忍者ブログ
日々のつれづれ。ネタバレに過剰な配慮はしておりません。
[827] [826] [825] [824] [823] [822] [821] [820] [819] [818] [816]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

ネタバレ含みます。特に反転もしておりませんので、自己責任において閲覧ください。反転処理もしておりません。
公式サイトの物語上で普通にネタバレしてしまっているので、その程度なら問題ないのだな、と判断したようなレベルです。



















『コクリコ坂から』公式サイト

大変面白かったです。
原作は未読ですが、戦争要素もいれつつ、基本的には主人公海と、少年俊との恋愛話なので、最初から最後まで爽やかに鑑賞できました。

まず、主人公(ヒロイン)の海ちゃんが非常にいい子。
親がいないので、変わりに下宿を営み、朝は誰よりも先に起きて御飯を作る。家事全般を引き受けて、夕飯の支度もしなければならないために、学校には遅くまで居残ることができない。
彼女は毎朝旗をあげる。船乗りだった父親に届くように。
そんなある日、自分で作った弁当を食べている昼休みに、学校内にあるカルチェラタン存続を叫びながら、デモンストレーションとして池に飛び込んだ少年と出会う。
その少年に憧れを抱く妹と共に、海はカルチェラタンを訪れ、埃と、見たこともない部活動を行っている生徒たちと、そして、カルチェラタン新聞を発行する、池に飛び込んだ俊と再会するのだった。

非常によく出来たボーイミーツガールものでした。
海ちゃんがとにかく可愛い。根っからの長女気質で、我慢強くて愚痴も文句も言わない。自由奔放な妹に振り回されて俊と出会い、そして、デートではなく新聞の手伝いをすることによって二人の関係は深くなっていく。 カルチェラタンの存続も、ただ黙って見ているだけではなく、実際に提案しそれを実行に移す行動力が、如何にも長女、という感じです。

いや、自分の感情に自制がききすぎている子って、本当に応援したくなるんだよ!(苦笑)

俊がとある理由からそっけなくなっても、誰に相談するわけでもなく、泣き喚くわけでもなく、ただ懸命に毎日を過ごす。
そして、はっきりと「私が嫌いになったのなら、そう言って」と言えちゃう強さ(というか悩んでいる時間が無駄だという合理性というか)も可愛い。
この場面で別に泣きそうになりながら言うとか、俊の気持ちを引き止めたいとかではなく、純粋に「急変した貴方の態度がきにかかる」というようなケリをつけたい(笑)的な行動力が本当にああ、我慢強い女の子だなあというか。

この主人公である海ちゃんが、「しっかり」と日常生活を営んでいる、という絵がOPずっと表されます。
旗をあげ、髪を結い、お釜のふたを開けて水につけてあるお米を確認し、マッチでガスコンロに火をつける。ハムエッグを作り、育ち盛りの弟の分はハムが何枚か多い。安売りしていたアジでアジフライを作り、洗濯をして、買い物をして、そして、学生として俊や仲間たちと過ごす。
この日常描写があってこその、「御伽噺」なんですよね。
一生懸命生活をしている女の子が、可愛くないわけがない。
その子はしっかり足に地をつけて生きている。
だからこそ、カルチェラタンの混沌として面白おかしい部活動の面々や、俊とのメロドラマのような関係、そしてそのご都合主義的な結末すらも、応援してしまえるファンタジー作品なのだと思います。

全く一からの(ゼロからの)ファンタジーよりも、人間がいて、今生活している基盤があって、そこから「別の世界」に訪れてしまう事こそ「御伽噺」だと思うので、海ちゃんが父親の影ではなく、はっきりと俊という少年と淡い恋愛感情を育てていくのは、恋愛という別の世界の中、現実ファンタジーの中での出来事なのでしょうなあ。

公式サイトの物語の説明にもあるので、ネタバレしますが、物語中盤で俊と海は腹違いの兄妹ではないか、という事実が明らかになります。
俊は海を避けますが、海はその様子に気づいてはっきりと尋ねるのが、前述したシーン。
「私が嫌いになったらそう言って」

その後、二人は別に特別とか背徳的な関係になるわけではありません。俊は実の父親が誰であれ、育ててくれた養父母を尊敬しているし、海は勿論戦争で死んでしまった父親を尊敬している。
その上で海が、「帰ってこないお父さんのかわりに、風間さん(俊)が来たんだって、思うことにしたの。だから、今も、これからも好き」と告げるのが、ある意味ファザコン発言ですが、その逆で、父親から脱却して俊のために旗をあげるという行動に繋がるのではないかと。
そこまで思い切ってやっているのではなく、お父さんのために旗をあげるのが習慣になっていたけれど、そこに、俊のためにあげるっていう比重が大きくなっていく、というかその辺の不器用さ加減がたまりません。

