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日々のつれづれ。ネタバレに過剰な配慮はしておりません。
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『デトロイトメタルシティ』アニメ版
映画と称するにはアレなんですが、ツタヤディスカスでレンタルしたのでこちらに。
映画のクラウザーさんは面白い感じで、アニメのクラウザーさんは超可愛い感じでした。
アニメになると、原作のなじめない絵の部分とかが、デフォルメされて見やすくなるので、漫画よりも何倍も入りやすいと思います。
ジャギ様のきれいさに、私は倒れました。しかも、声がギンコさんですよ。何これ、どういう挑戦。
しかも後に、DMCの一番のファンの声優さんが、前田剛さんだったことを知り、これは『レジェンズ』の再来か! と目玉が飛び出ました。(劇団つながりなのかわかりませんが、このお二方の共演多いですね)
根岸訳の岸尾だいすけ氏も大変お上手でしたし、 そして、忘れちゃいけない、クラウザーさんの声が、うえだゆうじ氏。
私の中で、上手い好きだ愛してるを臆面もなく叫べる数少ない声優さんの一人です(怖いよ)。
あまりに可愛くて、あまりに上手いので、もう画面見なくてもいいやと思ったくらいでした。いえ、画面を見れば見たで、クラウザーさん、凄く可愛いんですが。
大体、一話十分とか、それくらいの短い話で終わります。原作に非常に忠実で、何個かの話を寄せ集めて一話作りました、ということではないです。逆に、ギャグ作品であれば、それくらいでいいと思います。物語はそぎ落とすのが基本だと思いますが、笑いの要素に関しては特にそうなので。
OPで、DMCのメンバーが、カメラに向かって決めポーズをとるシーンで悶絶し、ジャギ様のアップから、煙に包まれてクラウザーさんが出てくるシーンではしびれました。ああーあんな可愛い生き物がいていいのか。
映画は家族モノっぽいですし、漫画は若干人を選ぶネタも多かったですが、アニメに際して、わかりやすく一般ウケしやすい話が多かったので、お気軽に笑える、という意味では凄くお勧めです。
いやあ、もう、うえださんもっと色々出ないかな。
全く関係ないですが、うえださんのためだけに、『ときめもGS2 DS版』を購入する気満々のまま、今に至ります。
いや、いずれは買う! だが今は時間がない!


『バンテージポイント』
シガニー・ウィーバー年取ったなあ!
言われるまでわかりませんでした。ちなみにテレビ・クルーの人なんですが。丸刈りでエイリアン追っかけていた頃とは、別人のようです。(そんな印象しか残ってないんですか)
アクションシーン満載で、久しぶりに頭を使わずに楽しめました。
こう書くと語弊がありそうですが、基本的にアクションシーンは、色々脳みそでひっかかるところが出てくると、楽しめなかったりするものなので。
後半のカーチェイスは、車が一回転したり、爆発炎上するような派手さはないものの、カメラワークが上手いので、非常に肉薄した雰囲気がドキドキします。切迫感というか「うへえ、こんなギリギリな場所を行くのか」と思わせる、群集の中を暴走する二台の車、という図式が、魅力的です。

話の内容としては、公式サイトにある、トレーラーを見ると、どれだけ、大統領の狙撃事件に謎があるのか、という感じですが、若干これ印象が違います。
謎というよりは、一つの事件に関わっていた人物達はこのように動いていた、という繰り返しが行われるので、謎を暴くという感じは正直ありません。
誰が狙撃したか、ということは問題ではなく、その裏で、それぞれの立場の人間がそれぞれにやれることをやっていたというだけで、そこに、国家間の陰謀とか、ありえないどんでん返しがある、というわけではないのです。
ただ、見ている側は、狙撃犯が誰なのかということを、一応物語として主役である、シークレットサービスの一人と視点を共有して進むので、犯人探しが主題といえるかもしれませんが、実際、犯人を捜す場面は、時間軸としても大して多くありません。
じゃあ何が多いかというと、犯罪とは全くかかわりのない、一人の旅行者の行動だったり、犯罪そのものに関わっている人間の行動だったり、犯罪と関係ないけれど全ての登場人物の視界に存在している少女だったりするわけです。
故に、各自バラバラの行動が、一つの点に向かっている「だけ」であり、それは謎とはちょっと違います。
現実的に、シークレットサービスは物語の序盤で、すぐに犯人(というかおかしな点)を見つけてしまいますしね。
八つの視点、八つの立場にいる人間が、それぞれに、やらねばならないことをやった結果、狙撃事件が起こったのではなく、狙撃事件が起こった後も、八つの立場にいる人間はどのように行動したか、が、逆に見所なんじゃないかな、と思います。
事件後の行動も、事件前の行動に左右されるわけですから。

