忍者ブログ
日々のつれづれ。ネタバレに過剰な配慮はしておりません。
[271] [270] [269] [268] [267] [266] [265] [264] [263] [262] [261]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

『ラッキーナンバー7』
個人的に、『スティング』みたいなどんでん返しギャング映画を想像していたんですが、違いました。
物語の初めこそ、「間違われた男」の笑い要素があったり、マフィアのボス二人から間違えられ、借金を返すか人を殺すかの二択を迫られた男がどうするか、の謎の要素があったんですが、基本的に謎を解くための要素は、物語の序盤でどかっと出てきてしまっているので、わかる人は開始十分くらいでオチがわかってしまうと思います。
私は手探りで「ああいうオチかもしれないし、こういうオチかもしれない」と考えながら見ていたので、実際に種明かしの行動が始まるまで、確証は持てませんが、わかってみればそれ以外に考えられない、というオチでした。
それが悪いというわけではないのですが、そこに行き着くまでの物語に、爽快感を得なければいけない種明かし部分から、一気に迷走し始めるのが気持ち的に萎えました。
確かに、謎がわかるのは嬉しいんですが、それまでの展開がなかったかのように画面から死体の嵐です。
そのギャップに驚いた、というほどこの映画は、「悲惨な殺戮における感動」を前面に出しているわけではないので、なんだか死体が続々と増えるという種明かしから、逆に冷めてしまいました。
バレる、ということだけに関して言えば、その一瞬だけが過ぎ去ってしまえば、後は説明でしかないわけですから、そこに感動や、某の感情を持ち込むのは難しいと思うんですけど、それにしたって、肝心の種を明かす人間の感情があまりに描かれないので、逆に興ざめしてしまった感じです。
いわゆる、ジェノサイド的な演出をしたいのであれば、それこそラストで語れるのは、渦中の主ではなく、渦中の主のそばにずっといた人間であって欲しいと思いました。あの人物は惜しい。

サスペンスとしてハラハラする内容ではまったくありません。主人公の間違われた男そのものがハラハラしていませんので。見ている側も、ハラハラしない間に(むしろ「お前なんでそんなにハラハラしないのよ」と思うことはあっても)解説されてしまうので、起承転結すべてがわりと平坦な映画でした。
ただ、役者さんとしては、当然モーガン・フリーマンは上手いですし、ブルース・ウィリスも静かな役が似合っていましたし、スタンリー・トゥッチが出ていたのには、びっくりしました。最後キャストを見るまで全く気づかなかったよ。いやらしい感じの役だったからなあ。これはもう、一人スタンリー・トゥッチ祭りをするべきなのだろうか。
そろえた人たちとしては文句もないんですが(私は、ジョシュ・ハートネットにあまり関心がないので割愛)どうにもキャラクターとして生かしきれていないかな、という感じでした。
実際、本当の「どんでん返しサスペンス」であれば、映っている場面すべてにカギがある、カギと思わせるだけの演出があるくらいでもおかしくないと思っているので。サスペンスに必要なのは、謎とそれを凌駕するくらいの登場人物の個性じゃないとなあ。


『ブロークバックマウンテン』
極悪に体調が悪いときに届いたので、これは私にトドメをさしたがっているのだろうかツタヤがと真剣に思いました。具合の悪いときに見たい映画じゃねえー。

故・ヒース・レジャーの作品。とにかく知り合いがのめりこんでいるので、どんなもんだろうと借りてみました。私は普段、重くて暗くて辛気臭い人生哲学みたいな作品は絶対に選ばない(なんでフィクションの世界で辛い気持ちを味わう必要があるのか)ので、初めからかなり身構えた状態での鑑賞だったんですが、わりと普通でした。それほどセンセーショナルに構える必要があるとも思えません。実際、同性愛の映画というよりは、普通の恋愛映画という感じでした。

イニスとジャックは夏の間、ブロークバックマウンテンで仕事を行い、関係を持つ。その後、結婚や子供も生まれるが二人は二十年にわたり、秘密の逢瀬を重ねるのだが、というのが大体のあらすじ。
勿論私はその時代背景や、同性愛者だというだけで、リンチによって殺害されてしまう状況での恋愛、というのは実際想像もできませんが、当人達が気にするほど、周囲が気にしているのではなく、当人達が気にして(この場合、イニスが殆ど一人で他者の目を気にしているが)いるから気になる、という表現があったのが面白かったです。
まず、二人の関係のきっかけになる夏の仕事の雇い主なんぞは、自分の目で(憶測ではなく)二人の関係を見てしまっているのですが、次の夏、ジャックを雇用しないのは、あくまで「仕事をおろそかにして楽しんだせいで、俺の羊が死んだ」からなんですね。大体、その気になればこの雇い主は、いくらでもジャックとイニスを中傷できる立場にいるわけです(その時代の常識においては)。ですが、雇い主は二人は同性愛者であるということを、口外したふしは全くないし、世間の噂にもなっていない。彼にとって二人の関係性が重要なのではない、というのが、イニスのように神経質に同性愛を隠そうとする人間がいるものと、また対極をなしていて面白かったです。

