先日、夜勤入りのために昼頃に起きました。
私は1Kという典型的ワンルームマンションに住んでいるので、部屋の中は基本的に家具で埋まっています。
その中を歩いていたところ、ボギャ! と唐突に衝撃が。
「!?」
ベッドの角に左足の小指をぶつけました。
あまりの痛みに悶絶しつつも、誰に腹立たしさをぶつけるわけにもいかず、誰の助けがあるわけでもないために、一人痛みを堪えていたところ、ちっとも痛みがひきません。
おかしいなあ、と思いながら、靴下の上から保冷材をあてながら、夜勤に出発しました。
靴を履くのも痛いので、これはヤバいのかなあと思いはしたのですが、外見はあまり変化がなかったので、夜勤出勤後も、片足を引きずりながら、おかしな歩き方で勤務をこなします。
「どうしたのその歩き方!?」
と、すれ違うたびに聞かれるのはまだいいのですが、
「いつも歩くのが速い井原さんが、ゆっくり歩いているから何かあるんだなと思った」
という感想はどうかと思いました。
以前も同じようなこと言われた気がする。
小指が当たらないように、風呂用サンダルをはいてみたりしたのですが、結局、何処かにあたるもんはあたるので、早々にスニーカー(勤務用靴)に履き替えてしまいました。
大体私は、つっかけるタイプの靴は苦手なのです。サンダルもストラップがついていないとはけませんし、ホテルなどでスリッパでも履いた日には、持ち主の意思に反してスリッパがあらぬ方向に脱げるなど日常茶飯事なので、余計に左足が痛くなるし、かばう右足や腰もおかしくなるので、なるべくゆっくり歩きつつ業務は進みます。
相方「どれだけ凄い勢いでぶつけたんですか」
私「いや、私基本的に家の中でも、物凄い勢いで大体歩いてるんだよ。歩いているというか、動作が激しいというか」
相方「どれだけ生き急いでるんですか」
いや、そんなつもりでは。
夜勤開始後、五時間ほど経ったでしょうか、看護師さんが、
「宿直の先生に診てもらえ」
というので、靴下を脱いでみたところ、あれ、青い。
ひええ、と思いつつ先生に診てもらい、とりあえずシップと痛み止めのロキソニンを処方してもらいました。
「でも、歩かなきゃ痛くないんですよ。だから痛み止めは飲まなくても」
「あんたこれから先夜勤どれだけ長いと思ってんの。飲みなさい」
看護師さんの命令に従って、シップを貼って痛み止めを飲んで、それから二時間後くらいに、ちょっとした休憩がありました。
歩いたり、こすれたりすれば痛いですが、我慢できないことはありません。
どれどれとシップをはがしてみると、でけえ!
腫れた! 青い! 赤い! 何だコレ!
まるでサツマイモです。
そうでなかったらアメフラシです。
さすがにクラっときたのですが、仕事をしないわけにもいかないので、そのまま仕事を続けます。
そして、夜中の二時に仮眠に入り、四時に起きてみると、足が痛くて歩けません。
「え、ちょ、え、い、イテエ! イテ、イテテ」
それまで、
「ロキソニンなんて効いてるのか効いてないのか、わかんねえよな」
と思っていたのですが、そのありがたさが身にしみました。
速攻でロキソニンを飲み下し、身体を傾けつつ、蟹歩きのように牛歩で歩きながら、おむつ交換。
一時間後、おむつ交換が終わった頃には、薬が効いてきて、大分楽になりました。もう、二度とお前の効果を疑ったりしない………!
私「ほらほら、見て見て」
相方「うわー。腫れてるじゃないですか」
私「あー今日夜勤明けで掃除しようと思ってたのに」
相方「止めてください。大体一人暮らしでお客さん来ないなら、別にちょっとくらい汚れてたって構わないでしょう」
そりゃ構いませんが、客来なくて掃除しなくていいのなら、私の家は半永久的に掃除ができないよ。
17時間の夜勤が終わり、
日勤で出勤してきた人たちに、次々と質問攻めに合います。
面倒くさいので、靴を脱いで患部を見せると、
「ギャアー!」
と、大体ドン引き。
「折れてるの!?」
いや、それはこれから調べないとわかりません。
「どうせ足の小指の骨折なんて、固定もできないから、このまま整形外科受診しないで帰ってもいいですか」
と看護師さんに聞いたところ、
「駄目」
とすげなく返答されたので、渋々受診します。別に医者が嫌いとかそんなことではなく、夜勤明けでぼーっと待たされるのが嫌なのです。
整形外科の先生の前で、靴下を脱いで足を見せると、
「ああ、これはヤバイ状態になってるね」
との返事が。
ヤバイですか先生! でも私既にこの状態で働いてきたんですけど!
