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日々のつれづれ。ネタバレに過剰な配慮はしておりません。
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『ロレンツォのオイル』
実際にあった話を映画化したもの。
それゆえに、起承転結など関係なく淡々と物語は進みます。
ある意味ドキュメント的要素が強いので、その描き方自体には好感が持てるのですが、持っていてそこから漂うのが「希望」ではなく「現実」である以上、ちょっと臓腑をえぐられるものがあって辛かったです。


余命を宣告された息子のために、素人の夫婦が懸命に治療法方を模索する。
しかし、息子の病状はよくならず、家族やそれをとりまく環境にも焦りの色が濃くなる。
子供は次第に寝たきりになり、食事や排泄やすべて他人の手を借りるようになって、家族の負担も大きくなる中、夫婦はついに植物油から取れる成分に、病気を抑制する効果があるのではないかとたどり着く。
周囲が見えない夫婦に、それを支える身内。遅々として進まぬ医療実験に、同じ家族の団体。
様々な人々の思惑の中で、果たしてそのオイルは息子の命を救う事ができるのか。


病気の息子を治すために懸命になる母親の姿に文句はないし、それはそれでいいんですが、その結果第三者に対して攻撃的になる事実を見るのは苦しいし、正直辛い。
母親が賢明になっても他人との差は埋まらない。
母親は病気の息子を「得る」ために、他の全てを「切り捨てる」生き方をせざるを得ない。

病人の苦しみは病人にしかわからないし、それを看病する人間の気持ちは第三者には絶対にわからない。

その必死な様が見ていて苦しかったです。
むろん、母親も病気の息子も父親も誰も悪いわけではないのですから。
抱え込んでしまう家族の姿は、第三者から見ると鬼気迫るものがあるのですが、それこそが横たわる現実であって、唾液が排出できずにむせ続け、苦しみ続ける姿を見て「これ以上は」と思ってしまう看護師が弱いわけでもない。

結局、それぞれがそれぞれの立場以上のものを言う資格は誰にもない。
けれど、その母親も絶対に「一人」ではどうにもならないのですが、その事実に母親は見事に気づかず、そして結果として一人ではなく夫や他の身内の助けがなくなることはなかった、という「幸運」にも気づけない。

母親が、自分以外に向ける「感謝」が殆ど出てこない(というか、あったっけ…?)、というのがちょっとキツかったです。
第三者に気を遣う暇などないのもわかるし、そんな精神状態じゃないっていうのもわかるんですが…。
どれだけ多くの人々の手を借りているか、必要か、貴方が息子を必要としているように、息子にとって他の誰かが必要だとは思わないのか。
自らの人生をとして一人の人間に全てを捧げる様は、感動ではなく、狂気に近いものがあるのだなあと見ていて疲れました。

医者がほぼ悪役っていうの描き方としてはちょっとなあ、というか。
新薬の認可に時間がかかるのは正当な理由あってのことなので、ある程度は致し方ないと思いますが、結局は情報開示が不明瞭であったり、個人の腹一つで決まってしまうものだったりする現実を見ると、悪役扱いになっても仕方がないかなあとは思います。

まあ、医者は基本的に患者の事なんてミジンコも考えてませんよ間違いなく。

ただ、母親が自分の子供第一に生きるように、医者は全ての病人を公平に扱わなければならないというのは、確固たる主張である上に、互いが絶対に両立しないものなので、医師と患者の家族で軋轢が生まれるのは必然なのでしょうな。この映画でも、そういった描かれ方でした。

個人的に一番「うへえ」と思ったのが、病気の子供を持つ団体の存在。
その中で主催者が権力を持っているという描写も嫌でしたし、その主催者の主義主張が絶対であって、他の家族がいくら治療法を発見したとしても「むやみに希望を与えるな」とか、お前それ一体なんの権限があって…と、会社ではない、集団社会の暗部が生々しくて反吐が出そうでした。
その結果、希望と取るか絶望と取るかは、それぞれの家族の問題であって主催者側が操作していいものではない。

オイルの実際の効果や、この映画が与えた影響などは詳しくないので割愛。
映画としては結構昔の映画なので、演出や映像などに時代を感じます。
夫婦の会話の描写がひたすらねちっこいのですが、一応イタリア人であるという誇張なんでしょうかね。
アメリカ夫婦にしたってなんでこんなに、ベッタベタなんだろうとは思いました。
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