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日々のつれづれ。ネタバレに過剰な配慮はしておりません。
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『ロード トゥ パーディション』
男たちの男らしい世界の話。いわゆるマフィアというか、ファミリーものですね。
久しぶりにいい映画が見られてすっとしました。この前に見たのが『レッドクリフ』で男たちのメロドラマだったのが幸いした(苦笑)のか、非常に面白かったです。

家庭では厳格だがいい父親を演じているサリヴァン。果たしてその仕事とは、自分を救ってくれたマフィアのボス、ルーニーの使いとして殺しを請け負うことだった。
ルーニーはサリヴァンの家族を愛し、親身になって接するが、その反面できの悪い息子であるコナーは自分の期待を裏切る行動ばかりをして、悲劇を招くだけだった。
ある日サリヴァンの息子であるマイケルは、ある日好奇心にかられて父親が仕事として、人を殺す現場を見てしまう。
その息子を始末するべく、コナーは暴走して動き出し、そんな息子を見捨てられないルーニーは、サリヴァン抹殺の命令を殺し屋マグワイヤに依頼するのだった。
マイケルと共に逃避行を続けるサリヴァンの心中は。そして二人は無事にマグワイヤの手から逃れる事ができるのだろうか。

舞台がシカゴですから、まずその辺の灰色の世界が美しいです。
雪は降り積もるほどではないが、降り続き、道は凍るも土の色が見える。
人々は黒く分厚いコートを身にまとい、灰色の帽子を深々とかぶり、マフラーを巻いて背を丸めて歩く。
ロングコートの中からわずかに見えるのは、細く長いマシンガンの銃身。
足音はなく、雨の音もなく、男は静かにかすむ世界の中で「父」を撃ち殺した。

この映画、音楽と映像が物凄くよくて、演出も派手な使われ方をするのではなく、「無音」の使い方が非常に秀逸でした。
まさしく見せ場、最後の方でサリヴァンがマシンガンで人を撃ち殺すシーンがあるのですが、そこに至るまでの演出が素晴らしい。
大雨が降る中、男たちが雨に濡れながら店から出てくる。車に乗り込もうとするも運転手は既に事切れている。
振り返る男たち。その視線の先には誰もおらず、その代わりに鮮やかな光が点滅する。
きらめきが走れば、男たちが撃たれて倒れる。
次々に倒れる中、残された男は雨に打たれながらやってきた男に向かって言う。
「お前でよかった」と。

この一連のシーン、終始無音なのです。
マシンガンの銃声だけ流れるとか、逆に銃声はしないでBGMだけ流れるのではなく、ひたすら無音。
そこで、最後に流れるのが人の肉声っていうのが、凄く印象的なシーンでした。
人を殺す事を「良い」シーンにするのって、中々難しいのですが、これは殺される側の男の心境に立っているようで、何処となく静謐な印象を受けます。

これは父子物の映画なので、二組の親子が対比して描かれますが、それもまたよし。
サリヴァンは息子に初めはどうやって接していいのかわからないのですが、共に逃げて悪事の片棒を担がせていくうちに、互いの心情を吐露したりして、いい親子関係を築いていきます。当人同士の会話ではなく、ただ立ち寄った民家に住む年配の女性に、「それに、あの子は父親を愛してる。知らなかったの?」と言われて、自分の感情を自覚したり、やっていることは強盗の手伝いなのですが、そこに流れ、生まれる感情は愛情っていうのが、凄く真っ直ぐに描かれていて感動できます。

そして、もう一組のルーニー、コナーがまた、ゆがんだ親子愛が顕著で見ていてもどかしい。コナーは典型的な馬鹿息子で、父親の金は横領するわ、すぐに銃をぶっ放すわ、体言はいて人を殺すわで、本当に浅はかの極みなんですが、ルーニーはそれを見捨てられない。アイルランド系は敬虔なキリスト教徒(この辺の宗教事情は複雑すぎて詳しくないので割愛)なので、それも手伝ってか、ルーニーは「お前が生まれた日を呪う」と息子を殴りながらも、すぐに「なんてことをしてしまったんだ。許してくれ」と泣いて詫びる。コナーは偉大な父親に恐れを抱き、反発し、そして同じように泣きじゃくる。この二人の関係には互いに対する打算と依存しかなく、同じようにファミリーの世界で生きていても、サリヴァンの父子関係とは正反対を示します。結局この子に対するルーニーの姿勢が悲劇を招くので、最後もサリヴァンとルーニーの決着で終わります。コナーとサリヴァンではなく。

まず、出演しているのがトム・ハンクスに、ポール・ニューマンに、ジュード・ロウに、ダニエル・クレイグですよ!
配役だけでお腹一杯です。トム・ハンクスはだいぶウェイトをアップしていかにも骨太な父親を好演。
そしてポール・ニューマンの彼が縁起にうっとり。『スティング』の頃も大好きでしたが、今回は本当に老人なので、その年相応のしわにうっとりというか。
あまり触れなかったジュード・ロウは殺し屋役で出演。実に気持ちの悪いいかにもキャラクター的な人物役で出演されていて、どうも物語りにそぐわないというか、浮いている印象がリアルな物語の中で強かったのですが、逆に非現実的な地に足が全く着いていないキャラクターとしての演出だと考えれば、こちらも対比としていいのかなと思うようになりました。そんな異常者の役としては、まあ二枚目要素かけらもなく素敵です。

そして、とんでもバカ息子役にまさかのダニエル・クレイグですよ!(笑)007の骨太ボンドなんてこれっぽっちもなく、本当に頭の先からつま先まで全部ひ弱で下種な男をこれまた好演です。肉体的に弱いのではなく、精神的にもろい男のどうしようもなさが見られて、これも眼福でした。

ラストは賛否両論でしょうが、あれ以外はありえないと思います。別にいい人の話ではなく、それこそ「彼は私の父親でした」というしめの言葉にふさわしいような映画でした。お勧め。
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