いつぶつけたのかとか、ぶつかったとき、小指はどんな感じでぶつかったのかとか聞かれたんですが、どんな感じなんて、その瞬間に把握できる人間がいるんですか、先生。
その後さっくりレントゲンになり、足の真上と、横から写真を撮ってもらい(自分で足の指を押さえさせられる。薬が効いているので痛くはないが、身体がかたいので、不自然な体勢そのものが辛い)、また診察してもらったところ、真上からの写真ではなんともないけど、横からの写真では、真っ直ぐな線が入っていて、それがひびなんだとか。別に骨がずれているわけではないので、三週間くらいで治るでしょう、とのことでした。
痛みはひくかもしれないけれど、三週間はテーピングを外さないこと。テーピングは薬指を小指の添え木がわりにして、テープで巻くこと。シップは意味がないので、やらなくていいとのこと(筋肉や、筋などには効果があるけれど、小指の先のような骨折には意味がないとのこと)、一週間したら念のためまた受診してください、などの説明を受けました。
「小指に体重をかけないようにして歩く分には、全く構わないので」
先生、私夜勤中に色々試してみましたが、小指に体重をかけないで歩くのは不可能です。
外来で診察を待っている間にも、通る職員職員に、「どうしたのかなにがあったのだ」と聞かれまくって、そのつど、「左足の小指にひびが入りました」と冷静に答え、勤めているフロアに上がってみれば、既にその情報が広まっていました。
どんだけザルなんだ。
師長さんに、「大丈夫なのか、仕事はできるのか」と聞かれたので、「できます」と答えて帰宅しました。実際動かさなければ痛くも何ともないのです。今のところ(薬の力だろ)。
実際、無理を言えば休めたのかもしれませんが、こんなつまらない理由で、貴重な有休なんか使いたくない。
帰宅し、せっかく痛み止めが効いているのでその間に、と、家の掃除をして休みました。(結局してる)
帰宅してまじまじ見てみましたが、一番酷いときよりは、腫れはひいたような気がします。腫れはね。
しかし、小さな小指一本使えなくなるだけで、生活にこれだけ影響があるとは思いませんでした。
皆様、本当に危険はどこに潜んでいるかわかりません。ご注意を(特にまぬけな理由だと自分が悲しくなる)。
私は1Kという典型的ワンルームマンションに住んでいるので、部屋の中は基本的に家具で埋まっています。
その中を歩いていたところ、ボギャ! と唐突に衝撃が。
「!?」
ベッドの角に左足の小指をぶつけました。
あまりの痛みに悶絶しつつも、誰に腹立たしさをぶつけるわけにもいかず、誰の助けがあるわけでもないために、一人痛みを堪えていたところ、ちっとも痛みがひきません。
おかしいなあ、と思いながら、靴下の上から保冷材をあてながら、夜勤に出発しました。
靴を履くのも痛いので、これはヤバいのかなあと思いはしたのですが、外見はあまり変化がなかったので、夜勤出勤後も、片足を引きずりながら、おかしな歩き方で勤務をこなします。
「どうしたのその歩き方!?」
と、すれ違うたびに聞かれるのはまだいいのですが、
「いつも歩くのが速い井原さんが、ゆっくり歩いているから何かあるんだなと思った」
という感想はどうかと思いました。
以前も同じようなこと言われた気がする。
小指が当たらないように、風呂用サンダルをはいてみたりしたのですが、結局、何処かにあたるもんはあたるので、早々にスニーカー(勤務用靴)に履き替えてしまいました。
大体私は、つっかけるタイプの靴は苦手なのです。サンダルもストラップがついていないとはけませんし、ホテルなどでスリッパでも履いた日には、持ち主の意思に反してスリッパがあらぬ方向に脱げるなど日常茶飯事なので、余計に左足が痛くなるし、かばう右足や腰もおかしくなるので、なるべくゆっくり歩きつつ業務は進みます。
相方「どれだけ凄い勢いでぶつけたんですか」
私「いや、私基本的に家の中でも、物凄い勢いで大体歩いてるんだよ。歩いているというか、動作が激しいというか」
相方「どれだけ生き急いでるんですか」
いや、そんなつもりでは。
夜勤開始後、五時間ほど経ったでしょうか、看護師さんが、
「宿直の先生に診てもらえ」
というので、靴下を脱いでみたところ、あれ、青い。
ひええ、と思いつつ先生に診てもらい、とりあえずシップと痛み止めのロキソニンを処方してもらいました。
「でも、歩かなきゃ痛くないんですよ。だから痛み止めは飲まなくても」
「あんたこれから先夜勤どれだけ長いと思ってんの。飲みなさい」
看護師さんの命令に従って、シップを貼って痛み止めを飲んで、それから二時間後くらいに、ちょっとした休憩がありました。
歩いたり、こすれたりすれば痛いですが、我慢できないことはありません。
どれどれとシップをはがしてみると、でけえ!
腫れた! 青い! 赤い! 何だコレ!
まるでサツマイモです。
そうでなかったらアメフラシです。
さすがにクラっときたのですが、仕事をしないわけにもいかないので、そのまま仕事を続けます。
そして、夜中の二時に仮眠に入り、四時に起きてみると、足が痛くて歩けません。
「え、ちょ、え、い、イテエ! イテ、イテテ」
それまで、
「ロキソニンなんて効いてるのか効いてないのか、わかんねえよな」
と思っていたのですが、そのありがたさが身にしみました。
速攻でロキソニンを飲み下し、身体を傾けつつ、蟹歩きのように牛歩で歩きながら、おむつ交換。
一時間後、おむつ交換が終わった頃には、薬が効いてきて、大分楽になりました。もう、二度とお前の効果を疑ったりしない………!
私「ほらほら、見て見て」
相方「うわー。腫れてるじゃないですか」
私「あー今日夜勤明けで掃除しようと思ってたのに」
相方「止めてください。大体一人暮らしでお客さん来ないなら、別にちょっとくらい汚れてたって構わないでしょう」
そりゃ構いませんが、客来なくて掃除しなくていいのなら、私の家は半永久的に掃除ができないよ。
17時間の夜勤が終わり、
日勤で出勤してきた人たちに、次々と質問攻めに合います。
面倒くさいので、靴を脱いで患部を見せると、
「ギャアー!」
と、大体ドン引き。
「折れてるの!?」
いや、それはこれから調べないとわかりません。
「どうせ足の小指の骨折なんて、固定もできないから、このまま整形外科受診しないで帰ってもいいですか」
と看護師さんに聞いたところ、
「駄目」
とすげなく返答されたので、渋々受診します。別に医者が嫌いとかそんなことではなく、夜勤明けでぼーっと待たされるのが嫌なのです。
整形外科の先生の前で、靴下を脱いで足を見せると、
「ああ、これはヤバイ状態になってるね」
との返事が。
ヤバイですか先生! でも私既にこの状態で働いてきたんですけど!