有名で派手な役者さんはいませんが(少なくとも私は全く知らなかった)それぞれ味があって、見所満載です。
そして、時間を90分におさめてあるのも見事。
最近、120分とか平気でありますからね。特にアクションものは、あまり長いとダレるので、一時間半でおさまってくれると、凄くほっとします。
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『ミスト』
衝撃のラスト、と好評価なので見てみました。
結果として、ホラーものの楽しみ方がよくわからないという結論に達しました。
確かに後味悪いっちゃあ、悪いんですが、そこになんていうか、知らない上で最善を尽くしたのに絶望、みたいな、どうしようもならない悲壮感みたいなのものを、感じなきゃいけないんだろうけどくらいの感想でした。パニック映画とか、ホラーモノに耐性があるんでしょうか。虫や、よくわからない謎の生物のグロさとか、契れた胴体とか、純粋にスプラッタな部分は、スプラッタとしてちゃんと見られるんですが、逆に、そこにストーリーが絡んでくるのが、おかしい、と思ってしまうのは、ホラーに慣れていないからなのかもしれません。
未知の物体Xが絡んでくると、それだけで、「がっつりフィクション」という気分になってしまうからかもしれませんが。


『サスペクト・ゼロ』
少なくとも、『セブン』は越えてません。強いて言うなら『Xファイル』。しかも、『Xファイル』を見たことがない私が想像する『Xファイル』です。
アーロン・エッカート祭りFBI役。わりと惜しいなあ、というスタンスの映画です。つまらないわけじゃないんだけど、これも別にサスペンスでもなければ、ホラーでもなんでもないなあ。
これ、結局「遠隔透視能力」という、トンデモ能力があること前提なので、まずその手の超能力が駄目な人は当然駄目ですし、その能力者である、ベン・キングズレーの演技は素晴らしいものの、彼に食いついていけるほど、アーロン・エッカートの役柄が魅力的ではない。
最初、殺人犯と思われていた、ベン・キングズレーを追い、猟奇的な振る舞いや、住んでいた場所の異常さだけを見れば、『羊達の沈黙』のようですが、そうではない。
キングズレーは、透視能力で殺人犯や、被害者の声をきき、捕らえられないFBIの代わりに、殺人犯を始末します。その映像(というか気配)にシンクロするアーロン・エッカート。
最終的に、ギングズレーとエッカートの間には、ある種の信頼関係が生まれ、「サスペクトゼロ」という、証拠も動機もルールも残さない殺人犯を追い詰めるのだが、というが大まかなあらすじなんですが、このサスペクトゼロがまずいらない。
結局、ほぼ主役である、キングズレー演じる、透視能力者が最後、「疲れたから殺してくれ、この風景を千回は見てきた」とエッカートにすがるんですが、それならそれだけでいいと思うんですよね、主題。
見たくないのに見てしまう、精神がどんどん傷ついていく、キングズレーが「自分と同じ能力を持つ」エッカートを見つけ、自らの結末をゆだね、自分が関わる犯罪にくわえさせた、という、いわゆる仲間意識から生まれた一連の事件であったほうが、もっと、透視「できてしまう」人間同士のつながりが描けたと思います。
キングズレーは同族として、エッカートにかかわりを持ちたがり、エッカートはそれでもFBIとして、相手が人殺しといえども殺人を犯したキングズレーと「同じ」にはなれなかった。
サスペクトゼロという、常人には捕まえられない犯罪者を捕らえられるのは、超常の力を持つものだけだ、とキングズレーが声高に主張したい、それが主題なのであれば、逆に最後は、キングズレーは「自らの目的をエッカートによって果たした」満足感を得られなければいけないわけで。

