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日々のつれづれ。ネタバレに過剰な配慮はしておりません。
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『イヴの統て』
かの、ベティ・デイヴィス主演の映画で、非常に面白かったです。
見ていてわかりやすいですし、名女優ベディ・デイヴィスの魅力を堪能する映画といえましょう。
イヴというのはベディ演じる女優、マーゴに取り入ってなりあがろうとする若い女性のことなのですが、まあ主役は彼女ではなくベティのようなもので(というかそう)。
始めは自分を慕って献身的に尽くしてくれるイヴに、周囲もマーゴも信頼を置くわけですが、次第にほころび始めていくわけです。勿論、それに一番先に気づくのはマーゴであり、女性たち。男性たちは「あんな献身的な女性になんということを」と、ベティの言う事を信じないわけですね。全く男ってやつはよ。
傍で見ていると(画面のこっち側からすると)イヴなんて出てきた瞬間から怪しさ満載ですし、大体、女性が男優に惚れて献身的になるならともかくとして、女優に近づいて尽くすなんて、なんかあるな、以外ありえないじゃねえかよ、といいたくなるのですが、それはまあ置いておいて。なんもなくたって、むしろなんもなかったら狂信的で怖いよ。

ただマーゴにとって非常に幸運だったのが、長年女優として培ってきたキャリアや、友人関係は決して彼女を裏切らないものだった、ということでしょうか。その財産は決してなくならないし、イヴの肩を持ってマーゴを責めたりすることもあっても、決して周囲の人間は彼女の女優としての実力を疑ったりしないし、友情を裏切ったりしない。
その結果、マーゴに成り代わり女優になりたいというイヴのもくろみは見事叶っても、結果としてイヴの周囲には誰もいない、という秀逸な描き方をされていました。
マーゴは最終的に結婚して引退、つまり「その結果」としてイヴは女優としての道を歩みだすわけであって、そこにはイヴが画策しようがしまいが、マーゴは落ちぶれることなく己の幸福を手に入れ、イヴは幸福を手に入れられなかった、という現実が突きつけられます。

この白黒映画の時代の特徴として、言葉運びの上手さが常にありますが(時代というか、世界観というか)今回、マーゴの恋人であり、一度は喧嘩別れする男性が秀逸でした。
マーゴと喧嘩別れした後、イヴがそれに近づくわけです。でも彼はきっぱりと、「僕が愛しているのはマーゴだ」とそれを拒絶する。この男性、四十歳になるマーゴの年下の彼氏で、32歳設定なんですが、ドえらい男前で。
そして、泣き崩れるイヴに対して、
「泣くな。世の中には思い通りに行かない事もある」
とか、告白された当事者が言っちゃうわけですよ! すげえなこの男!
これ、イヴを慰めている感が全くないので、多分初めからこの男性はイヴの事をなんとも思っていなかったのでしょうが、その前に、マーゴと喧嘩別れした理由がイヴの事だったりしているので、見ているこっちは「男って奴は」とイラっとしているところにこの男前台詞ですよ!
要するにこの男性は、純粋にイヴを「理由なく」罵倒したり、遅刻してきたりする「マーゴの態度」に腹を立てただけであって、イヴが好きだから肩を持ったりしたわけでは全くない。それらを、年齢やそのほかにコンプレックスがあるマーゴが、湾曲して捕らえていただけ、ってことなんでしょうが、この辺は女性の性というか、責められませんわなあ。実際、男が責めないっていうのもミソ。

イヴは批評家を利用して、マーゴの年齢をあざ笑ったりするのですが、その新聞記事を見て真っ先に駆けつけてくるのもこの男性。年齢を気にしている四十過ぎの女優に、年下の恋人が駆けつけてきて、結婚を申し込む(その前にも何度も申し込んでいるのだが、マーゴが承知しなかった)とかもうお前…お前………!

言い方がウィットに富んでいる年下の彼氏の包容力にメロメロでした。すんげえかっけえよ。

女の私から見ると、マーゴの生き方は勿論カッコイイのですが、第三者を傷つけて利用しても女優としてのし上がりたい、っていうイヴも別に嫌いじゃありません。それだけ生きる事に対して必死なのはそれはそれで構わないと思うので。まあ当事者じゃないし私は(苦笑)。

ともかく、マーゴ演じるベティ・デイヴィスの美しさと迫力は圧巻。あの時代の美女は声が非常にドスが聞いていて実に好みです。ハスキーボイスよりもさらに深いというか。
私見終わるまで気づかなかったんですが、これ私が最も怖いと信じて疑わない『何がジェーンに起こったか?』にも出演されていた方だったんですねえ。納得の迫力。そして、すんげえ怖いです『何がジェーンに起こったか?』は。
ドロドロ血みどろ人体ぶっさり、みたいなシーンは一つもありませんが、それゆえに怖いです。こちらも超お勧め。