いつぶつけたのかとか、ぶつかったとき、小指はどんな感じでぶつかったのかとか聞かれたんですが、どんな感じなんて、その瞬間に把握できる人間がいるんですか、先生。
その後さっくりレントゲンになり、足の真上と、横から写真を撮ってもらい(自分で足の指を押さえさせられる。薬が効いているので痛くはないが、身体がかたいので、不自然な体勢そのものが辛い)、また診察してもらったところ、真上からの写真ではなんともないけど、横からの写真では、真っ直ぐな線が入っていて、それがひびなんだとか。別に骨がずれているわけではないので、三週間くらいで治るでしょう、とのことでした。
痛みはひくかもしれないけれど、三週間はテーピングを外さないこと。テーピングは薬指を小指の添え木がわりにして、テープで巻くこと。シップは意味がないので、やらなくていいとのこと(筋肉や、筋などには効果があるけれど、小指の先のような骨折には意味がないとのこと)、一週間したら念のためまた受診してください、などの説明を受けました。
「小指に体重をかけないようにして歩く分には、全く構わないので」
先生、私夜勤中に色々試してみましたが、小指に体重をかけないで歩くのは不可能です。
外来で診察を待っている間にも、通る職員職員に、「どうしたのかなにがあったのだ」と聞かれまくって、そのつど、「左足の小指にひびが入りました」と冷静に答え、勤めているフロアに上がってみれば、既にその情報が広まっていました。
どんだけザルなんだ。
師長さんに、「大丈夫なのか、仕事はできるのか」と聞かれたので、「できます」と答えて帰宅しました。実際動かさなければ痛くも何ともないのです。今のところ(薬の力だろ)。
実際、無理を言えば休めたのかもしれませんが、こんなつまらない理由で、貴重な有休なんか使いたくない。
帰宅し、せっかく痛み止めが効いているのでその間に、と、家の掃除をして休みました。(結局してる)
帰宅してまじまじ見てみましたが、一番酷いときよりは、腫れはひいたような気がします。腫れはね。
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皆様、本当に危険はどこに潜んでいるかわかりません。ご注意を(特にまぬけな理由だと自分が悲しくなる)。
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彼氏にしたい少女漫画に登場するヒーローランキング |
1 | 花沢類 |
2 | 千秋真一 |
3 | 真壁俊 |
4 | 伊集院忍 |
5 | 道明寺司 |
6 | 松竹梅魅録 |
7 | 中津秀一 |
8 | アンドレ |
9 | 佐野泉 |
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相変わらずこのシリーズのランキングはカオスです、
以前も、萌える眼鏡男子だとかなんとかいうランキングを紹介したような気がするんですが、そのときも、ムスカ大佐とメガネ君とアバン先生が混在するという、正体不明の物体Xでしたが、今回もまた凄い。
上位二人と、ドラマ化が決まった作品のキャラクターはいいですよ。わかりますよ知名度としても。ですが、それに食い込む三位の真壁俊と伊集院忍って、あんたどんだけ昔の漫画だと思ってんですか!
はいからさんなんて、私リアルタイムで読めてないですよ。
ときめきトゥナイトだってかなりギリですよ。
それがここまで上位に食い込んでくるって、聞く人選の年齢層どんだけ高いんですか。
アンドレもそうですが、これは、あの漫画の立ち位置の別格さを考えるとそうおかしくもないかな、と。
こう考えると、10位以内に入っているキャラクターで一番おかしいのは、ドラマ化も随分前でかつ恋愛漫画ですらないハムテルということになるのでしょうか。いや、私はハムテル好きですが、漫画も持ってますが、あいつちょっと違うだろ。
そして、三十位までのランキングを見ると、またもや懐かしさのあまり倒れそうなキャラクターが山ほど。
『瞬きもせず』とか(表紙が芸術だった)『生徒諸君!』とか、おまけに、『星の瞳のシルエット』とか『ハンサムな彼女』とか何事!?
信じられません。ちなみに私は『星の瞳のシルエット』では眼鏡の女の子とちょっとたらしな男の子のカップリングイチオシでした。日野クンはお日様みたいだしな。
でもここまでりぼん作品が入るなら、あーみん作品も入っていていいはずだと思った私は異端なのでしょうか。
その男は、強風の中立っていた。
二十歳過ぎくらいだろうか。
少しきつめの印象が強いが、目元も涼しく、眉も凛々しい美形である。
ムートンのハーフコートを羽織り、ジーンズというラフなスタイルだが、わかる人間が見れば、ブランド物のそれだということがわかるだろう。
黒のショルダーバッグを下げ、いかにも待ち合わせというように立っている姿は、恵比寿の駅前によく映えた。
泡坂「ただ、そこに行き着くまでがよくなかった。西口と東口を間違えるし、スカイウォークは所在なさげに延々立ち通しだし。いやあ、初めて来た駅で勝手がわからずに不安だ、という雰囲気があまりに立ち上りすぎて、思わず他人のふりをしてしまいましたよ」
澤田「お前、来てたんならもっと早くに声をかけろ!」
「すいません。面白かったんでつい」
「面白がるな!」
「今日は凄く風が強くて、吹き飛ばされそうだったんで、駅の外にあまり出たくなかったんですよね」
「泡坂は身体も小さいし、体重も軽いから、本当に風にあおられて倒れないように気をつけないとな」
「それは澤田さんも同じでしょう。どんだけ痩せてんですか、その細い腰」
「お前、俺の腰なんて見たことないだろう!」
「え、ないとか思ってるんですか?」
「え」
「あれだけ澤田さん家に入り浸っている私が、澤田さんのボディラインを知らないとでも思ってるんですか」
「お、お前」
「言っときますが、私は澤田さんの寝姿や、寝言ですら知ってるんですよ」
「………………………」
池波「何お前ら絶句し合ってるんだ」
「あ、こんにちは、池波さん。池波さんが一番最後なんて珍しいですね」
「バイト先からそのまま来たからな。ちょっと計算が狂った。待たせたか」
「いいえ全然。時間通りですよ」
「そうか。で、何で澤田は固まってるんだ」
「さあ。思春期の考えることはよくわかりません」
「誰が思春期だ!」
「お前だろ。じゃ、全員そろったから行くか」