視点が散漫になってしまったのが、残念だったかなあ、と思いました。
エッカートが最後まで組織の犬であるならば、最後のシーンで拳銃を撃つのも別に、ヒロインでなく、名も出ないFBI職員、名もなき警官であって欲しいですし。

キングズレーの演技は文句なしです。ある種の異常者でありながら、礼儀正しい紳士に見えるが、凄みが自然に身についている感じが、魅力的でした。エッカートはまあ役柄で損をしているというか。悲壮感にあふれるとか、思い悩む感じにしろ、激昂は出来ても、静かに狂うとかできなさそうですし。ヒロインは『マトリックス』のトリニティの人(キャリー=アン・モス)でしたが、印象そのまんまでした。


『エリン・ブロコビッチ』
よくも、悪くもアメリカ的な映画。日本ではこんなに一般人が活躍しないだろうし、まず、一般人が一般人にベラベラ話したりしないだろうし、こういう女性は「日本」では受けない。
アクティブでエネルギッシュなのはいいけど、それと態度が失礼で言葉遣いが悪いのは次元が違うだろうと思わず思ってしまう狭量な私でした。
内容としては、公害で莫大な賠償金を勝ち取ったノンフィクションなのですが、公害にある、その悲壮感などが極力削られている(あっても、エリンが自らの立場をかんがみるための、いい意味でのダシだったり)ので、あっけらかんとした気分で見られます。ただ、二時間以上は長い ………。
隣人の男性があまりにいい人すぎるのが気になりますが、まあ彼はこの映画にいてもいなくてもいいので。エリンも別に彼が気になって仕方がないってわけでもなさそうですしね。
「今まで初めて私の話を真面目にみんな聞いてくれているの。尊敬されるなんて初めてなの。仕事は辞めないわ」
………仕事ってそんなもんじゃねえけどな!(遠い目)
『踊る大紐育』
カラっとした非常にアメリカ的なミュージカル。
フレッド・アステアものといい、アメリカの男は女のためならなんでもするな!
たった一日の休暇で、紐育に降り立った水兵たち三人。
地下鉄(が名物というのも可愛い)で見たポスターの娘に一目ぼれしたジーン・ケリーがひたすら彼女のプロフィールを見て、行きそうな場所を追っかけていく、というようなお話。
要するにストーカーなんですが、そんなこと言っちゃったらこの時代の8割の映画は犯罪だと思う。
ジーン・ケリーよりも、タクシーの女性運転手に一方的に迫られるチップという水兵のほうが好みだなあ、と思っていたらフランク・シナトラだった………。好みとかそういう次元の人じゃなかった。
この時代の映画の特徴である、女性陣の衣装の可愛さは必見。
学者であるクレアという女性は、濃緑のワンピースに、前がばっくりと股まで開いていて、ロングスカートの中にミニスカートをはいているようなデザインになっており、当然裏地はチェックで、その柄はワンピースの襟とおそろい。
タクシー運転手であるブランヒルドも、きっちりウェストを絞ったタクシーのタイトスカートの制服が逆にフェミニンだし。
そして、ポスターの女性であるアイヴィの真っ赤なワンピースの可愛さは悶絶もの。白と赤の細かなチェックのベスト(これ本当にベストなのか、ベスト柄なのかちょっとわからない)には、真っ赤なボタンが三つ連続でついていて、リボンタイは紺色。肩は丸みをわざとつけたデザインになっていて、ロングスカートのひだは細かくダンスに映えるようにデザインされていて、まさに愛らしさのかたまりでした。この時代はスカートの裏地とシャツやリボンの色を合わせるのが流行りですね。『ウェストサイド物語』でもそうでしたし。展望台で三人娘が揃ったときのドレス姿も眼福だったなあ。黄色、赤、緑がはっきりベースであって。
私がもう少しファッションの知識があればもっと上手く説明できるのですが、どうにも疎いのが歯がゆい。可愛いんですとにかく。

