忍者ブログ
日々のつれづれ。ネタバレに過剰な配慮はしておりません。
[347] [346] [345] [344] [343] [342] [341] [340] [339] [338] [337]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。




純然たる戦争映画でした。
秘密を抱える女性。
事故に遭った男性と、看護を任されたその女性との交流がメインなのですが、男女が密室で二人だからといって、ロマンチックな印象はかけらもありません。
序盤、見ている側は、この男女がそれなりの仲になるのだろうという目線で見ていくと思うのですが、それは中盤でやっと「そんなような気配」が生まれ、そして最後には覆される、という結果で終わります。

台詞そのものはおしゃれなものがないわけではなく、物語の序盤と終盤で、かかっている台詞もあるのですが、それを「楽しむ」ような映画ではありませんでした。


場所は石油採掘をする海の中の基地。
休暇を無理やり言い渡された女性は、偶然そこで数週間働くことになる。
火傷により、自分で体も動かせず、目も炎症で見えなくなった男性・ジョゼフは、決して自分のことを話さない女性・ハンナのことを知るために、他愛もない冗談や、会話を続ける。
「コーラって誰?」
「俺は自分の小さな秘密を話した。今度は君の番だ」
好きな食べ物は、チキンとリンゴとライス。
誰とも関わらず、耳が不自由なために聞きたくない話のときは、補聴器を切る。毎日同じ生活を続け、休むことはせず、毎日石鹸を変えて体を洗う。

一人がいい男たちが集う、石油採掘場。
男性同士がキスをしあい、その罪の意識におびえるかのように、 ハンナに家族の写真を見せる男。
「子供は可愛い。人生は不思議だ。そう思わないか?」
「ええ、思うわ。本当に」

次第に交流を深めていくジョゼフとハンナ。
ジョゼフは「自分は泳げないんだ」とハンナに告白する。
「海の真上なのに?」
笑うハンナ。
「父は僕をボートに乗せて湖に出た。そして、何かわけのわからないことを叫びながら、僕を湖に投げた。でも、父も実は泳げなかったんだ」

この映画は、わりと台詞がぶつ切りのところで、場面展開が変わることが多いのですが、それが余韻を持たせる要因になっていて中々上手いです。

ジョゼフは自分の親友の妻に惚れた過去を、ハンナに話す。決して、してはいけなかったと。
ハンナは、訥々と自分の過去を話していく。
クロアチアの戦争。捕らわれた自分と親友。そして毎日受ける、性的な暴力と、肉体への暴力。母親に娘を殺すように銃を持たせ、娘の性器に銃身を突っ込ませる。
「もう二度と孫の顔は見られないな」
と、誰かが笑いながら言う。
自分を犯す男は、耳元で笑いながら「すまない、本当にすまない。すまない」と言い続ける。
嘆く女の体をナイフで何百もの傷をつけ、塩水を塗り、痛めつける。
ハンナの親友の嘆き。助けることもできずに、彼女は毎日祈った。
「どうか、早く」
「一刻も早く」
「彼女が死ねますように」
「お願いです。どうか」

ジョゼフは彼女の裸を触る。そこには無数のナイフで刻まれた傷が残っていた。抱き合いながら、涙を流す二人。

そして、ジョゼフはヘリコプターで病院に搬送されることになる。
「ハンナ、ハンナ!」
目が見えないジョゼフは叫ぶも、ハンナはその声に背を向けてその場を去った。

ここで、ハンナが聞きたくないから補聴器のスイッチを切っていたのか、それとも聞こえた上で振り返らなかったのかは、語られません。

傷が癒え、目も見えるようになったジョゼフは、ハンナの忘れ物のかばんを渡される。そこには、彼女が受けていたカウンセラーからの手紙が入っていた。
そこを訪れ、彼女と生涯を共にしたいと告げるジョゼフに、カウンセラーの女性は「それはロマンティックね」と冷ややかに告げる。

「ここには、彼女の全てがある。どうして記録に残したかわかる? 過去の虐殺ももう誰も覚えていない。十年後誰も。覚えているのは生き残った人たちだけ。生き残ってしまったことを恥じている、何も語らない人々だけ。そんな過去を、貴方は彼女の許可なしに見ることができるの?」

ジョゼフは、ハンナの元を尋ねます。
一緒に暮らそう、というジョゼフに、ハンナは答えます。
「いつか、それは今日ではないけれど。もしも一緒に暮らしたら、それは明日ではないけれど、でも、突然私は泣き出すだろう。そして、周りは涙の海になる。二人は溺れ死ぬだけよ」
だから、一緒には行けないというハンナに、
「泳ぎの練習をするよ」
とジョゼフは答えるのでした。


物語はここで終わります。最初と最後に、この世にいるのかいないのか、それは彼女の子供の頃なのか、亡くなった親友のことなのか、少女の声のモノローグが入るのですが、それはあまり語るべきことではないように思いました。
結局、彼女は救われないのです。ジョゼフと結婚し、子供も授かったけれど、どうしても忘れられないし、一生ついて回る悲劇。
戦争は、よくないのです。
誰が何のために始めようが、どんな利益につながろうが、よくない。
彼女は、暴力を受け、それは誰にも想像がつかないほどに辛い出来事であり、ジョゼフにも決して救えない。
ハッピーエンドなのかもしれませんが、やはりこれは、ハッピーではないでしょう。戦争が、ほんのわずかだけ関わったとしたら、その物語にハッピーはありえないのです。

悲惨、というよりは、生々しく「救われない」出来事でした。


主役ジョゼフを演じるのは、ティム・ロビンス。ベッドで寝たきりのときは、顔がむくみ(そう見える)冴えない感じなのですが、治ったときのハンサムぶりっぷりに倒れました。
ハンナとのキスシーンに、ずいぶん身長差があるなあと思ったんですが、身長195センチってマジですか! デカイのに童顔な男もかっこいいですねえ。『ショーシャンクの空に』のときと印象がだいぶ違いますが、たぶん、知的印象が残っていたのではないかと。

ハンナ役のサラ・ポーリーは、髪の毛のぺたっとした印象が凄く、きれいなのにかまわない美人らしくて良かったです。

個人的にお気に入りなのは、油田の責任者である初老の男性。
結局、事故は起こったけれど、人が一人死んだのは、自殺であったと。ジョゼフはそれを助けるために、炎に巻かれたのだと。
「だが、それは誰も言わないだろう。死んだ奴には女房も子供もいる。自殺だったことを伝えても、誰も何も救われない。事故にしておけば、会社から金も出る」
「貴方はこれからどうするの?」
「別にどうもしない。辞令がおりるまではここにいるさ」
陸に上がると頭痛がする、という偏屈だけど骨太で穏やかな男はかっこよかったです。

私は、戦争物というものを人にお勧めすることはなく、話として評価がしづらいので、ちょっと感想が難しい映画でした。
PR
カレンダー
12 2025/01 02
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
ツイッター
ブログ内検索
メモ

公式サイト11月10日発売予定








ファンタスティックMr.FOX
アリス・クリードの失踪
4デイズ


美術系
・氷見晃堂(石川県立美術館)
・佐々木象堂(佐渡歴史伝説館)
Powered by ニンジャブログ  Designed by ゆきぱんだ
Copyright (c) 雑記 All Rights Reserved
忍者ブログ / [PR]