「そうですね。私来たことないんですけど、ウェスティンホテルは………」
「こっちだ」
「………………」
「お前、場所知ってんの?」
「? ああ。行ったことがあるから」
「行ったことがあるなら、何故あそこまで駅内で不審な行動に………?」
「ホテルに行ったことはあるが、駅内はよく覚えてない」
「何でそこまで駅が鬼門かねえ、お前は」
「いえ別に知ってるんならそれでいいんですけどね。看板出てますし。ここから近いんですか?」
「すぐそこだ」
「ホテルに何しに行ったんだ?」
「池波さん、そりゃ聞くのはヤボってもんですよ。ホテルですもん」
「どういう意味だ! 俺の実家から近いから、家族との待ち合わせに使ったことがあるだけだ」
「待ち合わせに………ホテル………? ホテルで待ち合わせる家族………?」
「正確には、ホテルのロビーで待ち合わせただけで、階上には行ってな………」
「………………」
「泡坂?」
「………………………………」
「おい池波、泡坂どうしたんだ? 一人でずんずん先を歩いて行ってしまったが」
「お前との生活格差に憤ってんだろ」
「?」
「まあ、いいや。行こうぜ。着く頃には泡坂もその話題に飽きてる」
『ウェスティンホテル』到着。
「着きました。ここですね」
「ああ」
「結構、女の人たちいるなあ」
「女の人たちというよりは、オバサンたちですが。これってやっぱりあれですかね。目的は同じでしょうかね」
「そうだろうな。こんな平日の真昼間にホテルに用があるといったら、それしかないだろ」
「女性は本当に好きだな。食べ放題」
「なんですか、澤田さん。より格調高く、ランチビュッフェと言ってください」
「ランチビッフェか」
「………なんですか、わざわざいい発音で言い直して」
「そんなつもりはない」
「お前らいい加減にしろよ」
「さあ、会場に入る前に、トイレもすませましたし、食べるぞ!」
「………………………」
「何だお前黙って」
「いや………その………」
「なんだよ」
「どうしてああも、女性はすぐトイレに行くのかと思って」
「説明してやろうか」
「やめろ。お前がまともな顔して言うと、ろくなことがない」
「何ぶつぶつ言い合ってるんですか。置いてきますよ」
「予約しといてよかったな。前の予約なしの人たちは断られてたみたいだし」
「人気あるんですねえ。まあそれだけに、結構な値段を取るのかと思うと、もう元を取らずにはいられないんですが!」
「みなぎってるな」
「まあ値段も4500円するしなあ。普通のランチじゃ考えられない値段だろ」
「へー、テーブルもきれいにセッティングされてて、おしゃれですね。なんか、ホテルって感じがします。勝手に取って来いって雰囲気じゃなくて、あくまで給仕されてる感が強いといいましょうか」
「なんだろう、このパン」
「ぱっと見、黒パンみたいだけどな」
「さ、14時半までのガチンコ勝負ですからね! とっとと行きましょう」
「ならお前ら先に行って来いよ」
「池波は?」
「ここで荷物番してる」
「何つまんないこと言ってんですか! 池波さんも来るんですよ! いいから来るの!」
「池波」
「わかった。わかったからそんな目で見るな」
「美味しそうなのいっぱいありましたね。しかし、池波さんの皿の上に乗ってる料理の少なさは一体………」
「いや、別にこれ遠慮じゃなくて、デザートに意欲残しておきたいんだよな。今回はせっかくオーストリアフェアだから、アプフェルシュトゥルーデルとか食べたいし」
「なんです? それ」
「わかりやすく言えば、リンゴのパイかな。あ、澤田帰ってきた」
「お帰りなさい。これまた、野菜ばっかりの皿ですねえ。メインはどうしたんです、メインは!」
「お前は肉ばっかりだな。泡坂」
「食べ放題に来て、野菜食べる馬鹿がどこにいるんですか!? 基本メインからですよ! 野菜でおなかが一杯になったら、何にもならない!」
「俺はただ、前菜の列から順に回っていたら、皿が埋まっただけだ! 二順目は肉までたどり着くと思う」
「私なんか、列の流れを無視して肉から特攻してしまいましたよ。あれ、なんかおかしいなと思ったときは既に、皿の上が取り返しのつかないことになってました」
「お前それただのうっかりだろ」
「いいじゃねえの。ほら、まだ何回ももらいに行くんだろ。食おうぜ」
「そうですね。いただきまーす」
「いただきます」
「どうだ? 肉」
「そうですね、このちっちゃいカツみたいなの、地味に美味しいです」
「ああ、ウィンナーシュニッツェルな。レモンかけて食うと美味いんだ」
「色々な肉の種類がありましたけど、どれも煮込み系が多かったですねえ。豚も鴨もありましたけど、割合味が似てます」
「基本的に煮込み料理が多い国だからな。材料は違っても、基本的に使う調味料は同じだし」
「池波さんが食べてるのなんですか? 赤いシチューみたいなの」
「これか? これはグラッシュ。これも煮込み料理だな。牛の。食ってみるか?」
「じゃ、一口だけいただきます」
「どうだ?」
「………なにやら………面妖な味が………」
「ちょっと独特の味するよな。すっぱい感じの。お酢入ってるんだろうなあ。ザワークラフトみたいな感じだな」
「そういえば、この黒パンみたいなのもすっぱい味がしますしね。でも、我々が知ってるすっぱさと、ちょっと違う感じがします」
「まあ、ザワークラフトなんかはワインビネガーだし。これも基本的に日本の酢とは味が違うから」
「ここの食べ放題って、炭水化物全然ないんですよねえ。パスタとライスって一種類しかない。炭水化物フリークとしては、もっといっぱい食べたかったなあ」
「基本は、このパンをメインにしておかずを食べる、っていうコンセプトなんだろうな。俺らは炭水化物=おかずみたいな食生活送ることも多いから」
「そうですねえ。あ、澤田さんどれか美味しいのありました?」
「エビのカクテルが美味しかった」
「カクテル?」
「チーズクリームみたいなものの上に、エビが乗ってる前菜」
「そりゃまた随分おしゃれな食べ物ですね」
「その隣に、牛タンのカクテルもあったんだが」
「へえ、牛タン!」
「泡坂、牛タン好きだよな」
「やめておいたほうがいい」
「え? 何でです?」
「生臭い」
「………あの食べ物の好き嫌いをあまり表さない澤田さんが、ああもはっきり言うのであれば、やめておいたほうがいいんでしょうね………」
「そうだなあ。まあサラダは普通のサラダだったみたいだし、やっぱりメインは肉料理関係の煮込み、ってとこだな」
「………………………」