ジーン・ケリーがアイヴィを誘って、エンパイアステートビルの展望台で待ち合わせしよう、というと、
「一番高いところね」
とアイヴィが返事をする。それに応えて、
「僕はもう雲の上にいるような気分だ」
と言うジーンの台詞もおしゃれです。こういうことは、さらっと言わなきゃ意味がないぜ。
それまでも、同じ水兵に「どうしてそこまで彼女にこだわるの?」と聞かれ、「わかんない」と答える可愛さに倒れました。勿論翻訳の関係なんでしょうけども。

チップ(フランク・シナトラ演じる)の性格もいちいちおかしくて、基本女の人よりも、ニューヨークの観光がしたいので、相手そっちのけで望遠鏡を覗き、「10セントない?」「私ならタダで見られるのよ」と言われてしまう始末。
でもその後、
「望遠鏡を覗き込んでなさい!」
「君を見ているほうがいいよ」
って、お前どのツラ下げて!
「甘い言葉をささやいてよ」(と、女のほうから言うんだよ)
「君が好きだ。こんなに美人の運転手見たことない」
と言うんですが、ほったらかしにされていた相手は機嫌を直さないわけです。
「………観光案内に書いておけば」
すると、チップは展望台から観光案内を投げ捨てるわけですよ! ケエー!(興奮)
「君に甘い言葉をささやきたい」
ですよ、トドメは! その後ひざまずいて手の甲にキスってお前………お前って奴は………!
ただ、この相手役の女の人、どう頑張ってみても大阪のおばさんみたいにしか見えないんですが………。いえ、可愛くないってことではなく、なんかこう年齢的につりあわないように見えるんですよね。ファニーガールって感じじゃないし。

乾杯の言葉もカッコイイ。
「素敵な女性を見つけた男性に」
「見つけられた女性に」
ですからねえ。普通の恋愛の話とかしているシーンはわりとどうでもいいんですが、ちょっとした会話とか、笑いの部分は結構素で笑えます。
『容疑者Xの献身』
ちなみに私はテレビ版のガリレオは一回も見たことがありません。原作である小説も読んだことがありません。主役である福山氏と柴崎氏にも特別興味がありません。では何故見に行ったかというと、堤真一が出てるからさァ!

推理物として賛否両論と聞きましたが、個人的にはこれくらいでちょうどいいと思います。文字で読むと物足りないのかもしれませんが、実際に映像になって死体に細工したり、アリバイトリックの説明をされると、視覚に訴える部分で表現されると、強い印象が残りますし。
実際見ていて、「アレがアレではないのだな」というのはすぐわかったんですが、具体的な方法が思い浮かばず、トリックがすぐわかった、という感じではなかったです。説明されてがっかり、ということではないので、きれいにまとまっていたと思います。

テレビシリーズを一回も見たことがない私としては、完全に福山演じる湯川よりも堤演じる石神のための映画でした。というか、普通に主役。
「献身」の名に相応しい行動をする石神は、見た目冴えない高校の数学教師で、友人もおらず日々ただ無為に過ごす日々を送っているときは、猫背で本当にただのオッサンで、堤真一がこんなにブサイクに見えたのは初めてだ、というくらいだったんですが、これが、松雪泰子演じる花岡に接するとき、そして自分の目的を完璧に遂げた瞬間、びっくりするほど魅力的な顔立ちになります。
数学者として明晰な頭脳を持ち、自らの計画が完遂され、それに満足しきった石神。献身といえばいいが、結局自分勝手な愛情であることは変わらず、結果犯罪に手を染めたことは、倫理的に許されることではないけれど、彼にとってそんなことは問題ではなかった。
今まで数学しか関心のなかった男が、数学以外のことに自分の頭脳を使い、それは今までと同じように完璧だったはずなのに、そうはならなかった。
「どうして、どうして」
そう泣き叫ぶ石神の表情は、死んだような顔でも、自己陶酔したような顔でもなく、ただ人間の顔をしていた。