イニスの奥さんも子供まで生んで離婚ですから、お気の毒としか言いようがありませんが、どうしても、子供を生んで生々しい女と、ひと夏山で出会い、恋焦がれる愛では、勝ち目は薄いなあとわりと冷静な目で見れてしまいました。これも、ようするに、亭主が他に好きな人間ができて離婚、自分と結婚したけど元の恋人に対する思いが残っていて上手くいかなかった、という話なので、恋愛としてはわりとありがちといえばありがちなテーマなわけです。

いざここで、同性愛であるということを強調すると、話の視点が違ってくるのかもしれませんが、私は割りとフラットな視線で最初から最後まで見られたので、前評判ではひっかかるかなと思っていた、このいわば、利用された形とも思える奥さんのエピソードも、さらっと流せました。

自分の欲望に忠実なジャックと違い、イニスは過去に同性愛者のリンチ殺人を目の当たりにしているだけあって、臆病な言動が多く見られますが、個人的にはイニスのほうが欲張りであって、こずるい感じがしました。同性愛者であることを、実は上手く隠せていないのは圧倒的にイニスであって、それなのに世間の目垣になるから夫婦間の関係も良好に見せたい。一緒にいたいというジャックの希望は叶えられないけど、ジャックがメキシコで他の男性と関係を持つと「次にやったら殺す」とまで嫉妬心を燃やす。お前それどっちつかずなだけに性質が悪いよ。切なさ担当というよりは、最初から最後まで乙女担当、という感じでした。
個人的には、ジャックの方がある意味オープン(同性愛主義のことではなく、己の欲望に対して)なので、逆に家族関係も仮面夫婦なりの平穏を保てていますし、ジャック以外の男の影もあるようで、かつビジネスでも成功を収めているようですから、あけすけな感じが好感度高かったです。
ジャックは他の男性と浮気をした、というよりは、同性愛者としてイニスを心から愛している。けれど、他の男も恋愛や肉体関係の対象として見られる、ということなんでしょう。イニスに関しては同性愛者というよりは、ジャックだけがイニスにとってたまたま特別だった、という感じもしますし。

音楽と、ブロークバックマウンテンの映像がとにかくきれいなので、そこに男二人が言葉少なに並んで座っている図は、非常に美しかったです。どうしてもこれが女同士だとかしましかったりしますし、男女だと生々しかったりしますが、これがいざ、その時代で禁じられている関係の二人となると、御伽噺要素も相まってか、非現実的なきれいさが出てくるのが不思議です。

結局二人の関係は、ジャックの死によって現実的には終わるんですが、この場合イニスによぎった妄想のように、リンチされたと見るか、そうでないと見るかは人それぞれということでいいんでしょうか。私は実際、リンチされたとは微塵も思わなかったんですが、結構意見としては半々のようですね。変な言い方をすれば、リンチにあうほど、ジャックの頭が悪いとは思えません。仮にも社会的にかなりの成功を収めているわけですし。イニスは逆にされそうですが。ジャックはごく普通に、タイヤのパンクを直していて事故で死んだ。呆気ないかもしれないけれど、それだけだった、という印象が強かったので、リンチされて死んだという解釈が現実だった、という感想はわりと意外でした。

その後、イニスはジャックの実家で始めての夏の山で、二人の血がついたシャツ(しかも重ねてハンガーにかかってる)を見つけ、それを持ち帰り、自分のクローゼットの中にしまって「永遠に一緒だ」みたいなことを言って終わります。
このラストは本当に、どこからどう見ても超王道な恋愛映画なんだなあ、としみじみしました。肉体は滅びても魂は永遠って、もうどれだけなのかと。

私は特別感動もしませんでしたし、涙を流したりもしませんでした。ひとえに、ごく普通の恋愛映画として見られたからかもしれません。とにかくまあ、イニスが煮え切らないんだこれが。自分の人生も、自分が他人の人生についてもたらす影響からも逃げている、という感じで。個人的には圧倒的にジャックが好きです。ただまあ、ジャックも両親が言うように口では偉そうなことを言っても、結局何一つ実行に移せなかった男でもあるわけですが。
二人は年老いていく。けれど、二人の間にある思いと、ブロークバックマウンテンの美しい景色は変わらない。
ごく普通の恋愛映画として、個人的には鑑賞しました。ただし二時間超は長すぎるなあ。


レンタルDVDの特典として、CFが入っていたんですがもうこのCFのコピーが、あまりにそれっぽくて笑えます。「僕達は永遠に離れない」とか、これそういう映画じゃな………いや、そういう映画か。
全く同じシーンを使っていても、和訳が全然違うのもびっくり。「俺はいい夫だろう」とかイニスが言うシーン、あれもう、とっくに離婚した後なんですが。
PR
カレンダー
12 2025/01 02
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
ツイッター
ブログ内検索
メモ

公式サイト11月10日発売予定








ファンタスティックMr.FOX
アリス・クリードの失踪
4デイズ


美術系
・氷見晃堂(石川県立美術館)
・佐々木象堂(佐渡歴史伝説館)
Powered by ニンジャブログ  Designed by ゆきぱんだ
Copyright (c) 雑記 All Rights Reserved
忍者ブログ / [PR]