「なんだ黙って。二回目行かないのか」
「確かにまだ食べてないおかずとかあるんですけどね………」
「泡坂らしくもない。いきなりテンション落ちてるぞ」
「だって味が濃いんですよ! 凄くしょっぱいんですよ全体的に! だから凄く喉が渇いて水をがぶ飲みしちゃうし、水が減れば間髪いれずに給仕さんたちが追加してくれるしで、もう、赤ワイン系のしょっぱい味には飽きた!」
「じゃ、もう前菜のことは忘れて、デザート行けよ」
「そうします。池波さんも一緒に行きましょう」
「そうするか。澤田は? なんか取ってきてやろうか」
「まだ皿に残ってるからいい。後でまたいく」
「物凄い数ありますね、デザート」
「果物も多いし、ケーキも多いなあ。実際数としてはデザートブッフェほどはないんだろうけど、所狭しと並べられてるし、基本的に店で小売されていてもおかしくないくらい、しっかりと作られているから、凄く見栄えがする」
「ああ、池波さんが言ってたリンゴのパイ美味しいです」
「良かったな」
「ケーキもどれも美味しいです。ああ、チーズケーキ美味しいなあ」
「そうだな」
「池波さんはどれが美味しいですか?」
「そうだなあ。これもあれだな、どれもチョコ系は味が濃いなあ」
「あ、やっぱりデザートでもそう思いますか?」
「チョコレート系は特に濃厚な感じだな。果物のデザートはそうでもないけど。全体的に重い」
「まあ、現実的に重量オーバーにさせて、相手の腹を満腹に早くさせないといけないんでしょうけど。ビッフェなんて」
「ほら、ソフトクリームもこんなに濃い」
「うわーすごーい。マザー牧場のソフトクリームみたい」
「そんな感じ。で、そこに、デザートを山盛りにして澤田が帰ってきた、と」
「これまた澤田さん頑張りましたね! 全部食べられるんですか?」
「ああ」
「甘いものは別腹ってやつでしょうか」
「あいつ、満腹を感じる機能が弱いんじゃねえかな、って思うけどな」
「うるさい」
「うーんおなか一杯です。この食後の紅茶が美味しい」
「味濃いので始まって、濃いので終わったからな。俺もコーヒーが美味い」
「俺は美味かったけどな」
「あ、勿論私だって美味しかったですよ。ただ、客のいる前でシェフみたいな人が、給仕の人を結構あからさまに怒ったりしてたんで、それでちょっと萎えました」
「お前はどうしてそういう場に居合わせるんだろうな………」
「どうする? 最後にもう一回くらい行って来るか?」
「そうですねえ。口の中が甘くなったので、最後にきのこスープ飲んで終わろうかな」
「あれ、きのことベーコン入ってて、かなり濃厚だったけどなあ」
「俺も最後にサラダ取ってくるか」
「なんか、デザートの口直しにメイン、ってのも不思議な感じだな」
「食べましたねー。重くて胃もたれがします」
「お疲れさん」
「これからどうする? 帰るか」
「そうですねえ。恵比寿ってどんなところかな、って思ってたんですが、三越以外なにもないですし、見るもんなさそうですね。帰りましょうか。メインはホテルのランチだったわけですし」
「そうするか。じゃ、澤田、駅まで案内してくれ」
「え」
「どうして、駅からホテルまでは案内できて、ホテルから駅まで案内を頼まれると、一瞬でも固まるんですか………?」
二十歳過ぎくらいだろうか。
少しきつめの印象が強いが、目元も涼しく、眉も凛々しい美形である。
ムートンのハーフコートを羽織り、ジーンズというラフなスタイルだが、わかる人間が見れば、ブランド物のそれだということがわかるだろう。
黒のショルダーバッグを下げ、いかにも待ち合わせというように立っている姿は、恵比寿の駅前によく映えた。
泡坂「ただ、そこに行き着くまでがよくなかった。西口と東口を間違えるし、スカイウォークは所在なさげに延々立ち通しだし。いやあ、初めて来た駅で勝手がわからずに不安だ、という雰囲気があまりに立ち上りすぎて、思わず他人のふりをしてしまいましたよ」
澤田「お前、来てたんならもっと早くに声をかけろ!」
「すいません。面白かったんでつい」
「面白がるな!」
「今日は凄く風が強くて、吹き飛ばされそうだったんで、駅の外にあまり出たくなかったんですよね」
「泡坂は身体も小さいし、体重も軽いから、本当に風にあおられて倒れないように気をつけないとな」
「それは澤田さんも同じでしょう。どんだけ痩せてんですか、その細い腰」
「お前、俺の腰なんて見たことないだろう!」
「え、ないとか思ってるんですか?」
「え」
「あれだけ澤田さん家に入り浸っている私が、澤田さんのボディラインを知らないとでも思ってるんですか」
「お、お前」
「言っときますが、私は澤田さんの寝姿や、寝言ですら知ってるんですよ」
「………………………」
池波「何お前ら絶句し合ってるんだ」
「あ、こんにちは、池波さん。池波さんが一番最後なんて珍しいですね」
「バイト先からそのまま来たからな。ちょっと計算が狂った。待たせたか」
「いいえ全然。時間通りですよ」
「そうか。で、何で澤田は固まってるんだ」
「さあ。思春期の考えることはよくわかりません」
「誰が思春期だ!」
「お前だろ。じゃ、全員そろったから行くか」
「そうですね。私来たことないんですけど、ウェスティンホテルは………」
「こっちだ」
「………………」
「お前、場所知ってんの?」
「? ああ。行ったことがあるから」
「行ったことがあるなら、何故あそこまで駅内で不審な行動に………?」
「ホテルに行ったことはあるが、駅内はよく覚えてない」
「何でそこまで駅が鬼門かねえ、お前は」
「いえ別に知ってるんならそれでいいんですけどね。看板出てますし。ここから近いんですか?」
「すぐそこだ」
「ホテルに何しに行ったんだ?」
「池波さん、そりゃ聞くのはヤボってもんですよ。ホテルですもん」
「どういう意味だ! 俺の実家から近いから、家族との待ち合わせに使ったことがあるだけだ」
「待ち合わせに………ホテル………? ホテルで待ち合わせる家族………?」
「正確には、ホテルのロビーで待ち合わせただけで、階上には行ってな………」
「………………」
「泡坂?」
「………………………………」
「おい池波、泡坂どうしたんだ? 一人でずんずん先を歩いて行ってしまったが」
「お前との生活格差に憤ってんだろ」
「?」
「まあ、いいや。行こうぜ。着く頃には泡坂もその話題に飽きてる」
『ウェスティンホテル』到着。
「着きました。ここですね」
「ああ」
「結構、女の人たちいるなあ」