個人的に一方的な献身というのは、一方的な愛情であっても憎しみであっても、結局自分のためだけのものなので、石神に全部が全部感情移入できるはずもないのですが、石神という男の人間臭さがリアルで面白かったです。
あまりに花岡に懸想するので、どんな理由があるのか、ひょっとしたら体外受精かなんかで娘さんが自分の子なのか、まで邪推(苦笑)してたんですが、そんなことはなかったです。
そして、(反転)自殺しようとしていたところに、引っ越してきた花岡親子がやってきて、首に縄まで巻いていたのに、わざわざ呼び鈴に出てしまうのが、石神の捨てきれない人間くささなのでしょうな。この点から見ても、石神は数学以外に興味のない人間、という湯川の評価とは少し外れる男、ということになります。湯川は石神にとって一番近い人間だったけれど、石神と湯川は同じ人間ではなかった。だからこそ、石神は犯罪の渦中で「今自分の人生は充実している。こんなに美しいものを美しいと思える」と胸を張って言えた。それは湯川にとって理解できないものかもしれないけれど、石神にとってはそれが一番大切だったということなんでしょう。勿論これは、花岡の心中全く無視の、自己中心的な献身の中にしか存在しないわけですが。(反転終了)

いやあ、堤さんは本当に上手な役者さんですね。私はラストのこの泣き叫ぶ石神の顔があまりに男前で、ふるえがきました。
松雪さんも当然上手い。デトロイトメタルシティでアレな社長をやっていた人とは思えませんね。こんな美人な子持ちの女性がいたら、そりゃもう平常心ではいられないでしょう。

正直、石神と花岡母娘(娘さんも可愛いんだこれが。母親よりも純粋な好意で石神と接しているところが、凄く)だけいれば物語は進むようなものなので、湯川と柴崎演じる刑事(名前すら覚えていない)は、わりといてもいなくてもいいかな、と思います。
ラスト近くで湯川が警察の取調室で石神と対面するシーンも、別に要らないって言ったら要らないし。二人の友情をアピール、結局近くなれない二人
「その頭脳をもっと別の方向に」
「そう言ってくれるのはお前だけだよ」
をアピールしたかったのかもしれませんし。でもこれはあくまでガリレオの話だからなあ。だからこそ、最後は石神ではなく湯川が石神のことを思って終わるわけで。

個人的には非常に楽しめた映画でした。というか、堤さんを楽しむためだけにある映画だと思いました。
中年の恋愛にしては若干ファンタジーで、ドロドロした成分が薄いだけに、若い方にも受けるのかな、と。
『ラッキーナンバー7』
個人的に、『スティング』みたいなどんでん返しギャング映画を想像していたんですが、違いました。
物語の初めこそ、「間違われた男」の笑い要素があったり、マフィアのボス二人から間違えられ、借金を返すか人を殺すかの二択を迫られた男がどうするか、の謎の要素があったんですが、基本的に謎を解くための要素は、物語の序盤でどかっと出てきてしまっているので、わかる人は開始十分くらいでオチがわかってしまうと思います。
私は手探りで「ああいうオチかもしれないし、こういうオチかもしれない」と考えながら見ていたので、実際に種明かしの行動が始まるまで、確証は持てませんが、わかってみればそれ以外に考えられない、というオチでした。
それが悪いというわけではないのですが、そこに行き着くまでの物語に、爽快感を得なければいけない種明かし部分から、一気に迷走し始めるのが気持ち的に萎えました。
確かに、謎がわかるのは嬉しいんですが、それまでの展開がなかったかのように画面から死体の嵐です。
そのギャップに驚いた、というほどこの映画は、「悲惨な殺戮における感動」を前面に出しているわけではないので、なんだか死体が続々と増えるという種明かしから、逆に冷めてしまいました。
バレる、ということだけに関して言えば、その一瞬だけが過ぎ去ってしまえば、後は説明でしかないわけですから、そこに感動や、某の感情を持ち込むのは難しいと思うんですけど、それにしたって、肝心の種を明かす人間の感情があまりに描かれないので、逆に興ざめしてしまった感じです。
いわゆる、ジェノサイド的な演出をしたいのであれば、それこそラストで語れるのは、渦中の主ではなく、渦中の主のそばにずっといた人間であって欲しいと思いました。あの人物は惜しい。

