『愛されるために、ここにいる』
前半途中で寝ました。
開始五分で重苦しい雰囲気満載です。息を切らせながら、髪もうすくなった冴えない男が、階段を必死に上り、裁判所方の通知を読む。事務所に帰ればぎこちなく息子と対面。結局会話ははずまず、仕事に戻る。
いや、もう、さすがフランス映画………。(だからあまり見ない)
老いらくの恋、と呼ぶにはまだ若い、五十歳の中年男性と、結婚を間近に控えた女性との、進みようがない関係という感じです。
この映画、タンゴ教室で出会い、タンゴを踊るシーンが延々出てくるので、その場面でうっかり寝ました。
これはあれでしょうか、当人たちは盛り上がっているのかもしれないけれど傍で見ている分には別に面白くないという恋愛の典型的な姿なんでしょうか。
それならそれで、非常にリアリティがあると思いましたが、映画としてはどうなんでしょうね。
映像としてはきれいです。はじめぎこちなかったダンスも、互いの気持ちを知り合うにつれて、いっそう親密になっていく。
明らかに、最初のタンゴと、最後のタンゴでは、密度の濃さが違います。
この映画、タンゴシーン以外はすべてBGMが流れないので、タンゴシーンになると急に抑揚がつく感じです。物語としては、別にタンゴを「踊っているだけ」なので、進むわけではないんですが。
しかし、女というのはしたたかですね。
中年のおっさんである、ジャン・クロードは相手が婚約者がいるということを知らず、真摯に相手と付き合おうとするのですが、結局それはバレてしまいます。
そして、女は「説明しようと思って」と、ジャンの仕事場まで来るわけですよ。凄い話だ。
結果出る言葉が「言おうと思ったんだけど、貴方との関係が壊れてしまいそうで言えなかった」
「勘違いさせたのならごめんなさい」
「結婚前はよくある話なのよ。わかる?」
「貴方を弄ぶつもりはなかったけれど、傷ついてしまったのなら私も辛い」
ですからね。太い、太すぎる。
それは彼女の本心じゃないのよ、ということがこちらがわかっていたとしても、いないとしても、そういう言い訳ができる、という時点でやはり男と女は違いますね。
男にとっては、それが本心であろうがなかろうが、あまり関係なさそうですし。
結局彼女の気持ちには暗雲がたれこめて、式が上手くいくのかいかないのか微妙な感じなのですが(そこは描かれない)、最終的にジャンと彼女が上手くいくとは、到底思えないので、彼女が婚約を破棄しようが、ジャンの気持ちそのものは、一度離れてしまった以上どうにもならないものなのだと思います。
私は、基本的に子供に素直になれなくて、感謝の言葉一つ言わず、悪態ばかりつく、素直になれない父親が、死んだ後息子の優勝カップを(捨てたと言っている)とっておいた、というような愛情の見せ方や、そういう親像が嫌いです。
言葉は言わなければ伝わらないし、言ってそれがどれだけ相手を傷つけるか、いい大人である以上わかっていて当然の上で、いかに愛情があろうがなかろうが、陰で息子を思っていようがいまいが、全く無視して、こんなに息子思いだったんです、という人間は嫌いです。
こういう、親の愛情の見せ方ははっきりいって、性に合わないので、主人公と父親との関係性には一切感情移入できませんでした。
隠れてこっそりカップを取っておいて、自分の死後でも、「いい父親だったんだ」と思ってでももらいたいのか。なんて傲慢なんだ。そんなに愛しているのなら(私はこれが愛だとは認めませんが)何故もっとやさしくできないのだ。
主人公はその点、はっきりと自分の事務所に勤める息子に「お前は俺のように人生を棒に振るな」とその場から出て行くように進める気骨があるだけ、自身の父親よりはマシだと思います。
この作品はツタヤディスカスでレンタルしたんですが、そこのレビューを読んで、原題だと「愛されるためにここにいるんじゃない」んだそうです。
真逆じゃねえか!