「女の人たちというよりは、オバサンたちですが。これってやっぱりあれですかね。目的は同じでしょうかね」
「そうだろうな。こんな平日の真昼間にホテルに用があるといったら、それしかないだろ」
「女性は本当に好きだな。食べ放題」
「なんですか、澤田さん。より格調高く、ランチビュッフェと言ってください」
「ランチビッフェか」
「………なんですか、わざわざいい発音で言い直して」
「そんなつもりはない」
「お前らいい加減にしろよ」
「さあ、会場に入る前に、トイレもすませましたし、食べるぞ!」
「………………………」
「何だお前黙って」
「いや………その………」
「なんだよ」
「どうしてああも、女性はすぐトイレに行くのかと思って」
「説明してやろうか」
「やめろ。お前がまともな顔して言うと、ろくなことがない」
「何ぶつぶつ言い合ってるんですか。置いてきますよ」
「予約しといてよかったな。前の予約なしの人たちは断られてたみたいだし」
「人気あるんですねえ。まあそれだけに、結構な値段を取るのかと思うと、もう元を取らずにはいられないんですが!」
「みなぎってるな」
「まあ値段も4500円するしなあ。普通のランチじゃ考えられない値段だろ」
「へー、テーブルもきれいにセッティングされてて、おしゃれですね。なんか、ホテルって感じがします。勝手に取って来いって雰囲気じゃなくて、あくまで給仕されてる感が強いといいましょうか」
「なんだろう、このパン」
「ぱっと見、黒パンみたいだけどな」
「さ、14時半までのガチンコ勝負ですからね! とっとと行きましょう」
「ならお前ら先に行って来いよ」
「池波は?」
「ここで荷物番してる」
「何つまんないこと言ってんですか! 池波さんも来るんですよ! いいから来るの!」
「池波」
「わかった。わかったからそんな目で見るな」
「美味しそうなのいっぱいありましたね。しかし、池波さんの皿の上に乗ってる料理の少なさは一体………」
「いや、別にこれ遠慮じゃなくて、デザートに意欲残しておきたいんだよな。今回はせっかくオーストリアフェアだから、アプフェルシュトゥルーデルとか食べたいし」
「なんです? それ」
「わかりやすく言えば、リンゴのパイかな。あ、澤田帰ってきた」
「お帰りなさい。これまた、野菜ばっかりの皿ですねえ。メインはどうしたんです、メインは!」
「お前は肉ばっかりだな。泡坂」
「食べ放題に来て、野菜食べる馬鹿がどこにいるんですか!? 基本メインからですよ! 野菜でおなかが一杯になったら、何にもならない!」
「俺はただ、前菜の列から順に回っていたら、皿が埋まっただけだ! 二順目は肉までたどり着くと思う」
「私なんか、列の流れを無視して肉から特攻してしまいましたよ。あれ、なんかおかしいなと思ったときは既に、皿の上が取り返しのつかないことになってました」
「お前それただのうっかりだろ」
「いいじゃねえの。ほら、まだ何回ももらいに行くんだろ。食おうぜ」
「そうですね。いただきまーす」
「いただきます」
「どうだ? 肉」
「そうですね、このちっちゃいカツみたいなの、地味に美味しいです」
「ああ、ウィンナーシュニッツェルな。レモンかけて食うと美味いんだ」
「色々な肉の種類がありましたけど、どれも煮込み系が多かったですねえ。豚も鴨もありましたけど、割合味が似てます」
「基本的に煮込み料理が多い国だからな。材料は違っても、基本的に使う調味料は同じだし」
「池波さんが食べてるのなんですか? 赤いシチューみたいなの」
「これか? これはグラッシュ。これも煮込み料理だな。牛の。食ってみるか?」
「じゃ、一口だけいただきます」
「どうだ?」
「………なにやら………面妖な味が………」
「ちょっと独特の味するよな。すっぱい感じの。お酢入ってるんだろうなあ。ザワークラフトみたいな感じだな」
「そういえば、この黒パンみたいなのもすっぱい味がしますしね。でも、我々が知ってるすっぱさと、ちょっと違う感じがします」
「まあ、ザワークラフトなんかはワインビネガーだし。これも基本的に日本の酢とは味が違うから」
「ここの食べ放題って、炭水化物全然ないんですよねえ。パスタとライスって一種類しかない。炭水化物フリークとしては、もっといっぱい食べたかったなあ」
「基本は、このパンをメインにしておかずを食べる、っていうコンセプトなんだろうな。俺らは炭水化物=おかずみたいな食生活送ることも多いから」
「そうですねえ。あ、澤田さんどれか美味しいのありました?」
「エビのカクテルが美味しかった」
「カクテル?」
「チーズクリームみたいなものの上に、エビが乗ってる前菜」
「そりゃまた随分おしゃれな食べ物ですね」
「その隣に、牛タンのカクテルもあったんだが」
「へえ、牛タン!」
「泡坂、牛タン好きだよな」
「やめておいたほうがいい」
「え? 何でです?」
「生臭い」
「………あの食べ物の好き嫌いをあまり表さない澤田さんが、ああもはっきり言うのであれば、やめておいたほうがいいんでしょうね………」
「そうだなあ。まあサラダは普通のサラダだったみたいだし、やっぱりメインは肉料理関係の煮込み、ってとこだな」
「………………………」
「なんだ黙って。二回目行かないのか」
「確かにまだ食べてないおかずとかあるんですけどね………」
「泡坂らしくもない。いきなりテンション落ちてるぞ」
「だって味が濃いんですよ! 凄くしょっぱいんですよ全体的に! だから凄く喉が渇いて水をがぶ飲みしちゃうし、水が減れば間髪いれずに給仕さんたちが追加してくれるしで、もう、赤ワイン系のしょっぱい味には飽きた!」
「じゃ、もう前菜のことは忘れて、デザート行けよ」
「そうします。池波さんも一緒に行きましょう」
「そうするか。澤田は? なんか取ってきてやろうか」
「まだ皿に残ってるからいい。後でまたいく」
「物凄い数ありますね、デザート」
「果物も多いし、ケーキも多いなあ。実際数としてはデザートブッフェほどはないんだろうけど、所狭しと並べられてるし、基本的に店で小売されていてもおかしくないくらい、しっかりと作られているから、凄く見栄えがする」
「ああ、池波さんが言ってたリンゴのパイ美味しいです」
「良かったな」
「ケーキもどれも美味しいです。ああ、チーズケーキ美味しいなあ」
「そうだな」
「池波さんはどれが美味しいですか?」
「そうだなあ。これもあれだな、どれもチョコ系は味が濃いなあ」
「あ、やっぱりデザートでもそう思いますか?」
「チョコレート系は特に濃厚な感じだな。果物のデザートはそうでもないけど。全体的に重い」
