忍者ブログ
日々のつれづれ。ネタバレに過剰な配慮はしておりません。
[785] [784] [783] [782] [781] [780] [779] [778] [777] [776] [775]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

『トゥルー・グリッド』公式サイト

硬派な西部劇映画でした。なんだろう、わりと玄人向けというか。少なくとも物語上において、宣伝で銘打たれるような、14歳の少女の復讐劇では全くありません。
個人的には肩透かしというか、西部時代のなんでもあり世界観に慣れちゃった後は、さほど見るべきものがないような印象でした。

まず、父親の復讐をしようとする14歳の女の子に可愛げがひとっつもありません。全くもって可愛くない。
この、「可愛げのなさが逆に可愛い」っていうのは、確かにあると思うんですが少なくともこの子に関しては、なんで復讐に固執しているのかも良く分からないし、何事にも動じず、感情が全く表面に出てこない(クールという意味ではなく、鉄面皮的な意味で)ので、正直彼女が物語上で果たす意味がよくわかりませんでした。
例えば世間知らずのお嬢さんが、西部世界で生き抜く残酷さを知るとか、それでも純真無垢で、それに男達がほだされるとか、まあお約束であってもキャラのつけようがあったと思うんですが、この子本当にびっくりするくらい無魅力なので、彼女が語り部になっても面白くないんですよね。

最終的に、彼女は自分の手で父親を殺した相手を「見事」に撃ち殺すんですが、その前後に別に某かの葛藤はまったくありません。
けれど、その前の復讐の旅の間にも、彼女の心の機微は全く揺れ動かないので、ここで14歳の女の子がライフルぶっ放して人を殺しても、見ている側も「へー」くらいの感情くらいしか湧かないんですよね。
だって、そういうことが「出来る」子が、そういうことを「した」ってだけの話なので。
個性的な面々と関わっても、彼女は何一つ成長しないし、周りも変わりはしなかったっていうのは、それこそ魅力の相乗効果が望めないので、見ていてなんだかなあ、という感じでした。

男だろうが、少女だろうが、とにかく相手をひたすら殺すことに善も悪もないっていう西部劇の世界観を表したというのであれば、それは見事に成功していると思うんですが、でもそうなると、少女は別に一緒に旅した男達に何も感じないし、男達も別に女の子に何も感じてないっていう、登場人物たちの絡みいらねえじゃんということになってしまいまして、見ていて面白くないんですよね、正直。

女の子以外の人物描写も非常に中途半端です。
天下のマット・デイモンもテキサスレンジャー役ですが、かっこいい要素一つもない勿体無い印象です。
ジェフ・ブリッジス演じる、コグバーン保安官は主役(女の子が主役なんでしょうが魅力がないので、そういう意味では主役ではない)なので、衣装や立ち居振る舞いは非常にかっこいいんですが、これも途中までかなあ。
相手を追う手がかりがなくなった途端にいじけたり、酒びたりになって奇行に走り始めたりされると、少なくとも「そういう行動に走る個性」がちゃんと描かれていないと、ただのかっこ悪い人になっちゃうわけで。
嘘でも、虚勢でも、乙女目線からの願望(苦笑)でもいいので、やっぱり情けない男のかっこよさがないと、本当にただのデブな老人のぐっだぐだ感を見なきゃいけない羽目になってしまうので。

しかもどうして立ち直ったのかとか、そういう描写も一切ないので、なんつうか、彼が単品で出ていればまだよかったんでしょうが、彼の人間らしい生々しさが、却ってそらうそ臭い印象でした。

うーん、衣装とか銃をぶっ放したりとか、ぞんざいな言葉遣いとか、そういう要所要所はかっこよかったんですが…。
最初のほうで、ちゃんとたるんだビール腹(この場合ウィスキー腹)を見せてくれた時が、私の中でのコグバーンのピークでした。

主役の三人の魅力がイマイチな分、とってもキュートで魅力的なのが悪役の面々でしょうか。
娘さんの親を殺したチェイニーも、情けない男ですが外見愛嬌あって非常に可愛いです。
なんていうか、こんなにしょーもない男なのに、賞金かけられているいっぱしの悪党っていうギャップが魅力的というか。その辺、職業強盗、みたいな世界観がはっきり描かれていていいですね。
へたれでもなんでも、日常生活の延長線上で人を殺す事もありますよ、そりゃ、みたいな。

そのチェイニーを一応かくまうというか、行動を共にしているのが、「ラッキー・ネッド」という通り名の賞金首なのですが、こいつがまた可愛くて!(鼻息)
ただ可愛いだけじゃなくて、一応ネッド一家のボスなので当然頭もいいし、追ってきた女の子は別に自分を狙っているわけじゃないと知っているので、「結果として殺すことになるかもしれないけれど、今は興味がない」というような態度で接するのがたまりません。
そこにいたるまで、コグバーンはネッドの仲間を何人も撃ち殺しているんですが、それに対する愛着はないというか「そりゃそういうこともあるだろう」くらいの、淡白な態度が大変素敵。
だからといって別に人殺しはしない主義とかではないので、平気で銃もぶっ放すし、結局は、コグバーンも敵であるし、女の子の生命に「興味なんてない」ので、チェイニーと女の子を一緒の場所に置き去りにして、「今は生きてるだろうさ。でもその後は知らん」という態度がキレ者でクール。

コグバーンとの対決で「コグバーン、俺たちは検事には会えないな」と笑う様がカッコよすぎて倒れました。いやーネッドが出てきてからは眼福だったなあ。

純粋に西部劇を見慣れている人は面白いのかもしれませんが、個人的にはもう少し、登場人物を見てキャー、物語を見てウルウル、みたいな映画のほうが好みでした。
ただ、役者陣はジェフ・ブリッジスも、ネッド演じるバリー・ペッパーも、「ノーカントリー」でタフな演技を見せてくれたジョシュ・ブローリン(全然気づかなかった)も、非常に魅力的です。
それだけに、素直にキャーカッコイイー! と言えなかったのが残念。
PR
カレンダー
08 2024/09 10
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30
ツイッター
ブログ内検索
メモ

公式サイト11月10日発売予定








ファンタスティックMr.FOX
アリス・クリードの失踪
4デイズ


美術系
・氷見晃堂(石川県立美術館)
・佐々木象堂(佐渡歴史伝説館)
Powered by ニンジャブログ  Designed by ゆきぱんだ
Copyright (c) 雑記 All Rights Reserved
忍者ブログ / [PR]