カルチェラタンを取り巻く行動は、学生集会であったり、ガリ版をすったり、校歌を高らかに歌い上げたりと、今の若い子完全にわからない(33歳の私も正直ガリ版はすったことない)でしょうが、だからこそ楽しめます。
日常描写は、今でも通じる家事労働の部分のほかにも、今だとちょとピンとこない、学生生活の「ノリ」も垣間見られて実に面白かったです。

実際戦争描写があるわけではないですし、作中で死亡描写があるわけではありませんが、やはりそこは戦争の影があります。
海ちゃんの父親は機雷にぶつかって死んでいるし、もう一人もまたしかり、です。
主人公の父親たち三人が学生服で映っている写真で、生き残っているのは一人だけ。他の二人は死んでいる。
写真を撮る際に、「お前たち、俺よりも先に死んでくれるなよ」と言った青年はもういない。

海の母親は、俊の生い立ちと過去について、こう語ります。
「戦争中は、こういうことが数え切れないほどあったの。珍しい話じゃなかったのよ」

この一連の流れで、私号泣(苦笑)。
最近涙腺が弱くなったっていうのもありますが、本来死ぬはずではなかった、死ぬ理由、殺される理由もなにもなかった人々が死に、残され、殺さねばならなかったっていう事実を、当事者が淡々と告げている様はもう個人的には涙なくして見られません。

基本的に少女漫画のハッピーエンドですから(原作はちょっとわからないですが)話の展開などは、大変ご都合主義です。
海と俊の関係も、カルチェラタンの存続も、ちゃんと幸せな結末を迎えます。

だからこその、現実あってこその幸せな御伽噺で、あっさりしたラストも含めて非常に良作だと思います。大変面白かったです。

個人的に好きだったシーンは、事実を確かめに海と俊が二人で走るところ。
最初俊が先を行っているんですが、海が追いついて追い抜かす。
体一つ分程度だけ前に行ってから、二人は併走する。
俊は海の手を引いたりしないし、海も真っ直ぐに前を向いて、港へ向かって走る。
こういう海のスタンス(基本一人でなんでもやる)と、俊のスタンス(それを不必要に構ったりしない)が凄く良くて、お互いの信頼関係が見えるようでした。幸せだ。

後、海が下宿していた女医さんを尊敬していて、はっきりと「医者になれればいいなと思っている」と俊に言うのが、凄くこれまた個性的ですね。お嫁さんになりたいとか、そういうんじゃない。 海の自立的な個性がよく出ていると思います。まあ、親の家系が医者だっていうのもあるんですけども。

海についてばかり語りましたが、俊も勿論男前ですよ。優しくて行動力もあって、生い立ちについても必要以上に引きずらず、一人で抱え込まず、自分でちゃんと調べた上で海に事実を告げることができる。
二人の微妙な視線のすれ違いとか、「ああ、ここで俊は海を可愛いと思ってるんだな」っていうのもはっきりわかって、見ていて常ににやにやしっぱなしでしたが。

絵に関しては、同監督作品『ゲド戦記』では、開始早々の海の描写だけで眉間にしわがよったものでしたが、今回は絵の演出に関しても非常によくできていたと思います。
年々キャラクターの顔が可愛いより、きれい系に偏っているのはお約束ですが、それ以外のなんだかよくわからないけれど芋っぽいモブ、その群像シーンも非常に良かったです。
哲学部のいかつい男子生徒と、海の友達の気の強い女の子との恋愛未満みたいな描写、凄く良かったです。花柄のカーテン女の子が作ってきちゃって、それでも断りきれなくて哲学部の部室にちゃんと取り付けちゃうとかね…甘酸っぱい! 青春万歳!(笑)

音楽もいいですし、OPでかかる可愛らしく明るい曲は世界観にあっていてよかったです。
ただ、これ何度もテレビでCF見て思ったんですが、CFで使われている場面に何故殆どカルチェラタンがないのか疑問。
これがネタバレ禁止とかならまだしも、公式サイトの物語で9割はもう内容書かれちゃってますしね。
むしろ、海と俊の関係が深まっていくのはカルチェラタンでなので、その描写が省かれているCFってどうなんかなあとは思いました。大体あのCF暗いというか地味というか。確かに派手な作品ではないでしょうが、明るい、幸せな内容でしたよ。
声の演技はもう慣れちゃった(苦笑)というか、可もなく不可もなく。長澤さんのほうが頑張ってたと思います。

個人的には、アリエッティよりも何倍も面白かったです。あの排他的な恋愛未満のようなぬぐいきれない後味の悪さよりも、何倍も見てよかったと思える映画でした。
PR
カレンダー
08 2024/09 10
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30
ツイッター
ブログ内検索
メモ

公式サイト11月10日発売予定








ファンタスティックMr.FOX
アリス・クリードの失踪
4デイズ


美術系
・氷見晃堂(石川県立美術館)
・佐々木象堂(佐渡歴史伝説館)
Powered by ニンジャブログ  Designed by ゆきぱんだ
Copyright (c) 雑記 All Rights Reserved
忍者ブログ / [PR]