『スカーフェイス』
アル・パチーノ主演のギャングドラマ。以前たまたまレンタルして見た『暗黒街の顔役』のリメイクだとは見終わるまで知りませんでした。確かに言われてみれば設定とか物語は同じか。
キューバのカストロ政権から逃れてきた男が、アメリカでグリーンカードを人殺しを請け負った見返りに得て、麻薬取引や組織犯罪で財を成していく話です。要するにギャングもの。

ただ、『暗黒街の顔役』のような、マシンガンにロングコート、というような様式美はカケラもありません。
三時間近くある長い映画なのですが、全編コレ「フ●ック」の応酬。
下品な会話に、下品な行動。その辺がリアルなのかもしれませんが、正直見ていてキツいものがありました。何処にも美しさとか楽しさがないんだもん。
麻薬取引なんてマトモな生活であるわけがなく、その上アル・パチーノ演じる主人公がとにかく行動が粗暴というか、言葉遣いが本当に「汚い」ので聞いててぐったりです。激昂すると汚い言葉になるのではなく、口から出る言葉すべてがとにかく汚らしいので、これ字幕だからまだマシだろうけど、英語わかる方だと結構辛いんじゃないかなあと思ったくらいでした。

結局は、麻薬取引で得た金で、元ボスの愛人を妻にし、大邸宅に、妹に店を開かせてやったりするのですが、当然のように破滅が訪れます。
粗野な振る舞いをしていて、人殺しも請け負うけれど「女子供は殺さない」とか「汚い手を使う相手には容赦はしないけれど、そうでないのなら魂でぶつかる」とか彼なりのポリシーがあるのですが、そんなもん、底辺のものであって、だからといって主人公の男が「男前」だとか、「真摯」だとかっていう理由になんてならないわけです。むしろちゃんちゃらおかしいというか。
犯罪をしたくないけれど食うために犯罪をせざるを得ないのではなく、自分から望んで犯罪組織に属して、麻薬取引や殺人を請け負う人間が、そんなポリシー主張されてもねえ、というか。

その上で「私の血は兄さんでできている」と言っちゃう妹を溺愛(これは『暗黒街の顔役』でも同じですね)して、関係を持った部下を撃ち殺しちゃうとか、なんつうか、人間味あふれすぎだろう、というか。

決定的に『暗黒街の顔役』と違うのが、彼や周りを取り巻く人間すべてが麻薬常習者ということです。『暗黒街の顔役』ではそういった取引を生業にしてる描写はあっても、実際に使用している場面ってなかったように思いますが(実際使っているかどうかは不明だけれど、あくまで「ビジネス」として活用しているだけのように見えた)今回は、主人公から妹から愛人から、まあ麻薬麻薬麻薬で。吸引している描写なんてしょっちゅうすぎて数え切れません。
真っ白い粉に頭突っ込んで鼻から吸ったりとか、そんな行動も思考もすでに「まとも」とは言えないラリった人間が何を言っても、そこには真実味はありません。どれだけ感動的な台詞を言ったとしても、それが「シラフ」の上でなければ、いくらでも幻想の産物として真に受ける必要性がないからです。

そうなっちゃうと、前述したポリシーが、本当に全部薄っぺらに感じてしまうんですよね。

最終的な妹との決着は、『暗黒街の顔役』よりも筋が通っていたように思います。
妹があの状態で「まともに」兄を愛するわけがなく、結果撃ち殺されそうになる兄の方が、妹の心情がはっきりわかったような気がしました。

『暗黒街の顔役』も、『スカーフェイス』もどちらも主人公が撃ち殺されておしまいです。その結末以外はありえないのは明らかで、結局犯罪者の末路っていうのはこういうもんなんだろうなあ、という点では後味が悪くもなかったです。誰かを殺せば誰かに殺されるのは、ある意味当たり前なわけであって。

アル・パチーノはとにかくドギツイ演技で…好演っていうんでしょうかね。当時はかなりのスランプでこの映画も非常に評価が低かったらしいのですが。個人的には見ていて本当に胃もたれしました。脚本のせいで罵倒語しか使っていないせいもあるんでしょうが、あのガラガラしたしわがれ声で、「子宮までヤクまみれで子供一人生めない」とか妻をののしる様とか「勘弁してくれよ…」と普通に嫌な気持ちになりました。まあ、嫌な奴を表現しているのであれば大成功なんでしょうけども。

いわゆるピカレスク物としてはいい作品なのかもしれませんが、個人的には一回でいいです、という感じでした。
表現は悪いですが、いわゆる下層階級を描くにしても、こういう「根っからの嫌な奴」が何故かのし上がりたいと思う感性が私には良くわかりません。
貧困が辛いというのではなく、手に職を持っていたとしても麻薬を使って「金持ちになりたい」というのは、その結果得られるものを自分で理解できているのかも謎な気がします。
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