」
揶揄に、顔色一つ買えない桑山。というか、杉山本当に最低だな。


「しかし、そこまで言われましては、こちらも少々、杉山殿の不可思議を申し伝えねばなりません。大目付殿、古い話ではあるが、先の執政交代のおりに、小黒正三郎が杉山殿を襲ったことが、一族滅亡のもととなったのは、周知のとおりでござる。しかし、その襲撃、杉山殿がしかけた罠だったという説がござる。これは、証拠があることゆえ、一度お調べになってはいかがか。

いまひとつ、ご金蔵の鉛銀のことがござる。この鉛銀、お家三代のご遺言により、戦支度のために残されたものにござる。この鉛銀、蔵にわずか二つ残すのみ。しかもおどろくべきことに、二十八個の鉛銀、金でおよそ六、七千両がなくなったのは、杉山殿が執政として采配をふるうにいたってからだと判明」
「使い道ははっきりしておる! 上方商人からの利息の支払いにあてたのだ。元締めの帳面にはっきり記載してある!」
「使い道を間違われましたな」
「堅いことを申すな。なるほど、あれは戦のために蓄えられていたものだ。それより、お家の財政のために、役立てようとしたわしの才覚が、それほど咎められるものとは思わん」
「ご公儀から再三のお達しのある、海辺のそなえは。仰せの備えではあるまいか。費用を出しかね、海辺の備えをおろそかになっては、申し訳がたちますまい。執政の我らに相談もなく、お上のお許しをえるわけでもなく、独断の所業、ご遺言を破られた、これは杉山家老の大きな落ち度と思われるが、いかがか!」

にらみ合う二人。
「………はめられた………」
立ち去るお上。
平伏する重鎮たち。
次々に立ち去る面々。
「勝ったと思うな………!」

それを背景に、談笑する杉山の妻と、桑山の妻満江。

「ついに………ついに、ここまできた」

雪の降る、それはしんしんと積もる日の出来事であった。



ここで、別に裏金の真の使い道とか、確固たる証拠は、という深い話はさらっと流し、実際目に見える、鉛銀がなくなっているという証拠を、公の場で突きつけられた時点で、杉山の負けは決まっていたといえましょう。
実際杉山が失脚したからと言って、桑山そのものに何ら変化のあるものではない、特にプライベートに関しては、というところが物悲しい。
杉山とは元々友人ではなかったし、庄六とは立場が離れていくばかり。
野瀬とは、次週果し合いを申し込まれているようですし、何かを得るために進めば、何かを失うのはもはや、必定であると。

何処をどう探しても、庄六の良心しか救いがなさそうな展開ではありますが、次回へ続く。
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