「まあ、現実的に重量オーバーにさせて、相手の腹を満腹に早くさせないといけないんでしょうけど。ビッフェなんて」
「ほら、ソフトクリームもこんなに濃い」
「うわーすごーい。マザー牧場のソフトクリームみたい」
「そんな感じ。で、そこに、デザートを山盛りにして澤田が帰ってきた、と」
「これまた澤田さん頑張りましたね! 全部食べられるんですか?」
「ああ」
「甘いものは別腹ってやつでしょうか」
「あいつ、満腹を感じる機能が弱いんじゃねえかな、って思うけどな」
「うるさい」
「うーんおなか一杯です。この食後の紅茶が美味しい」
「味濃いので始まって、濃いので終わったからな。俺もコーヒーが美味い」
「俺は美味かったけどな」
「あ、勿論私だって美味しかったですよ。ただ、客のいる前でシェフみたいな人が、給仕の人を結構あからさまに怒ったりしてたんで、それでちょっと萎えました」
「お前はどうしてそういう場に居合わせるんだろうな………」
「どうする? 最後にもう一回くらい行って来るか?」
「そうですねえ。口の中が甘くなったので、最後にきのこスープ飲んで終わろうかな」
「あれ、きのことベーコン入ってて、かなり濃厚だったけどなあ」
「俺も最後にサラダ取ってくるか」
「なんか、デザートの口直しにメイン、ってのも不思議な感じだな」
「食べましたねー。重くて胃もたれがします」
「お疲れさん」
「これからどうする? 帰るか」
「そうですねえ。恵比寿ってどんなところかな、って思ってたんですが、三越以外なにもないですし、見るもんなさそうですね。帰りましょうか。メインはホテルのランチだったわけですし」
「そうするか。じゃ、澤田、駅まで案内してくれ」
「え」
「どうして、駅からホテルまでは案内できて、ホテルから駅まで案内を頼まれると、一瞬でも固まるんですか………?」
先日職場の同僚たちと女四人で都会を歩いておりました。
すると、よくあるティッシュ配りのお兄さんがおりまして、その人が、ずい、とティッシュを差し出してきました。
「良かったら、どうぞ化粧直しにでも使ってください!」
私は基本的に、ティッシュでもチラシでも、配っている人の仕事が早く終わるようにと、何でももらう主義なんですが(チラシの意味がない)こんな渡され方をしたことがなく、ぎょっとしながらも四個のティッシュを受け取りました。
もらったはいいんですが、四個は多いので、隣を歩いていた女の子に渡そうとすると、なんとその子が憤っているじゃありませんか。
「大体、化粧直しに使ってくださいって、じゃあ今現在私の化粧が崩れてるのかって話だよ! 何あれ!」
ええー!? そんな捉え方ー!?
結局今四個のティッシュが目の前にあります。結局キャバクラのティッシュでした。
しかしなあ、採用条件が18歳から27歳位までって、私無理だろ。
「ZOO1」 乙一
「私、乙一ってあまり好きじゃないんだけど、これは面白かった」
と知り合いに手渡されました。
しかし、好きじゃない作家だが、面白かったって、他の人間に勧めるのに、最上級の文句ですね。
面白くないと思っている人すら魅了したって、凄いじゃないか。
読んでみました。1時間くらいでさらっと読める短編集です。
ジャンルとしてはホラー物になるんでしょうか。この手の話はあまり読んだことがないので、よくわからないのですが、別にそれほど怖いとか、グロいとかよくわかりませんでした。
というか、この手の「わかりやすいオチ」がない、何か作者の感性や人物の感情を察して読む物語って、私よくわからないんだなあ。
文章が特徴的でのめりこむ、とかそんな感じでもありませんし。
感想としては、こういう話もあるんだな、くらいでした。
例えばホラー物というくくりであれば、椎名誠の「雨がやんだら」のほうが怖かったなあ。あれはSFでしたっけ。
すると、よくあるティッシュ配りのお兄さんがおりまして、その人が、ずい、とティッシュを差し出してきました。
「良かったら、どうぞ化粧直しにでも使ってください!」
私は基本的に、ティッシュでもチラシでも、配っている人の仕事が早く終わるようにと、何でももらう主義なんですが(チラシの意味がない)こんな渡され方をしたことがなく、ぎょっとしながらも四個のティッシュを受け取りました。
もらったはいいんですが、四個は多いので、隣を歩いていた女の子に渡そうとすると、なんとその子が憤っているじゃありませんか。
「大体、化粧直しに使ってくださいって、じゃあ今現在私の化粧が崩れてるのかって話だよ! 何あれ!」
ええー!? そんな捉え方ー!?
結局今四個のティッシュが目の前にあります。結局キャバクラのティッシュでした。
しかしなあ、採用条件が18歳から27歳位までって、私無理だろ。
「ZOO1」 乙一
「私、乙一ってあまり好きじゃないんだけど、これは面白かった」
と知り合いに手渡されました。
しかし、好きじゃない作家だが、面白かったって、他の人間に勧めるのに、最上級の文句ですね。
面白くないと思っている人すら魅了したって、凄いじゃないか。
読んでみました。1時間くらいでさらっと読める短編集です。
ジャンルとしてはホラー物になるんでしょうか。この手の話はあまり読んだことがないので、よくわからないのですが、別にそれほど怖いとか、グロいとかよくわかりませんでした。
というか、この手の「わかりやすいオチ」がない、何か作者の感性や人物の感情を察して読む物語って、私よくわからないんだなあ。
文章が特徴的でのめりこむ、とかそんな感じでもありませんし。
感想としては、こういう話もあるんだな、くらいでした。
例えばホラー物というくくりであれば、椎名誠の「雨がやんだら」のほうが怖かったなあ。あれはSFでしたっけ。
私はやるべきことや、やると決めたことは、即断即決。仕事では押しが強い方ですし、プライベートでも行動力があると自分でも思います。
ですが一旦別にいいんだけどと思ってしまうと、非常に腰が引けるたちです。
そんな私ですが先日利用してきましたよ駅前駐輪場!(低次元)
今まで民間の駐輪場を利用していたんですが、当たり前のように長時間利用すると結構お金がかかるんですよ。
前々から公の駐輪場があるのは知ってはいたんですが、外側から見る限り常にびっちりいつも詰まってて、おまけにいつの時間も係りらしき人の姿も見えない。
この時点で「うへえ」と気後れしてしまうんですよ。