サスペンスとしてハラハラする内容ではまったくありません。主人公の間違われた男そのものがハラハラしていませんので。見ている側も、ハラハラしない間に(むしろ「お前なんでそんなにハラハラしないのよ」と思うことはあっても)解説されてしまうので、起承転結すべてがわりと平坦な映画でした。
ただ、役者さんとしては、当然モーガン・フリーマンは上手いですし、ブルース・ウィリスも静かな役が似合っていましたし、スタンリー・トゥッチが出ていたのには、びっくりしました。最後キャストを見るまで全く気づかなかったよ。いやらしい感じの役だったからなあ。これはもう、一人スタンリー・トゥッチ祭りをするべきなのだろうか。
そろえた人たちとしては文句もないんですが(私は、ジョシュ・ハートネットにあまり関心がないので割愛)どうにもキャラクターとして生かしきれていないかな、という感じでした。
実際、本当の「どんでん返しサスペンス」であれば、映っている場面すべてにカギがある、カギと思わせるだけの演出があるくらいでもおかしくないと思っているので。サスペンスに必要なのは、謎とそれを凌駕するくらいの登場人物の個性じゃないとなあ。


『ブロークバックマウンテン』
極悪に体調が悪いときに届いたので、これは私にトドメをさしたがっているのだろうかツタヤがと真剣に思いました。具合の悪いときに見たい映画じゃねえー。

故・ヒース・レジャーの作品。とにかく知り合いがのめりこんでいるので、どんなもんだろうと借りてみました。私は普段、重くて暗くて辛気臭い人生哲学みたいな作品は絶対に選ばない(なんでフィクションの世界で辛い気持ちを味わう必要があるのか)ので、初めからかなり身構えた状態での鑑賞だったんですが、わりと普通でした。それほどセンセーショナルに構える必要があるとも思えません。実際、同性愛の映画というよりは、普通の恋愛映画という感じでした。

イニスとジャックは夏の間、ブロークバックマウンテンで仕事を行い、関係を持つ。その後、結婚や子供も生まれるが二人は二十年にわたり、秘密の逢瀬を重ねるのだが、というのが大体のあらすじ。
勿論私はその時代背景や、同性愛者だというだけで、リンチによって殺害されてしまう状況での恋愛、というのは実際想像もできませんが、当人達が気にするほど、周囲が気にしているのではなく、当人達が気にして(この場合、イニスが殆ど一人で他者の目を気にしているが)いるから気になる、という表現があったのが面白かったです。
まず、二人の関係のきっかけになる夏の仕事の雇い主なんぞは、自分の目で(憶測ではなく)二人の関係を見てしまっているのですが、次の夏、ジャックを雇用しないのは、あくまで「仕事をおろそかにして楽しんだせいで、俺の羊が死んだ」からなんですね。大体、その気になればこの雇い主は、いくらでもジャックとイニスを中傷できる立場にいるわけです(その時代の常識においては)。ですが、雇い主は二人は同性愛者であるということを、口外したふしは全くないし、世間の噂にもなっていない。彼にとって二人の関係性が重要なのではない、というのが、イニスのように神経質に同性愛を隠そうとする人間がいるものと、また対極をなしていて面白かったです。

イニスの奥さんも子供まで生んで離婚ですから、お気の毒としか言いようがありませんが、どうしても、子供を生んで生々しい女と、ひと夏山で出会い、恋焦がれる愛では、勝ち目は薄いなあとわりと冷静な目で見れてしまいました。これも、ようするに、亭主が他に好きな人間ができて離婚、自分と結婚したけど元の恋人に対する思いが残っていて上手くいかなかった、という話なので、恋愛としてはわりとありがちといえばありがちなテーマなわけです。

いざここで、同性愛であるということを強調すると、話の視点が違ってくるのかもしれませんが、私は割りとフラットな視線で最初から最後まで見られたので、前評判ではひっかかるかなと思っていた、このいわば、利用された形とも思える奥さんのエピソードも、さらっと流せました。