これ、意味が全く違ってきてしまうんですが。
冴えない中年男が、愛を見つけ、その上で彼女に対して、自分の生き方に対して「俺は、愛されるためにここにいるんじゃない」と虚勢でも訴えているのであれば、それは、男にとって意味のある言葉ですが、結婚間近の女に遊ばれて「愛されるためにここにいるんだ」では、話の本題全く違ってきますが………。
ただ、他の方のレビューでも「これはあえて逆の意味で、だからこそ男は、女の素性を知った上でも、愛されるためにここにいる(戻ってきた)」のだと捕らえるのではないか、というコメントもあり、それもなるほど、と思いました。
色々なとらえ方をしていい映画なのでしょうね。
個人的に一番感銘を受けたのは、犬づれの中年秘書が、ジャンに向かって「あれは、彼女の本心ではなかったと思います。私も、昔同じことがありました。そして、こう言ってくれる人がいたなら、今頃犬と二人暮らしではなかったでしょう」と静かに言った場面でした。
ここは、ぐっときた。
タンゴはジャンと女が踊るシーンで主に使われますが、実際の舞台シーンもあり、そこでのダンサーはエロくてよかったです。これぞタンゴ、っていう感じで。
前半途中で寝ました。
開始五分で重苦しい雰囲気満載です。息を切らせながら、髪もうすくなった冴えない男が、階段を必死に上り、裁判所方の通知を読む。事務所に帰ればぎこちなく息子と対面。結局会話ははずまず、仕事に戻る。
いや、もう、さすがフランス映画………。(だからあまり見ない)
老いらくの恋、と呼ぶにはまだ若い、五十歳の中年男性と、結婚を間近に控えた女性との、進みようがない関係という感じです。
この映画、タンゴ教室で出会い、タンゴを踊るシーンが延々出てくるので、その場面でうっかり寝ました。
これはあれでしょうか、当人たちは盛り上がっているのかもしれないけれど傍で見ている分には別に面白くないという恋愛の典型的な姿なんでしょうか。
それならそれで、非常にリアリティがあると思いましたが、映画としてはどうなんでしょうね。
映像としてはきれいです。はじめぎこちなかったダンスも、互いの気持ちを知り合うにつれて、いっそう親密になっていく。
明らかに、最初のタンゴと、最後のタンゴでは、密度の濃さが違います。
この映画、タンゴシーン以外はすべてBGMが流れないので、タンゴシーンになると急に抑揚がつく感じです。物語としては、別にタンゴを「踊っているだけ」なので、進むわけではないんですが。
しかし、女というのはしたたかですね。
中年のおっさんである、ジャン・クロードは相手が婚約者がいるということを知らず、真摯に相手と付き合おうとするのですが、結局それはバレてしまいます。
そして、女は「説明しようと思って」と、ジャンの仕事場まで来るわけですよ。凄い話だ。
結果出る言葉が「言おうと思ったんだけど、貴方との関係が壊れてしまいそうで言えなかった」
「勘違いさせたのならごめんなさい」
「結婚前はよくある話なのよ。わかる?」
「貴方を弄ぶつもりはなかったけれど、傷ついてしまったのなら私も辛い」
ですからね。太い、太すぎる。
それは彼女の本心じゃないのよ、ということがこちらがわかっていたとしても、いないとしても、そういう言い訳ができる、という時点でやはり男と女は違いますね。
男にとっては、それが本心であろうがなかろうが、あまり関係なさそうですし。
結局彼女の気持ちには暗雲がたれこめて、式が上手くいくのかいかないのか微妙な感じなのですが(そこは描かれない)、最終的にジャンと彼女が上手くいくとは、到底思えないので、彼女が婚約を破棄しようが、ジャンの気持ちそのものは、一度離れてしまった以上どうにもならないものなのだと思います。
私は、基本的に子供に素直になれなくて、感謝の言葉一つ言わず、悪態ばかりつく、素直になれない父親が、死んだ後息子の優勝カップを(捨てたと言っている)とっておいた、というような愛情の見せ方や、そういう親像が嫌いです。
言葉は言わなければ伝わらないし、言ってそれがどれだけ相手を傷つけるか、いい大人である以上わかっていて当然の上で、いかに愛情があろうがなかろうが、陰で息子を思っていようがいまいが、全く無視して、こんなに息子思いだったんです、という人間は嫌いです。
こういう、親の愛情の見せ方ははっきりいって、性に合わないので、主人公と父親との関係性には一切感情移入できませんでした。
隠れてこっそりカップを取っておいて、自分の死後でも、「いい父親だったんだ」と思ってでももらいたいのか。なんて傲慢なんだ。そんなに愛しているのなら(私はこれが愛だとは認めませんが)何故もっとやさしくできないのだ。
主人公はその点、はっきりと自分の事務所に勤める息子に「お前は俺のように人生を棒に振るな」とその場から出て行くように進める気骨があるだけ、自身の父親よりはマシだと思います。
この作品はツタヤディスカスでレンタルしたんですが、そこのレビューを読んで、原題だと「愛されるためにここにいるんじゃない」んだそうです。
真逆じゃねえか!
これ、意味が全く違ってきてしまうんですが。
冴えない中年男が、愛を見つけ、その上で彼女に対して、自分の生き方に対して「俺は、愛されるためにここにいるんじゃない」と虚勢でも訴えているのであれば、それは、男にとって意味のある言葉ですが、結婚間近の女に遊ばれて「愛されるためにここにいるんだ」では、話の本題全く違ってきますが………。
ただ、他の方のレビューでも「これはあえて逆の意味で、だからこそ男は、女の素性を知った上でも、愛されるためにここにいる(戻ってきた)」のだと捕らえるのではないか、というコメントもあり、それもなるほど、と思いました。
色々なとらえ方をしていい映画なのでしょうね。
個人的に一番感銘を受けたのは、犬づれの中年秘書が、ジャンに向かって「あれは、彼女の本心ではなかったと思います。私も、昔同じことがありました。そして、こう言ってくれる人がいたなら、今頃犬と二人暮らしではなかったでしょう」と静かに言った場面でした。
ここは、ぐっときた。
タンゴはジャンと女が踊るシーンで主に使われますが、実際の舞台シーンもあり、そこでのダンサーはエロくてよかったです。これぞタンゴ、っていう感じで。
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