これが自転車ならここまでひくこともないんですが、私は原付乗りなので、いざというときに全く小回りが聞かないのが問題なのです。
乗られない方はわからないと思うんですが、原付は見た目より遥かに重いし、人力で動かそうものなら小回りはきかないし、想像以上に幅もとるのです。
で、もたもたしていると他の人の迷惑だしなあと、今までチキンハートで避けてきたんですが、最近遠出することがわりと増えてきたので(勿論常人に比べるとものの数ではない)一念発起。
この前の雪の日夜勤明けで、バスで帰宅する機会を良いことに、ぶらり途中下車して、わざわざ事前調査してきましたよ!(マーティ・マクフライもびっくりの弱々しさ)
第二駐輪場のほうだったんですが、係りのおじさんの姿を見つけて特攻。
「あの、すみません。ちょっとお訊きしたいんですが」
訊いてみればなんのことはなく、おじさんは親切に色々教えてくれました。
一番謎だったおじさん不在ですが、決められた時間にしか係りの人はいないんだそうです。じゃあお金はどうするんだと思ったら、購入して貼る券がない原付には、交代でやってきたおじさんが請求の札を勝手に貼ってしまうんだとか。
「いないときは空いている場所に勝手に止めていいですよ」と言われたときは「どれだけザルなんだ」と思いましたが。
まあそんな情報を仕入れて、遂に第一駐輪場を利用して参りました。どれだけ土地が足りない都会のビルなんだというくらい狭いスペースにびっちりの場所でしたので、戦々恐々でしたが、そこにいたおじさんがやはり、「あっちが空いてるよ?!」と親切に場所を教えてくれまして、とりあえず止めます。
さあ金だ! とばかりに
「あの、私初めて利用するんですが、お金はどうしたらいいんでしょうか」
と尋ねたところ、
「ナンバーわかれば券つけといてあげるよ!」
とまで。
いやいや覚えないと意味がないから、と慎んで辞退すると、券売機の前で懇切丁寧に説明してくれました。
というか全部やってくれた。
券のつけ方まで教えてくれて、大変親切なおじさんでした。
「こうすると糊がついちゃうからね! こう紙につけるの! 慣れてきたら、建物の中も利用してね! カードはお金がなくなったらチャージできるからね! 何百回もできるからね!」
「ありがとうございます!」
でもなんでそんなに大声!(つられて大声で返事をする三十歳)
本当に親切にしていただきました。ありがとうございますおじさん!
この手の係りの人は妙に怖いイメージがあったのですが、私が関わったお二方は、どちらもとても良い方でした。
こういう出会いってつまらないことかもしれませんが、凄く大事だし嬉しいよなあとしみじみ。
実際かなりテンパっていたらしく、おじさんと一緒に券を貼りに原付まで戻って初めて、鍵をさしっぱなしだったことに気付きました。
「あ、鍵忘れてた」
「おおっと、危な?い!」
なんでそんなにハイテンションなんですかおじさ?ん!
こっちのテンションも朝っぱらからダダ上がりした日でした。
ですが一旦別にいいんだけどと思ってしまうと、非常に腰が引けるたちです。
そんな私ですが先日利用してきましたよ駅前駐輪場!(低次元)
今まで民間の駐輪場を利用していたんですが、当たり前のように長時間利用すると結構お金がかかるんですよ。
前々から公の駐輪場があるのは知ってはいたんですが、外側から見る限り常にびっちりいつも詰まってて、おまけにいつの時間も係りらしき人の姿も見えない。
この時点で「うへえ」と気後れしてしまうんですよ。
これが自転車ならここまでひくこともないんですが、私は原付乗りなので、いざというときに全く小回りが聞かないのが問題なのです。
乗られない方はわからないと思うんですが、原付は見た目より遥かに重いし、人力で動かそうものなら小回りはきかないし、想像以上に幅もとるのです。
で、もたもたしていると他の人の迷惑だしなあと、今までチキンハートで避けてきたんですが、最近遠出することがわりと増えてきたので(勿論常人に比べるとものの数ではない)一念発起。
この前の雪の日夜勤明けで、バスで帰宅する機会を良いことに、ぶらり途中下車して、わざわざ事前調査してきましたよ!(マーティ・マクフライもびっくりの弱々しさ)
第二駐輪場のほうだったんですが、係りのおじさんの姿を見つけて特攻。
「あの、すみません。ちょっとお訊きしたいんですが」
訊いてみればなんのことはなく、おじさんは親切に色々教えてくれました。
一番謎だったおじさん不在ですが、決められた時間にしか係りの人はいないんだそうです。じゃあお金はどうするんだと思ったら、購入して貼る券がない原付には、交代でやってきたおじさんが請求の札を勝手に貼ってしまうんだとか。
「いないときは空いている場所に勝手に止めていいですよ」と言われたときは「どれだけザルなんだ」と思いましたが。
まあそんな情報を仕入れて、遂に第一駐輪場を利用して参りました。どれだけ土地が足りない都会のビルなんだというくらい狭いスペースにびっちりの場所でしたので、戦々恐々でしたが、そこにいたおじさんがやはり、「あっちが空いてるよ?!」と親切に場所を教えてくれまして、とりあえず止めます。
さあ金だ! とばかりに
「あの、私初めて利用するんですが、お金はどうしたらいいんでしょうか」
と尋ねたところ、
「ナンバーわかれば券つけといてあげるよ!」
とまで。
いやいや覚えないと意味がないから、と慎んで辞退すると、券売機の前で懇切丁寧に説明してくれました。
というか全部やってくれた。
券のつけ方まで教えてくれて、大変親切なおじさんでした。
「こうすると糊がついちゃうからね! こう紙につけるの! 慣れてきたら、建物の中も利用してね! カードはお金がなくなったらチャージできるからね! 何百回もできるからね!」
「ありがとうございます!」
でもなんでそんなに大声!(つられて大声で返事をする三十歳)
本当に親切にしていただきました。ありがとうございますおじさん!
この手の係りの人は妙に怖いイメージがあったのですが、私が関わったお二方は、どちらもとても良い方でした。
こういう出会いってつまらないことかもしれませんが、凄く大事だし嬉しいよなあとしみじみ。
実際かなりテンパっていたらしく、おじさんと一緒に券を貼りに原付まで戻って初めて、鍵をさしっぱなしだったことに気付きました。
「あ、鍵忘れてた」
「おおっと、危な?い!」
なんでそんなにハイテンションなんですかおじさ?ん!
こっちのテンションも朝っぱらからダダ上がりした日でした。