自分の欲望に忠実なジャックと違い、イニスは過去に同性愛者のリンチ殺人を目の当たりにしているだけあって、臆病な言動が多く見られますが、個人的にはイニスのほうが欲張りであって、こずるい感じがしました。同性愛者であることを、実は上手く隠せていないのは圧倒的にイニスであって、それなのに世間の目垣になるから夫婦間の関係も良好に見せたい。一緒にいたいというジャックの希望は叶えられないけど、ジャックがメキシコで他の男性と関係を持つと「次にやったら殺す」とまで嫉妬心を燃やす。お前それどっちつかずなだけに性質が悪いよ。切なさ担当というよりは、最初から最後まで乙女担当、という感じでした。
個人的には、ジャックの方がある意味オープン(同性愛主義のことではなく、己の欲望に対して)なので、逆に家族関係も仮面夫婦なりの平穏を保てていますし、ジャック以外の男の影もあるようで、かつビジネスでも成功を収めているようですから、あけすけな感じが好感度高かったです。
ジャックは他の男性と浮気をした、というよりは、同性愛者としてイニスを心から愛している。けれど、他の男も恋愛や肉体関係の対象として見られる、ということなんでしょう。イニスに関しては同性愛者というよりは、ジャックだけがイニスにとってたまたま特別だった、という感じもしますし。

音楽と、ブロークバックマウンテンの映像がとにかくきれいなので、そこに男二人が言葉少なに並んで座っている図は、非常に美しかったです。どうしてもこれが女同士だとかしましかったりしますし、男女だと生々しかったりしますが、これがいざ、その時代で禁じられている関係の二人となると、御伽噺要素も相まってか、非現実的なきれいさが出てくるのが不思議です。

結局二人の関係は、ジャックの死によって現実的には終わるんですが、この場合イニスによぎった妄想のように、リンチされたと見るか、そうでないと見るかは人それぞれということでいいんでしょうか。私は実際、リンチされたとは微塵も思わなかったんですが、結構意見としては半々のようですね。変な言い方をすれば、リンチにあうほど、ジャックの頭が悪いとは思えません。仮にも社会的にかなりの成功を収めているわけですし。イニスは逆にされそうですが。ジャックはごく普通に、タイヤのパンクを直していて事故で死んだ。呆気ないかもしれないけれど、それだけだった、という印象が強かったので、リンチされて死んだという解釈が現実だった、という感想はわりと意外でした。

その後、イニスはジャックの実家で始めての夏の山で、二人の血がついたシャツ(しかも重ねてハンガーにかかってる)を見つけ、それを持ち帰り、自分のクローゼットの中にしまって「永遠に一緒だ」みたいなことを言って終わります。
このラストは本当に、どこからどう見ても超王道な恋愛映画なんだなあ、としみじみしました。肉体は滅びても魂は永遠って、もうどれだけなのかと。

私は特別感動もしませんでしたし、涙を流したりもしませんでした。ひとえに、ごく普通の恋愛映画として見られたからかもしれません。とにかくまあ、イニスが煮え切らないんだこれが。自分の人生も、自分が他人の人生についてもたらす影響からも逃げている、という感じで。個人的には圧倒的にジャックが好きです。ただまあ、ジャックも両親が言うように口では偉そうなことを言っても、結局何一つ実行に移せなかった男でもあるわけですが。
二人は年老いていく。けれど、二人の間にある思いと、ブロークバックマウンテンの美しい景色は変わらない。
ごく普通の恋愛映画として、個人的には鑑賞しました。ただし二時間超は長すぎるなあ。


レンタルDVDの特典として、CFが入っていたんですがもうこのCFのコピーが、あまりにそれっぽくて笑えます。「僕達は永遠に離れない」とか、これそういう映画じゃな………いや、そういう映画か。
全く同じシーンを使っていても、和訳が全然違うのもびっくり。「俺はいい夫だろう」とかイニスが言うシーン、あれもう、とっくに離婚した後なんですが。
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